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ワールドRe:トライ・セブンオーブ  作者: 下級魔術師17号
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第8話 買い物

私事で東京行っており、投稿できませんでした。

ごめんなさい(´・ω・`)


 翌朝、朝食を終えて、身支度を済ませた俺とクロガネは、宿屋を出た。

 昨夜は、宿屋の共同風呂に入ろうにも着替えが無いことに気づき、身体を拭くに留めた。そこで、初めて“魔法”を見た。

 クロガネが、衣服に〈洗浄(ウォッシュ)〉〈乾燥(ドライ)〉をかけて綺麗にしてくれたのだ。

 “生活魔法”と呼ばれるもので、僅かな魔力で使える無属性の魔法らしい。

 本当に簡単なモノばかりで、威力も弱い為に軽視されがちだが、種類を覚えれば、かなり便利なのだという。


 「俺にも出来るかな?」

 『ふむ。まぁ、“生活魔法”くらいなら、そなたでも可能であろうな』

 「なに、その言い方?ひょっとして、俺って、魔法の素質がないのか?」

 『調べないと分からぬが、魔力や素質は恐らく問題はない。ただ、普通の“魔法”は無理かもしれぬ』

 「なんで?」

 『そなたが、“宝玉(オーブ)”の継承者だからだ。宝玉に魔力を取られるから、普通の魔法は使えなくなる。だが、まぁ、宝玉を持っていない今のうちなら、ひょっとしたら覚えれるかもな。

 ふむ。確か、昔の“宝玉”の持ち主も、簡単な魔法なら、使えたと記憶している』


 何故か、“魔法”は憧れだったりする。

 記憶にはないが、俺がここに来る前にいたところには、魔法が存在しなかった気がするのだ。

 いや、感覚的なもので、実際はどうだか分からない。

 クロガネの言葉にがっくりきたが、まだ、そうと決まった訳ではない。希望はある。

 

 『ま、魔法を使いたいなら、まずは、素質と属性を調べないといけないが、この町に“神殿”があればいいが………』

 「明日、買い物ついでに探そう!」


 買い物も必要だが、魔法も大切だ。

 勢い込む俺に、クロガネが珍しいものを見る顔をしたが、無視した。

 そして、翌日である。


 宿屋を出た俺は、広場の朝市に向かった。

 生活用品や食料などは、朝市が一番安いのだと、宿屋の女将に教えて貰ったのだ。

 場所によっては、服などを売っている露天もあるらしい。“ここ”では、一般的に服は中古を買うらしい。

 中古と言っても、まぁ、一応洗ってそのまま売る店もあれば、新品同様に保全や仕立て直しをして売る店とピンキリあるらしい。

 新品となると、完全オーダーメイドになるらしく、値段も高い。そういうのは、一般的には特別な時くらいで、あとは貴族や金持ちや商人くらいしか使わない。


 「でも、下着とタオルくらいは新品がいいなぁ……」


 まぁ、服はユーズド商品でもいい。だが、流石に下着は他人の着たものはちょっと………なぁ。

 タオルも同じ理由だ。


 『むぅ。旅をするなら、外套と靴だけは良い品を選ぶべきだ』

 「鞄も必要だけど、クロガネ、魔法で物を収納できるとかってある?」

 『〈収納(ストレージ)〉という魔法があるが、“空間”という特殊属性の魔法だから、難しいぞ?

 素質と適性のある者は稀だ』

 「あー、そうなんだ。やっぱり、現実は甘くないか…………」

 『ふむ?荷物か………。なら、高いが“魔法鞄(マジックバッグ)”がいいだろう』


 クロガネが言うには、特殊な加工で見た目と異なった大容量入る鞄があるらしい。

 魔道具の部類に入るので高価だが、わざわざ大荷物を持たなくて済む………って、あるじゃん!

 俺が探してたファンタジー定番アイテム“アイテムボックス”!!

 ………………ファンタジーってなんだろ?


