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クルーエルラボ  作者: 村崎 芹夏
序章 
7/16

絶望の序章 Ⅶ

一瞬の安堵のあとに部屋中に張り巡らされた緊張の糸が緩む感覚が伝わる。

端蘂はいま開拓したばかりの新たなる進展。開け放たれたロッカーへと一歩近づく。

中に詰められた黒いリュックのひとつをおもむろに掴み上げると、"カチャ"という中で小さな金属が擦れるような音と共にズシリとした重みが腕に伝わってきた。


リュックサックは機能性のよさそうなものであった。

丈夫そうな生地で作られたそれにはメインの大きな収納部のほかに、いくつかの小物収納用のスペースが設けられている。


中身を開けたい衝動をクッと堪えた端蘂はひとまずロッカーの中からそれを全て取り出すことに専念することにした。


そのリュックを興味心身で見ていた久人、大輔、日々香の3人は端蘂が取り出したそれを部屋の中央まで運ぶ。

するといままで部屋の隅まで下がっていた者たちも恐る恐るリュックが集められた部屋の中央へと集まりだした。


少し意外な事にいままで綺堂の返答以来、部屋の壁に背を預ける形で反応を示さなくなった栢山もいつのまにかリュックの束を中心にできる人輪に混ざっていた。

どうやらこのリュックは自分が関わるべき重要なことだと認識したらしい。


やがてロッカー内に収まっていた全てのリュックが一箇所へと集められた。

同じデザインの黒いリュックが集められるのはなんとも異質な光景である。


冷たい部屋の中央に乱雑に集められたリュックの総数は14。部屋の中にいる少年少女の人数が14人であることは偶然の数字ではないだろう。


「一人にひとつずつってわけか」

端蘂は野太い声でボソリとつぶやくとおもむろに近くにあったリュックのひとつを掴むと自分の方へと手繰り寄せる。


それをみた他の者たちも我先にと、もしくは恐る恐るなにが入ってるか分からないそれを自分の物にすべく手にする。


"ジリジリジリ"


部屋中のあちこちからリュックの一番大きな収納部分に備えられたジッパーが開かれる音が響き渡る。

久人も自ら手にしたそれの中身を確認するためにジッパーをあけ、中に入っているものをひとつずつ取り出した。


軍用の携帯食料(俗に言うレーションと呼ばれるものだろう)が4食分、ペットボトルに入ったミネラルウォーター4本、懐中電灯、包帯やガーゼ等がコンパクトに纏められた簡単な応急処置セット、黒い腕時計のようなもの、小型の端末機、そしてバタフライナイフと呼ばれる柄部分に刃が収納できるナイフが続々とコンクリートの地面に置かれていく。


「これで全部か・・・」

リュックの中に手を突っ込んでみたり、ひっくり返して振ってみたりをして他になにも入ってないことを確認する。


中身が全てさらけ出された時点で久人はたったいま出したものをもう一度入念にチェックする。

72時間の制限時間、仮に時間いっぱいまで掛かるとした場合丸3日間閉じ込められることになる。

だが配給された食糧は4食分・・・つまりこれは満足に1日3色の食事は出来ないということであろう。

一方、水に関しては決して多いとは言えないが、500mlのペットボトルが4本なのでなんとかなりそうである。


他にLED式の懐中電灯が1本、簡易ではあるが消毒、止血等ができそうな応急処置セット・・・使うときが来ないで欲しいと願うばかりではあるが・・・


不可解なのは艶のない黒色をした腕時計のようなものである。  

腕にまくベルト部分まで金属だからだろうか、異様に重量感がある。


盤面を見るかぎりデジタル表示のようだが、画面にはなにも表示されていない。

あちらこちらと触ってみるもののスイッチの類は見受けられない。


ひとまず時計のようなものを腕に装着し、次は小型の端末機を少し希望に満ちたまなざしで弄りだす。

小型とはいえパソコンのような使い方が出来る端末機ならなにかしらの情報があるかもしれない、もしくは救援のメッセージを外部に送ることが出来るかもしれない。そう考えたからである。


