”絶望の序章”
・序章"クルーエルラボ"
「っん、んーんー」
一人の少年が目覚める。 この少年の名前は長谷部 久人
「ここは・・・どこだ?」
ぼやけ眼をこすりながら辺りを確認するが、照明が一切ついていないため一面の闇しか視界に入ってこない。
「俺・・・どうしたんだっけ・・・痛っ」
なにがどうなっているのか状況を理解しようとした瞬間に少年の後頭部に鈍い痛みが走った。
どうやら起きる以前に後頭部をぶつけたか何かしたらしく、手で触ってみるとコブが出来ていた。
「なんだ・・・これ、なにがどうなったんだっけ?」
その瞬間、久人が起きるのを待っていました、っとでも言わんばかりのタイミングで"パンパンパン"とまるで映画の古臭い演出のように部屋の上部に設置された裸状態の蛍光灯が次々と明かりを灯していった。
やっと闇に慣れ始めていた久人の眼に突然の光が差し込み、まぶしさでとっさに腕で眼前を覆ってしまう。
数秒はたっただろうか、反射的に顔前に持ってきた腕をゆっくりとどかすと、恐る恐る瞼を開けてみる。
最初こそ眩しさに眩みそうになったものの、眼がだんだんと蛍光灯の白光に慣れてきたため徐々に視覚がはっきりとしてきた。
そして完全に眼が慣れ、視界を取り戻したと同時に一度瞬きをし、そして改めて現状を確かめてみる。
しかし、そこで久人の眼に映ったものは思いもよらぬ情景であった。
そこは1つ大きなの部屋だった。広さは20畳ほどだろうか? 窓は一切なく、外の様子が伺えないため今が朝なのか夜なのかすらわからない。
壁には見るからに分厚そうなコンクリート壁が四面を囲っている。
簡素でかざりっけのない部屋で、娯楽用品らしきものは壁のど真ん中に掛けられた大型のテレビくらいであろう。 他には部屋の隅に大きなロッカーがあるだけのとても冷たく、寂しい印象を受ける部屋であった。
扉は鉄製なのか、鈍い銀色をした重そうなものひとつだけであった。当然、久人はこんな場所に見覚えはまったくない。
まったく見覚えのない不気味な部屋になぜか自分がいる、これだけでも異常な事態なのだが、真に異常な光景は他にあった。
それはこの部屋の床に幾人もの"人"が無造作に転がっていることである。仰向けの者、うつぶせの者、丸くなっている者さまざまである。
「なん・・・だよ・・・これ・・・どうなってんだよ」
パッと見た感じ、冷たいコンクリートの上に転がっているいくつもの"人"に外傷はみられない。
見ただけでは転がっている人達の生死までは判別できないが、彼らの年齢は皆自分と同じ10代半ばから後半くらいの男女に見えた。
ざっと見ただけでも十数人はいそうである。
久人の心臓は異質な状況に恐怖を感じ、張り裂けんばかりの速さで鼓動していた。しかし、少し膠着し考えたのち現状を理解することが最優先であると判断した久人は恐る恐る、一番手近に倒れこんでいる少女に声をかけてみることにした。
「あの・・・もしもし?起きてますか?」
つんつん、と指先で頬を突きながら声をかけてみる。
「・・・」
なんの反応も返ってこない。
これにより最悪の事態が脳裏に浮かんだ久人は焦りを感じながらもう一度起こしにかかる。
「もしもし、大丈夫か!?起きてくれ!」
焦燥と祈りが入り混じったせいか声が少し裏返っていた。
すると
「うっ・・・んー」
どうやらこの少女は生きてはいるらしく、眠そうな反応が返ってきた。最悪の事態までに至っていなかった事に安堵し、久人は先ほどよりも強めに少女を起こすことにした。
「もしもしー、すみませんー。ねぇ起きて」
「んにゃー、はいー」
もっさりと眠そうにまぶたをこすりながら少女が眼を覚ました。
ポケーっと眠たそうな両目をコシコシと擦り、そして辺りを見渡し自分の知らない場所で目を覚ましたことを知る。
状況がつかめずに困惑しているのか、それともまだ寝ぼけているのか・・・自分を起こした者を見つめて
「あの・・・えっと、どちら様ですか?」と尋ねてきた。
「あっ、すまんな。俺は長谷部 久人、俺もたったいま目を覚ましたばかりで状況がよくつかめないんだが、ここがどこだかわかるか?」
久人の質問の後、辺りをもう一度見渡した少女は、倒れている人たちを見つけ、軽くビクッとなりながら答えた
「ごめんなさい、どこだかちょっとわからないわ。なにがどうなっているの?この人たちは・・・死んでるの?」
「さぁ・・・俺にもさっぱりなんだ、起きたらこんなとこにいて・・・とりあえず近場に倒れていた君を起こしてみたんだ。たぶんだけど、君が起きたってことは他の人たちも死んではないと思う」
「そう・・・」
「君名前は?」
「私は日々香、小野村日々香よ」
ちょっと小柄で可愛らしい容姿をした少女だった。髪は腰のちょっと上辺りまである綺麗なブラウン色の長髪で、シャンプーの清潔感あるほんのり甘い感じの香りがしていた。
白いフリフリのついたブラウスに水色の可愛らしい上着を羽織っており、下はちょっと短めのこれまた可愛らしい小さなフリルの着いたスカート、膝上まである黒くて長いソックスを着用している。
日々香と名乗る少女は現状がつかめぬ不安からおどおどとしつつも久人の質問には答えた。
「じゃあ、小野村さん、とりあえずここに倒れている人たちを起こさなきゃ。手伝ってくれる?」
お互いに気を取り戻したばかりであまり頭も働かないだろうし、深く考えるのは後回しにしようと思い、もしかしたらこの中の誰かが今のこの状況を説明してくれるかもしれない、という期待も少しあったので、とりあえずみんなを起こして回るという提案をしてみた。
「うん、わかった」
久人と日々香は手近いものから順に声をかけて起こしていくことにした。
はじめまして、作者の村崎 芹夏と申します。
妄想や文章を書くのが好きで前々からちょこちょことラノベ風の小説を書いておりました。 っといっても独学で全く進歩がないため駄文の極みではありますが(笑) ただ自分で書き溜め続けるのもつまらないということで、誠に恥ずかしながらこのような場で公開してみることを決意した次第です。
更新ペースは遅く、文章は乱雑で語彙も少ないため大変お見苦しい作品になるかとは思いますが、暖かい目でみていただければ幸いです。