 とは言うものの、どこで売っているのかが、いまいち分からないので、買えるものから買う。

 木の小枝と何かの毛で加工された歯ブラシ(使い捨て品)に塩とハーブの歯磨き粉、木製の櫛とコップ、少し高かったが映りの良い手鏡。

 新品のタオル数枚。固形石鹸は高価だったが、固めていない粉というか砕けた石鹸は何故か安かったので、小袋で買った。

 洗濯などに使える深さのある木製の器に、細いロープ、折りたたみ出来るハンガーも買った。

 下着は、トランクスっぽい形のゴム部分が紐になったものが新品で売っていたので、それを3~4枚買った。靴下や肌着(インナー)も、新品があったので数枚ずつ買った。

 やはりそういったものは“中古”にはならないらしい。


 旅に必要な火打ち石と小さなランプ、魔除け(魔物や野獣に効果のある)香に、小さなナイフ。

 冒険者や旅人が使うという、簡易コンロセットに小さな鍋、食器セットも買った。鍋や食器類は、軽くて丈夫で熱に強い“軽石(プライストーン)”で作られているらしい。

 “軽石”は、加工方法は特殊だが、それさえ除けば、加工し易く、軽くて丈夫で熱に強いから、持ち運びなどに便利で食器や調理道具などに使われるが、武具や防具にするほどの丈夫さではないらしい。


 途中、たまたま立ち寄った露天で見慣れない食料を見かけた。


 「……お湯を入れると簡単なスープになる実?中に乾燥具材をいれてハーブで包んでるのか。

 パンに塗れば美味しいペーストって、あ、これ、美味い!あと、こっちのピクルスもなかなか……」

 「いらっしゃい!コレはねー、うちのオリジナルさ。自信作だよ。

 旅の保存食って味気ないし、マズいだろ。

 ちょっとの工夫で、美味しい保存食ってね。日持ちもするし、今ならお試し価格にオマケもしちゃう!どうだい?」


 瓶に詰まった保存食や乾燥野菜、少量サイズの調味料やハーブ。さらには、小分けした薫製肉。

 なかなか盲点を付く商品に、俺は、おもわず幾つか購入する。

 すると、店主が、オマケにお湯を注ぐだけで飲めるというカフェオレ色の粉の瓶と緑の小さな乾燥玉をくれた。


 「荷物がけっこう増えた……」

 『一度、宿屋に置いてきた方がいいだろう。後は、何を買うんだ?』

 「あとは、服と靴と鞄かな?えーと、旅するなら、何か武器がいるのか?」

 『持っていた方が良いが、使えるものがあるのか?』

 「ないな………。まぁ、短剣くらいは持っているべきか………」

 『ふむ。妥当な選択だろう』


 宿に荷物を置きに戻る。

 小さな町なので、それほど掛かるわけでもない。 部屋に荷物を置くと、クロガネが念の為にと、盗難防止の目くらましを掛けてくれた。

 宿屋でも、荷物の盗難は自己責任になるそうだ。


 「高くても“魔法鞄”を買うべきだろう」

 『今後を考えれば、それがいいな。まだ、金はあるんだろう?』

 「うん。衣服とかが少し高かったけど、これだけ買っても、金貨3枚くらいかな。

 服は中古でいいし、何か掘り出し物があればいいけど……」

 『ふむ。では、中古品を見てから、普通の店に行けばいい』


 再度、宿屋を出て、市場に戻る。

 “朝市”と言っているが、昼過ぎまで賑わっているので、未だに活気に溢れている。

 中古品を扱う露天が集中するエリアに移動すれば、それぞれ衣服類、武具防具、雑貨など区分けされており、見やすくなっていた。


 「服は、部屋着代わりのと普段着だな。動きやすく丈夫なものがいい」


 女子じゃないので、デザインには拘らない。逆にシンプルな物がいい。

 あらかさまに雑多に積み上げられた衣服は確かに安いのだが、その中からわざわざ自分で選んで探すのも面倒なので、そこそこ綺麗に整えられハンガーに吊された店を見ることにする。

 

 「あら、なかなか素敵な少年ねぇ。綺麗な青の髪に深い琥珀の金って、ステキダワァ!

 どこてなく高貴な感じがするし、いいわぁっ!久々の上玉よ、あなた!」

 「…………ど、どうも……」


 幾つかの店を歩いていたら、マッチョなオカマに捕まってしまった。

 文字通り、いきなりガシィッと掴まれ、グルンと回転させられて、両手で顔を挟まれて、マジマジと覗き込まれた。

 余りの迫力に、息が止まるかと思った。

 すぐに離してくれたが、ターゲットロックオン状態に、ジロジロと上から下まで全身を見られる。

 相手は、背の高い、筋肉が見事な細マッチョだが、ピンクのフリフリドレスが妙に似合う恐ろしさ。

 バッチリ決めた濃いオカマメイクに、バサバサの付け睫毛。長い金髪を綺麗な縦ロールにセットした、完璧なオカマである。

 だが、男臭さは全くなく、むしろ、清潔感溢れるフローラルさだ。


 「あら、そうなの。旅用の丈夫な服と部屋着が欲しいの?独り立ちかしら?