携帯電話ほどのサイズのそれの液晶画面は真っ暗でなにも映し出されていない。 

ボタンが無いところをみるとおそらくタッチパネル式なのだろう。 何か表示されまいかと久人が画面を数回タッチしていると、ふと背面部に電源ボタンらしきスイッチを見つけとりあえず押してみる。


数秒の間の後、軽快なメロディーと共にモニターにはライトグリーンの背景に"FOC"というロゴが表示されて立ち上げが開始された。


FOCというのは future originate company の頭文字であり、世界でもっとも巨大なコンピューターソフトウェアの会社の名前である。

コンピューター関連はもちろん、ゲーム機、デジタル家電、携帯電話、小型端末機等々あらゆるものの開発販売を行っており、親子二代によって世界最大の会社にまでのし上がった巨大企業を知らぬ者はおそらくいないであろう。


"シャラン"という特有のサウンドエフェクトがコンピューターの立ち上げが完了したことを告げる。


久人はその合図を聞き、モニターに目を落とす。しかしそこに映し出されているのは大草原と青い空その中を気持ちよさそうに掛ける1頭の馬の画像である。

これはFOC製品の初期の待ち受け画面である。

トップにはアイコン等は一切なく、どこをタッチしても一切反応がない。 おそらく遠隔操作でこちらの操作が無効化されているのだろう。 


「まぁ、そんな簡単なわけないか・・・」

久人は小さくため息を吐いてうなだれた。


その時久人の後ろから大輔が声をかけてきた。


「あれ、久人、お前ナイフなんか入ってたの?俺そんなのなかったぞ」


「え?ホントか?」

久人のリュックに入っていたバタフライナイフのことであろう。


「あぁ、代わりにこんなのが入っていたけどな」

そういって大輔はBBQなどで良く使われるアウトドア用のガス缶にバーナーが取り付けられたものを取り出し、トリガー部を何度かカチッ、カチッと弄って見せた。

どうやら、ナイフがガスバーナーに変わってるところ以外、両者のリュックの中身は一緒のようであった。


「なんだそりゃ?ガスバーナーか?」


「そうみたいだな、これで肉でも焼けってのか?」


「なら旨そうな肉を探さなきゃな」


「さすがにここに牛肉はないだろうなぁ・・・」


そんな会話をしていると横から荷物を開き終えた日々香が少し不安そうな顔をして混ざってきた。


「私も・・・なんか変なのが入ってたんだけど・・・」


そう言いながら日々香が持っているものを見た久人、大輔の両名はドキッっと驚いてしまう。


おっかなびっくり少女が差し出した手の上にあったのは拳銃であった。


つや消しの黒のボディ、プラスチックのような質感、手のひらから少しはみ出る程度のコンパクトさ、グリップ部分にはこの拳銃の名前なのだろうか、XDsという刻印がある。


「そ、それって・・・ちょっと借りていい?」

無言で何度も頷く少女。

さすがにモデルガンだろうとは思うが、万が一ということもある、大輔は確認のために日々香から拳銃を借りて調べることにした。


「お、おもっ・・・」


日々香からハンドガンを受け取った大輔はまずその重量に驚かされる。銃火器は男のロマンである。 銃火器や兵器が割りと好きな大輔はモデルガンを集めたり弄ったりするのは趣味のひとつであった。

モデルガンに触れる機会が多い大輔はたったいま受け取ったハンドガンの重量感が異常なことはすぐに気付いた。


明らかにモデルガンの重さではないのである。


大輔はまさか、と思いつつマガジンキャッチボタンを押し銃床部からマガジンをリリースする。

キャッチ部から機械的に開放されたマガジンは重力に従い、地面に落ちようとするがそれを上手いこと大輔がキャッチする。


そしてその時大輔は確信した。


「おい・・・これ実銃じゃんかよ・・・」


マガジンから覗くのはモデルガンなどに装填されるBB弾などではなく、鈍い小金色の筒の先端に茶色いどんぐりが付いたような弾丸であった。


ハンドガンをホールドオープンさせて隅々まで見て回る大輔。どうやらチャンバーには弾は装填されていないようだ。セーフティーも掛かっているのでとりあえずは暴発の危険はなさそうである。


弾丸だけで見ればダミーカートと呼ばれる本物に似せた発射機構のない弾を使用したリアル志向のモデルガンという可能性が無くも無いが、細部を見ればこれが実銃であることは明らかであった。


