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淵源の神造武装士〜アーティファクター〜  作者: 蒼乃 睦月
プロローグ
2/7

プロローグ〜最後の1日【後編】〜

プロローグ後編です。

なんか書いてたら、前編と比べて明らかに多い文量になってしまった気がします。

 トウカとプリクラを撮り終えたユウは、二人で自宅に帰ってきていた。部屋着に着替え、ユウはリビングで、トウカは自室で各々寛いでいた。

 ソファーに横になっていたユウは、さっきゲームセンターで撮ったプリクラを眺めていた。そこに写る二人は、指笑顔だったりどっかのプロレスラーのポーズ、変顔。中には、トウカのおふざけで自分の腕にトウカが腕を絡めた恋人チックな状態の物もある。そこに写る妹は、撮る前に見せた涙は何処へやら。いつもの太陽のような笑顔があった。


「まったく。忙しい妹だね」


 そんなことを呟いているとふと、時計が目に入った。時刻を見てみると、時計の針は午後六時を指そうとしていた。

 そろそろ夕食の準備をしなければと思い、体を起こしてキッチンに向かう。すると、トウカがリビングに入ってきた。


「お、トウカ。今から飯作るけど、なんか要望ある?」


 普段の様子からは料理とは無縁のように思うかもしれないがら、ユウはそこそこに料理ができる。というのも、二人の両親は共働きで帰りが遅いことが多い。そのため、二人で交代しながら夕飯を作っていた。ちなみに、今日はユウが当番である。


「あ、待っておにい」


「ん?どした?」


 希望が来るのを待ちながらキッチンに移動しようとしていたが、何故かそれを止められた。


「今日は、私が作る」


「は?何言って・・・」


「いいから!おにいはテーブルで待ってて」


「ちょ、待てって!お前の当番次だろ?」


「うん。知ってる」


「なら、なんで・・・」


「あーもう。しつこいなあ、おにいは!ダラシなくてしつこい男は嫌われるっ・・・よっ!」


 強引に背中を押されて、ズルズルとキッチン前のテーブルに連れて来られてしまった。ユウの言うように、トウカの当番は次回だ。なのに何故と思いながらも、ユウはテーブルの椅子に座らされてしまった。


「はあ・・・。分かったよ。じゃあ次から俺が連続でやるからな」


「はーい♪」


 トウカかまあまりに頑固なため、ユウの方が先に折れてしまった。ここまで融通が効かないのも考えものだなと嘆息しながらも、仕方なくトウカの料理を待つことにした。

 それから直ぐにトウカが冷蔵庫から食材を出して調理を始めたようだ。包丁が食材を切る小気味良い音、フライパンに敷いた油がはねる音、鍋の中の具材が煮える音など、料理には当たり前の音が聞こえてきた。

 それを聞きながら、ユウはここ最近気になっていた事を口にした。


「そういやトウカ。父さんと母さんっていつ帰ってくるか連絡きてるか?もう一週間になるけど・・・」


 そう。ユウとトウカの両親は二週間ほど前に突然、旅行に行くと言い出した。しかも帰ってくるのはいつか分からないと言いだす始末。

 旅行に行くのに帰りが未定という謎の計画。一体どこに行くのか気になったユウだったが、帰宅日が分からない旅行だ。聞くだけ無駄だと思った彼は、両親をトウカと2二人で見送ったのだ。

 それから一度も連絡がない。行った先で事件に巻き込まれたり、警察に捕まった訳でもうないようだ。もしそうなら必ず家に連絡が来る。大人二人で一体どこで油を売っているのやらと呆れていたところだった。


「・・・・・・」


 返事がない。さっきまで聞こえてい包丁の音もない。気になってキッチンを覗いてみると、そこには僅かに下を向いて動きが止まった妹がいた。その顔には影が落ちたような暗い表情を浮かべていた。


