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ふたり、はなれて 8

 壊れやすい建造物を探すだけで済むならば、これほど私にとって探しやすい箇所もない。そりゃいくつも崩れやすい箇所はあるが、あの爆弾魔は意外と考えているようだった。

 崩れた建物を見下ろしながら、一体ここが如何ほど老朽化が進み、脆くなっていたのかを目測する。実際にどの程度の年数が経過していたか、所有者は誰か等は別の仕事に就いてる連中に調べさせればいいことで、あくまで私がやることは奴が無差別に爆発させたかどうかの痕跡だ。じっくり調べる必要があるかどうか不明だったが、どうやらそんな必要もない。

 奴は狙って爆弾を設置し、爆破させている。

 簡単に言えばより効率よく周囲を巻き込みながら爆破させるかどうかだ。

 見た感じ火薬の量は音や建物の崩れ方から見てたいしたことはない。それでも一軒潰す程だから決して少ないことはないが、それでもケチって使用しているような印象を受ける。

 実際そうなのだろう。奴はケチっている。必要以上に火薬を手に入れられなかったのかもしれない。

 さすがに目の前でやられれば人間の身体など吹っ飛んでバラバラになってしまう。かといって現場を押さえないとお話にならない。爆弾を作動させる前に現場を押さえなければならないということだ。


「となると、次はあそこか」


 奴と私は似ている。如何に効率よく破壊を進行させ、その崩れゆく様を眺め愉悦に浸れるかという最低な部分が一緒だ。かつての私が似たような考えだったので、その気持ちは手足が痒くなるほど共有してしまい、痰と一緒に胸くそ悪い濁った空気を吐き出したくなる。ただ、手段と、どうやら根っこが同じでも埋まっている鉢植えぐらいは違いそうだった。この町に広がる緑は町という鉢に根を張り広がっていく不思議な連中だが、奴と私は緑と違い完全に切り離されているので、例え似ていても最終的には理解し得ないことだろう。

 破壊の仕方でそこまで分かるのも気分悪い。

 効率よく周囲の建物を破壊する方法はいくつもあるのだが、密集地帯を敢えて避け、むしろ折り重なった建物のところを狙っているのがポイントとなる。あまりにも密集し過ぎている箇所で少ない火薬を使っても周囲によって逆に支えられ、周りを巻き込まない場合がある。ならば斜めになって折り重なっている建物の下、その大黒柱なりを一気に破壊すればいい。単純な話だ。

 そしていくつか爆発し破壊された建物は、実を言うとそれほど距離が離れているわけじゃない。

 先程マスターが言ったように、時間的に空きすぎている場合があるということは、どうやらリアルタイムで――つまりあらかじめセットしたのではなく、自分の手でつけていっているわけだ。だからこそ人の目を避けたりでタイムラグが発生する。なんともお粗末なのだが、さてそうなると、どうしてここまでして破壊を楽しむのかということになる。


「まさか、自虐か?」


 ある答えが閃き、瞬時に伏せる。警察に見つかるかどうかの瀬戸際まで楽しんでいる、とか……。そこまでするか? 私でもしなかったぞ。

 とにもかくにも奴が次に向かった場所へと行く。多分次の爆破までは時間がない。本来なら警察が見張っていてもおかしくない混乱した場所に警察官がいないということは、爆発に巻き込まれるのを恐れたというのもあるだろうが、何より手が足りないのだろう。それに先ほど遠目で見た爆発によって警察の相当数が巻き込まれたという話をタクから聞いている。

 すぐに次のターゲットになりそうな建物を発見する。元はデパートか何かだったのだろう五階建てぐらいの建造物で、その横に建築された倍近い高さのビルには苔と蔓と細い木が繁茂し、崩せなくなって久しく、故に斜めとなって隣に寄りかかっていた。入るだけでも崩れそうだ。斜め、崩れやすい、他の建物が密集し、複雑に互いを支え合っている――押せば崩壊するような光景じゃないか。これ以上爆弾を設置するに相応しい箇所もなかなかないな。私なら文字通り手で押せばここら辺一帯を崩壊させて地均しすることが可能だ。


「行くしかないか」


 覚悟を決めて中に踏み込む。

 当然爆弾が設置されただろう五階建ての方にも植物は容赦なく浸食をし、放置された家具や衣服、食器等が散乱して砕け散り、さらには水道から水が溢れているのか床がぬかるんで、シキを置いてきた寝床なんかまだ生やさしいぐらい酷い状況を創り出していた。いったん作ったならきちんと責任を取れといまやもういないだろう管理人に毒づきながら、急いで大黒柱を探す。周囲の壁が植物の浸食でぼろぼろにされる緑の町は、基本的に壁の中へ埋め込む柱を重要とした建築方法を取る。その中でもっとも大切なのが大黒柱と呼ばれるものなのだが、これが破壊されるとこれだけ植物が絡み付いて老朽した鉄筋だ、自重に耐えきれず崩壊することだろう。

 だからこそ爆弾は大黒柱の傍にあるはずなんだ。

 だいたい建物の中心部にあると相場は決まっている!

 という予想通り、大黒柱はほぼ中心部にあった。そこを基準にこの建造物は周囲を形成していっているわけだが。


「爆弾は……!」


 周囲を見回す。コンクリートで固められた柱の周囲にそれらしきものはない。

 ……まさか見当違いか。犯人らしき姿も無い。

 うっすらと背筋が寒くなる。いったん間違えてしまったらそろそろ手遅れだ。おそらくもう次の爆弾は設置されてしまったことだろう。


「くそっ!」


 急いで建物を抜け出そうとしたところだった。人影を視界の端に捉えた私は、死神にでも撫でられたような怖気を感じ、もはや本能で身を捻る。

 パァン、と乾いた音が耳をつんざく。

 急激に走り抜ける激痛と熱。そして衝撃。

 倒れ込みつつも転がって、タンスだったろうそれの物陰に隠れる。

 ……撃たれた!


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