 いいわねぇ、若いわぁ!

 そうね。少年なら、ゴテゴテしたものより、シンプルで上品なものの方がいいかしら?」

 「は、はぁ……」


 有無を言わさず、「ちょっと待っててね!」と、バチンとウインクされる。俺の肩に乗っていたクロガネが、「ひっ……!」と、声を上げて固まった。


 『し、シオン!なんだあれ?!なんという化物だ?!』

 「いや、ちゃんと人間だから……」

 『いや、しかし、あんな種族、初めて見るぞ?』


 種族って………と、俺は絶句した。

 まぁ、クロガネの驚きも分からなくはない。かなり強烈な見た目だし、知らなければ、普通の人間とは思えないのだろう。

 正直、俺も驚いたし、あまりの迫力とインパクトに本気でビビった。

 まぁ、“オカマ”という言葉と知識が自然と浮かんできたので、なんとか耐えれたが、本気で一瞬、“化け物”と思い、悲鳴を上げそうになったくらいだ。だから、クロガネのことを強く言えない。

 今回ばかりは、謎の“知識”に感謝だ。

 対応さえ間違えなければ、オカマは、基本的に良い人が多いらしい。


 「これとこれなんかどうかしら?」


 何着かの服を持ってきたオカマ店主。

 幾つかは趣味じゃないヒラヒラデザインもあるが、基本的にはシンプルなデザインに、白、青、黒、ブラウン、緑など落ち着いたダークカラー系だ。

 しかも、組み合わせが絶妙にカッコいい。


 「これは、ちょっとダボッとしたデザインだけど、ひざ下のこのチャックで切り離し可能な2WAYタイプなの。こっちのぴったりした黒シャツと合わせると、ほら、なかなかカッコいいでしょ?

 寒かったら、こっちの青灰色系の上着と合わせてもいいわよ~」

 「シンプルに黒の上下に、この丈が長めの白灰色の上着なんかもいいわ。丈夫で防水性に優れた水ネズミの毛を混ぜた糸で作った布だから、汚れにくいわよ~。あと、靴はこのミドルブーツね!

 黒に、ベルト留めデザイン。冒険者仕様だから、通気性も良いし軽くて丈夫!しかも、防水仕様!

 どの服にも合うわ」 


 トータルコーディネートだった。

 靴に小物を合わせた完璧なコーディネートだ。

 露天に飾られた服のデザインは、いかにも可愛いフリルやレースのついたワンピースやドレスなどばかりなのに、どこから出してくるのか、男性用の服を大量に持ってきたオカマ店主に、周囲が沸き立つ。逆に、俺は、唖然とするしかなかった。

 

 「ここのアンネットさんの服は、デザインも色も素敵なの!あの人の見た目はアレだけど!」

と、可愛らしい若い女性。


 「男性服も人気なのよ。特に男性服は、シンプルだけど、小物使いのワンポイントが効いててカッコいいのよ!革紐とか、チャックとか、チェーンとかね!あんまり店頭に出さないけど、元冒険者だから、軽くて丈夫で動きやすいデザインが基本なんですって~!

 ここのなら、アタシも男物を着てもいいわぁ!」

と、よく見れば細マッチョなオカマだった。

 類は友を呼ぶらしい。


 「アンネットさん、自分の服にこだわりがあるからねぇ!アンネットさんの目に適うなんて、あなた、運がいいわよ~!」と、俺の背中をバシバシ叩くおばちゃん。


 なぜか、周囲の女性客に力説されてしまった。

 どうやら、オカマ店主ーーもとい、アンネットさんは、なかなかの有名人らしい。

 元冒険者というのは、なんとなく納得した。

 あの見た目だ。さぞかし凄い戦士だったに違いない。

 露天の女性服もデザインが良く、市場でもかなりの人気らしい。これでも全部、中古を仕立て直した服ばかりなのだとか。

 だが、ほとんど新品同然。

 普通の中古よりは高めだが、新品よりは断然安いので、そういった意味でも人気が高いらしい。

 俺から見れば、ヒラヒラフリルやレース飾りの可愛らしい服ばかりだが、女性客曰わく“シンプルながらも凝った可愛いデザイン”の服は、なかなか無いのだそうだ。


 「「久々のヒットだわ~!!!」」


 そうこうしているうちに、俺は、断る隙も無いまま、アンネットさんと女性客の勢いに負けて、言われるままに彼女たちのコーディネートの“着せ替え人形”にされてしまったのである。


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