「トウカ?」


「へ?!な、なに?」


 心配になって声をかけると、意識がどこか遠くに行っていたのか、ハッとなってようやく返事をしてきた。


「お前、やっぱり今日おかしいぞ?玄関の時といいゲーセンの時といい、どうしたんだよ?どっか具合でも・・・」


「だ、大丈夫大丈夫!どこも悪くないし、元気元気。だからおにいは心配しないで待ってて。ね?」


 そうは言うが、ユウはもう我慢の限界だった。椅子から立ちあがってキッチンに向かう。手を洗い、トウカが持っていた包丁を奪い取り、調理を始めた。


「ちょ?!おにい!」


「もう待ってらんない。その様子じゃあ、いつ飯ができるか分かりやしない」


 苛立ちを露わにした兄を前に、トウカは申し訳なさで一杯だった。


「ご、ごめん。おにい。で、でも・・・」


「それに・・・」


 大丈夫だから。そう言いかけたところで、ユウが言葉を遮った。


「そんな顔した妹を黙って見ていられるほど、俺はダラけちゃいない」


「おにい・・・」


「だから、俺も手伝う。その方が早くできる。だろ?」


 さっき見せた苛立った顔は何処へやら。振り向いたユウの表情は、妹を心配する兄そのままだった。


ーーああ。ダメだな、私。最後なのに。おにいと居られるのは、今日が最後なのに。また心配かけて・・・


 嬉しかった。ただ同時に、悔しくもあった。感情を抑え込められない、表情を隠しきれない自分に嫌気がさす。

 でも、やっぱり、これが一番なのかもしれない。兄兄妹揃って同じ場所に立ち、協力して作業をする。こんな何でもない普通が、とても心地よかった。


 「(ありがと・・・、おにい)」




「「ごちそうさまでした」っと」


 二人で作った夕食を食べ終えたユウとトウカは、使った食器を流しに持っていくと同時に、食器を洗った。それからしばらく、二人はテーブルに座ってジュース片手に雑談をしながらテレビを観ていた。


「よし。そろそろいいかな!」


「ん?」


 突然、意気揚々と立ち上がりキッチンにある冷蔵庫に向かうトウカ。冷蔵庫から何かを取り出し、ゴソゴソ何かをしていようだ。気になって覗こうとした時に、リビングの電気を消されてしまった。すると、


「ハッピーバースデートゥーユー♪ハッピーバースデートゥーユー♪」


 聞き覚えのある歌詞が聞こえてきた。その歌と共に、キッチンにいたトウカが戻ってきた。それも、火を灯したロウソクが刺さった、小さめのワンホールのイチゴのショートケーキを持った状態で。


「トウカ、お前・・・」


「ハッピーバースデーディア、おにい♪ハッピーバースデートゥーユー♪」


 歌い終えると同時に電気をつけ、いつの間にか用意していたクラッカーを鳴らした。


「十八歳のお誕生日、おめでとう!おにい!」


 そう。今日はユウが産まれて十八年目の誕生日だったのだ。そんな事を忘れていたユウ本人は、驚いた表情のまま、少しの間固まっていた。


「そういやそうだったな。すっかり忘れてたわ。」


「だと思ったー。おにいは自分の誕生日に興味なんてないもんね?」


「まぁな。気にする気にもならないしな。一つ歳とるだけだし」


「もう、おにいったら。せっかくの私のお祝いが嬉しくないの?」


「んな訳ないだろ?祝われて嬉しくないやつが・・・、中にはいるかも知んないが、俺は嬉しい」


 兄の素っ気ない物言いに、少し苛立ちを見せるトウカだが、ユウは喜んでくれたようだ。このサプライズは必ず成功させたかったトウカの狙いは、見事に成功した。


「ありがと、トウカ」


 素直にお礼を言われて、少し照れ臭くなったトウカは、それを誤魔化すように、そそくさとテレビの横にある引き出しを開け、何かを取り出してユウに差し出した。


「はい、おにい!誕生日プレゼント☆」


「それも用意してたのかよ。ケーキだけでよかったのに」


「ダーメ。せっかくの誕生日なんだから。しっかりお祝いしなくちゃね?」


 そう言われて渡されたのは、青い包装紙に金色のリボンが結ばれた小さめの箱。何が入っているのか気になり、「開けていいか?」と聞いたら「もちろん♪」と言われ、遠慮なく包みを解いて、箱を開けた。


「これは・・・」


 すると、中に入っていたのは、幾つもの綺麗な蒼い石が連なったブレスレットだった。


「どう、かな?」


「・・・あ、ごめんごめん。大丈夫。あんまりにも綺麗だったから、見惚れちまった」


 ブレスレットを見たまま何も言わないユウを見て、気に入らなかったのかと、心配になって声をかけるトウカに、嘘偽りのなく、心から嬉しい事を伝えた。


「そっか。よかった〜。もしそうじゃなかったら、私また泣いてたよ」


「そいつは勘弁してくれ」


「それに、ほら!お揃い!」


 そう言ったトウカの左の手首には、黄色の石でできた、自分と同型のブレスレットをしていた。


「ペアルックって・・・、マジか」


「いいじゃーん。私は気にしないもんねー」


 なんの恥ずかしげもなさそうに、そんなことを言う妹に呆れながらも、貰ったブレスレットを左の手首につける。着け心地はきつくもなく緩くもない、丁度いい感じだ。


「それじゃ、おにい。ケーキ食べよ、ケーキ!私もたーべるー♪」


 ユウの反応に満足した様で、軽くスキップをしながらキッチンに向かったトウカは、冷蔵庫からもう一つ同じケーキを持ってきた。そして、ユウの向かいの席に座ると同時に、ケーキを食していた。