「まじかよ・・・リュックに予備の弾とか入ってなかった?」


「あっ、これのことかな?」


大輔の問いかけに日々香は思い出し方のようにリュックに手を入れ、100mm×50mm程はありそうな長方形の赤い箱を取り出した。 表紙には鷹を模したデザインと黒い文字で9mなどという文字が書かれている。

それを開けてみると中からは綺麗に整列された弾丸が卵パックにも似たような雰囲気の容器に収納されていた。


「ねぇ、これってやっぱり本物のてっぽうなの?」


「あぁ、恐らく本物だろう・・・」

先程まで動揺していた日々香の表情が大輔の言葉を聴いて血の気が引くように青ざめていく。


「おい、まじかよ、でも違法なんだろ?」


久人も驚きを隠せず大輔に勢い任せで問いかけた。


「あぁ、こんなもん所持してたら即逮捕だな。でもこんなイカれたことやる奴らだぜ、法律云々なんて関係ないんだろう きっと」


考えても仕方ないことであった。もはやなにもかもが現実からかけ離れたことなのだから。


そう言い聞かせて大輔はXDsというハンドガンにマガジンを戻すと、セーフティが掛かっていることを再度確認し、それを日々香に戻そうと差し出す。


それがなんとも意外だったのか、日々香は”えっ!”という声を小さく漏らし、涙交じりでブルブルと首を小刻みに振り出した。


「む、ムリムリ。私、そんなもの怖くて触れないよ!」

実銃だとわかってより一層怖くなったらしい。顔の引きつり具合が先程と比べ物にはならないほどになっている。


「たしかに物騒なもんだけど9m×19mm パラベラム弾を使用するコンパクトタイプだから日々香ちゃんでも扱えるとお・・・」


そこで大輔は言葉に詰まってしまう。

久人のリュックにはナイフが、日々香のリュックには実銃が入っていた。これは武器として考えるのが自然ではないだろうか? 自分のリュックに入っていたガスバーナーも無理をすれば武器というカテゴリに入るような気がする。


それはつまり、この先これを使う機会があることを示唆している可能性が非常に高い。 

それがどんな場面なのかはまだ分からないがどう考えても良いものではないはずだ。

これをこのまま日々香に返せば、そういう状況下に陥った場合、日々香に発砲をさせることになるだろう、はたしてそれで良いのか。


そう考えてしまうと言葉は続かなくなってしまう。 ふと、久人の方を見ると彼も似たような考えに至ったのか難しい表情で考え込んでいるように見える。


そんな雰囲気を破ったのは懇願にも満ちたような表情の日々香であった。


「あ・・・あの! 私がてっぽう持ってるのは怖いし、良かったら大輔君が預かっててくれないかな? てっぽうの事も詳しいみたいだし」


「でも、それじゃあ日々香ちゃんの・・・」


「どうせ私が持ってても使えないし、それに久人君と大輔君に守ってもらうもん」

不意に放たれた日々香の発言に久人はドキッっとして心拍数が舞上してしまう。一方で大輔は割りと平常心を保っているようであった。

こんにちは、作者の村崎 芹夏です。


すみません!!!  お盆休みは休みのはずなのに鬼のような忙しさでテンヤワンヤしていたため土曜日に更新が出来ませんでした。

というか執筆すらできていませんでした><

本日、急いで執筆を進めてなんとか更新する次第です。


ですので正直言って・・・内容が結構雑ですorz


ホント申し訳ありません。 そしてそのためか今回で序章を終わらせるつもりが次回まで続いてしまいそうです。

有言不実行の作者でホント申し訳ないです。


すこーしだけ日々香さんと久人君のフラグがががー! なんとも羨ま(ry


この二人の関係も今後に期待ですね。


はてさて、というわけで長々と序章をやっていますが、頑張って次回で纏められるように努力します。


一応、次話は来週の土曜更新予定ですが、遅筆のためもしかしたら・・・頑張ります(笑)


はてさて、慌しい内容になってしまいましたが、今回も読んで下さった方々、本当にありがとうございます。


感想や評価なんかを頂ければ感謝感激でございます。


ではではまた次話を投稿したときはよろしくお願い致します。

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