ゲーム始める系!
ここ、大手企業[オンフィル社]のゲーム開発局に、約3万人もの人が集まっていた。
皆、興奮が抑えきれない顔をしている。
なぜなら、今日がオンフィル社の開発した新作VRMMOの公開日だからである。
「自由度が売りのファンタジーゲーム」。
それだけ聞くとどこにでもあるような普通のゲームを想像するだろう。
だがオンフィル社はこのゲームの開発に莫大な費用を使い、とんでもない力作を作り出した。
「インフィニティ・オンライン」
それがこのゲームの名前、作り出されたた世界の名前である。
そしてこのゲームに心惹かれた少年【樋田 風月】もこの場に来ていた。
「すごい人の量だな…」
思わずそう言葉をもらしてしまう。
「無理もないさ。このゲーム、すごい期待されてるし」
隣で男の声。スーツ姿がビシッと決まっている。
「あぁ、ごめんね。いきなり話しかけてしまって」
人柄もよさそう。
「いえ、大丈夫です。貴方もゲームをやりに?」
「もちろんそうさ。ここにいる数万人の人達、みーんなこのゲームを待ち望んでいたからね。君もそうだろう?」
「ええ。早くプレイしたくてたまりませんでしたよ」
「でも、お金の方は大丈夫なのかい?学生にあのカプセルはキツイ値段だと思うけど…」
そう。このゲームは開発に力を入れすぎて、容量が大きくなり家庭用VR機ではプレイができないのだ。
そのため、2m程もある大きさのカプセル型ゲーム機を作り、中に人が入って[全身浸透]する仕組みにすることで容量の問題を解消したのである。
そんな精密な機械なのだ。普通に作れるものじゃない。高くて当然のことだろう。
「バイトとか、めちゃくちゃ頑張ったんで」
実は半分位、親に頼み込んで借金しているのだが、見栄を張りたくてそのことは言わなかった。
「へぇ〜、偉いんだね。ま、親に気軽に買って?なんて言える値段じゃないしね」
その後も他愛ない話を続けていたが、突然、放送用のスピーカーがブチッと鳴った。
「えー、皆様、本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。今日こちらに来ていただいた理由は、各種説明や設定などをする為です。ログインコードの発行や、機械の認証設定などは局が責任を持って取り計らいますので、お時間を頂きますがよろしくお願いします。」
この声は聞いたことがある。
インフィニティ・オンラインのプロジェクトオーナーである【錦滝 芳郎】だ。まさか直々に来てくれるとは思っていなかった。
「では、まずは細かい設定の方を致しますので、係員の案内に従って[プレイルーム]の方へお集まりください」
あぁ、楽しみだ。