 最期まで、兄とは居られないが、彼は今まここで『一緒に』と言ってくれた。ただそれが嬉しくて仕方ない。

 この時間が、もっと続いて欲しいと、思わずにはいられなかった。



 ケーキを食べた後、トウカは先に風呂に入って自室に戻っていた。丁度今、風呂にはユウが入っている。

電気も点けず、月明かりだけが照らす部屋で、トウカは一人、今日兄と撮ったプリクラを窓際で見ていた。

その中の一つ、トウカがユウの腕に体をくっつけている写っているのを見て、小さく笑った。兄の困ったような、照れたような顔を見て今日のことを思い出していた。

 楽しかった。とても。普段あまり外に出ないユウを連れ出すことに成功し、一緒にゲームセンターで時間を忘れて遊んで、プリクラを撮った。家に戻ってからは一緒に料理をして、夕食を食べて、最後に誕生日祝いのサプライズも成功し、一緒にケーキも食べた。所々で泣いてしまったのは残念だったが、最後に兄の優しさに触れられたことに満足していた。


 ーーああ。次で本当に、最後だ。


 そう思っていると、トウカは月を見上げた。


「いよいよ、ですね。トウカ」


 トウカしかいないはずの部屋に、女性の声が何処からともなく、響く。


「・・・そう、だね」


 その言葉に、トウカは力なく答える。

 すると、部屋の中に突然、一人の女性が現れる。長い紫色の髪に、同色の目。整った顔立ちに醸し出す雰囲気は、とても優し気で、落ち着いていた。

 しかしその存在は、人間とは明らかに違うことを示していた。普通の人間では発し得ない絶対的な存在感。この世のものとは思えない神々しさを纏っていた。


「大丈夫です。ユウは必ず、私が助けます。これは、私たち(・・・)の責任です。もう二度と会うことはできないかもしれませんが、それでも、貴方がたのご両親と貴方自身、そして彼は繋がっている。それを忘れてはいけません」


「うん・・・」


 諭すようなその女性の言葉に、言葉少なく答えるトウカ。

 分かっているのだ。もう変えられない現実だと言うことは。それでも、信じたくない自分がいる。もうだいぶ前から知らされ、初めは受け入れられなかったが、それが事実あり得ることだと、既にこの身で実感している。

 もう悲しんではいられない。兄は救われる。兄を救うと『神』は約束した。

 今日が最後の一日。兄が生きていられる最後の時間。でも、自分には何もできない。だから・・・


「あとは、よろしくね。パンドラ」


 そういったトウカは、パンドラと呼んだ女性に、瞳から流れる輝く雫をそのままに、願いを口にした。


「お兄ちゃんを、助けて・・・!」


「・・・はい。ユウの魂、私が救います、必ず。」


 パンドラはそう誓うと、音もなくその場から実体を消した。

 再び一人になったトウカは、少しの間立ち尽くした後、力なく膝から崩れ落ちた。

 手に持っていたプリクラを胸に押し当てるようにして、歯止めの効かなくなった感情のままに涙を流した。




 トウカが風呂から上がった後、ユウは風呂に入り、その後自室に戻り、久しぶりに机に向かって大学進学のためのテキストに手をつけ始めた。


「それにしても、今日は久々に遊んだなあ。偶には外に出るのも、やっぱ悪くねえか」


 動かしていたペンを止め、左手につけたブレスレットを見ながら、今日のことを振り返る。

 トウカに誘われて、暫くぶりのゲームセンターで兄妹揃って小学生みたいにはしゃいだ。プリクラも撮った。一緒に料理をした。誕生日を祝ってもらった。一緒にケーキを食べた。どれもありふれた事だが、久しぶりに充実した一日だと思った。そんな中、今日一番の出来事といえば・・・


「珍しく泣いてたな・・・、あいつ」


 そう。普段は正に太陽のような明るさとポジティブ思考が売りのトウカが、涙を流した。それを目の当たりにして平然と装っていたユウだが、内心かなりテンパっていた。小さい頃は、年相応に泣いたりもしていたが、幼稚園に入った頃には泣いたところは見た覚えがなかった。笑顔が自他共に認めるチャームポイントだと思っていた、そのトウカが、泣いた。

 兄としては捨て置けない事態であり、原因を聞きたいところだったが、そこまで過保護じゃない。本人が言いたくなってからでいいと思い、保留にしていた。


「しっかし、母さんたちは帰宅未定の旅行。そんでトウカは謎の涙。ここまでおしかなことが起きると、明日は天変地異かね・・・ってあれ?」


 そんなことを言っていると、ふと時計が目に入り、時刻は零時を指そうとしていた。


 「うっわ、マジかよ。風呂入ったのが八時頃で、これやり始めたのが十時頃だから・・・もう二時間経ってんのか」


 テキストそっちのけで、今日の振り返りをしていたら日付が変わろうしていた事態。

 ほとんど進んでいないそれを仕方なく閉じ、電気を消してベッドに横になろうと椅子から立ち上がると、ドアをノックすると音が聞こえた。


「おにい、起きてる?」


 その後に聞こえてきたのは、トウカの声だった。「おう」と短く返事をすると、ドアが開いて寝間着姿のトウカが部屋に入ってきた。


「どうした?トウカ。今度は寂しくなって一緒に寝たくなったとか?」


 冗談交じりにそう言うと、トウカは首を横に振った。まあ、当然だろう。いくら今日はいつもと違うとはいえ、さすがにそこまで甘えん坊にはならないだろう。

 それならどうした?と質問すると、トウカは暫く口を開かなかった。

 不思議に思いながら待っていると、漸く口を開いた。


「おにい・・・」


 ただ一言。その一言だけではないことはすぐに分かったが、なにぶん今日何度も感じた悲しげな雰囲気を感じたため、次の言葉が何なのか分からず緊張していた。

 そしてトウカは最後の言葉を口にした。


「おやすみ、お兄ちゃん」



 ーー大好きだよ。



 哀愁を纏った笑顔でそう言うと、トウカは自室に戻っていった。

 しかも、いつもは『おにい』なのに、さっき『お兄ちゃん』と呼ばれた。


「・・・ホントに、どうしたのかね。アイツ」


 おかしな妹の言葉と、あの笑みに戸惑いながらユウは部屋の電気を消した。

 ベッドに向かい、寝る体勢に入ろうとした時、突然、胸に激痛が走った。


「あっ・・・がっ・・・!!んだよ、これっ・・・!」


 予期せぬ痛みに悶えながら困惑する。こんなことになる病気をもった心当たりはない。それにこれは心臓という肉体的なものよりも、もっと別の、もっと内側にある『核』となる様な部分が苦しいように感じた。

 ベッドを背にして痛みに蹲っていると、目の前に異変が起こった。

 突如、黒い影が目の前に現れた。顔も、耳も、髪もない真っ黒な影。人の形をとってはいるが、明らかに異質な存在。それが、感覚的にだがこちらを見ている様に感じた。

 その謎の異形を前に、ユウは胸の痛みと共に恐怖を感じていた。人間が原初より持ち合わせている本能が、目の前にいるこの異形に対して、激しく警鐘を鳴らしていた。今すぐに、一秒でも、コンマ数秒でも早くここから逃げなければ・・・、死ぬ。


ーーなん、だ、こいつはっ!よく、分かんねえ、けど、絶対に、やばい・・・。逃げ、ねえと・・・!


 知らぬ間に胸の痛みがひいていることに気づき、荒い息をそのままに、本能が告げるまま、すぐにでもこの異形から逃げるために立ち上がろうとする。しかし、うまく脚に力が入らないために、その場で足を滑らせてしまう。


 ーークソッ。まともに動けないのかよ!痛みは引いたってのにっ!


 この異形を前にしていると、自分の意思で思うように動くことができない。体感したことはないが、紛れもない『死』が目の前にいると言うのに逃げることもままならない。

 ユウはなんとかしてここから逃げようともがくが、やはり動くことができない。

 すると、先程まで無言で立っていた異形が何処にあるか分からない口を開いた。


「・・・捧ゲヨ」


「・・・っ!」


 ただ一言。それを耳にしただけだというのに、さっきまで痛みを放っていた部分が鷲掴みにされるような感覚が襲う。呼吸がままならなくなり、嫌な汗が止まらなくなった。


「・・・ソノ魂、我ニ捧ゲヨ・・・」


「な、に言っ、て・・・っ!」


 そう言った異形に対して、ユウは声にならない言葉を口にすると、再び胸部に激痛が起こった。

 しかしそれは、内部からではなく、外部から入り込んだ痛みが原因だった。

 その発生場所を見るために視線を下に動かすと、そこには自分の胸に突き立てられた異形の黒い腕があった。

 知らぬ間に目の前に迫っていた異形は、ユウの顔を覗き込むように見た後、突き立てた腕を大振りに引き抜いた。同時に、ユウの体から赤い液体が飛び散る。

 貫かれた胸部には当然穴が開き、そこから止めどなく赤い血が流れる。その瞬間、ユウの全身から力が抜け、糸の切れた操り人形のように、床に倒れ伏した。

ーー俺・・・. 、死ぬのか・・・?


 意識が遠のく。寒い。体温が下がり、五感が効かなくなる。視界は光を捉えることが難しくなっていた。


「・・・捧ゲヨ。呪ワレシ、ソノ魂。我ニ捧ゲヨ・・・」


 その状況のユウを、異形は血の付いた自身の腕を再び伸ばしてきた。とどめを刺すつもりなのか、それともを俺を食おうとしているのか。どちらにしろ、俺は死ぬ。


「トウ、カ・・・」


 こんな危険な奴を残して、最後に一人にしてしまう妹の名を口にした。


 ーーくそっ・・・。


 全てを諦め、完全な死を迎えようとしていたユウの目の前に異形の手が迫った瞬間、変化は起きた。

 突然、眼前に迫っていた異形の腕が吹き飛び、続いて異形本体が跡形もなく消し飛んだ。薄れる意識の中で起きた事態に、一瞬だけ鮮明になった視界に光が映った。その光は次第に人の形となってユウの前に現れた。

 だが、そこまでだった。視界はすぐに霞み、意識が薄れていった。助かったようだが、自分が死ぬことに変わりはない。

 もう事切れようとした時、女の人の声が聞こえてきた。


ーーごめんなさい。こんなことになってしまって。でも、貴方を、死なせはしません。貴方の魂は・・・


 その言葉を僅かに聞き取ったと同時に、凰神ユウは、意識を手放した。



 温もりをかんじた。光を感じた。音が聞こえた。

匂いを感じた。

 不思議な感じだ。もう死んだとういのに、それでもこんなに多くを感じれるなんて。

 あれ?なんか振動を感じる。地震・・・じゃないよな。誰かが揺らしてるわけでもない。ということは・・・鼓動?死んだのに?まさかな。

 でも、光を感じるってことは・・・。


「・・・・・・」


 白い天井が見える。首も動く。試しに体が動くか試してみるか。


 「・・・っ。体、重っ」


 とてつもない怠さを感じたが、なんとか起き上がれた。起きる時に腕も動いた。今度は動く手を動かして体に触れてみる。貫かれたはずの胸には穴はなく、心臓の鼓動を感じることができた。つまり・・・


「俺、生きてる?」


 半信半疑だが、生きているようだ。

 と、なると、今の自分がいる所は病院だろうか。確認のために周りを見てみても点滴も何もない。あるのは自分が乗っているベッドと外に繋がるであろうドアと、外が見れる壁一面の大窓のみ。そこから外を見てみると、その先に広がっていたのは、広大な大地に見覚えのない一面の白い都市と雲海だった。


「ここ、どこだ?」


 明らかに自分が住んでいた場所とは違う。いや、それ以上に異様だった。

 なぜなら、眼下に広がる景色天と地が逆転している(・・・・・・・・・・)。死んだはずの自分が生きていることに加えて謎が増え、頭の中は大混乱を起こしていた。

 そうしていると、部屋にある唯一のドアが開かれた。突然の事態に、先程までの異形との感覚が蘇るが、視界に映ったのは顔も耳も髪もある、ちゃんとした人だった。

 それも女性。紫色の髪に同色の瞳。整った顔立ちとメリハリのある体つきは、まさに美女と呼ぶにふさわしいものだと感じていた。

 女性は、ユウが起きていることを確認すると、頭を下げてお辞儀をしてきた。


「初めまして、凰神ユウ。私はパンドラ。ここに住まう『神』の一人です」


「・・・は?」


 神?神と言ったのか、この人?神ってあの神?キリストとかヒンドウーが讃えてる、あの神か?

 さらに混乱が加速したユウに、パンドラと名乗った女性は言葉を続ける。それが更に混乱に拍車をかけるのだが。


「凰神ユウ。あなたは、転生したのです。神々が住まう、この【神界】に」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 暫しの沈黙が流れる。そして、


「はああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!?!?!」


 こうして、凰神ユウは転生を果たした。

以上でプロローグは終了です。

次回から本編に突入。

いや、にしても書きすぎですね。反省です。

次はもっと短く、それでなるべく早く初回を投稿できるように頑張ります。

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