なかで、みたもの 7
「あなたの考えた通りよ」
帰り道、といってもまだ東地区なので誰もいないのだが、私が切り開いてきた道を周囲から見たら疑問を浮かべるほどにゆっくりと歩きながらとつとつと彼女は語り出した。一応道は確保してあるのと身動きできない状態にしてあるので、先程の爆弾魔は放置してある。もちろんそのまま放っておくつもりはないし、戻ったらすぐに警察へ連絡する予定だ。下手に私達が連行して警察へ引き渡すより、警察があそこに行って貰ったほうがいいだろうという私の勝手な判断によるが。
「あの植物の異常発生は決して偶然じゃない」
それはつまり、あの異常発生の原因か――または些細なキッカケは人為的なものだという宣言にとっても構わないだろう。
つまりそれが【闇】だ。人がこの文明を維持する際に発生する暗い部分があの東地区に埋もれている。恐らく私の想像を絶するとてつもない物があそこにある、あるいは在ったのだ。ただ闇というからには表には出てこないわけで、そこにどの様な人間達のどの様な思惑が隠されていたのか、結果として成功なのか失敗なのか、それを考えることすらタブーとして扱われるのか、そこらは我々が手を出す部分ではないし、実際に触れたいと思わない。
知る権利があるとするなら東地区から追い出された人達と被害者の家族だろう。同じ緑の町に住んでいたとしても私には関係無いし、シキに至ってはもっとだ。
「だからこそ手を出せないし、何もしないのよ」
私の考えを読み取ったかどうかは知らないが、まるでこちらの思考に続ける様、彼女は言葉を口にした。
「私達の目的はあそこの保護及び維持。余計に増やさないことと、何か異常があれば即座に調査して原因を取り除くことよ。どんな手を使ってでもね」
どんな手、と気軽に言うものの、実際はどこまで許されていることやら。
「で、それを知った私達は何か謎の組織に連れていかれるとか始末されるとかないだろうね?」
「あるわけないでしょ、マンガじゃないんだし」
「いや実際下手な漫画よりグロいもの見ちゃったばかりなんでね、結構不信感が溜まってるんだよ」
「そんな顔してないわよ、あなた……」
「顔には出さない質でね」
「ったく、ああいえばこういうんだから……」
軽口を叩ける程度にはいつもの調子を取り戻した頃、私達は東地区の崩壊した部分を抜け出ていた。いつもの見慣れた危うい建造物の面々を見るとほっとするのは、すでにこの緑の町というのが第二の故郷として随分と心に根付いてしまっているからだろう。
「で、あんたが後から現れた理由は?」
「……それは聞かない方がいいかもしれないわね」
なるほど、ならば気付かなかったフリをしよう。
「そうね、調査結果をまとめるのにまだ時間かかるし……それに連絡だけなら直接顔を出す必要は無いから、しばらくこの町に留まるつもりよ。何かあったら私に連絡頂戴」
「留まるのか……他にも仕事があれば」
「残念ながらないわね」
「そこはお世辞でもまた頼むぐらいは言って欲しいね」
他にも気になる点があるが……。
「……爆弾魔については警察の範疇でしょう。頼まれ屋がどうこうする問題じゃないわ。そうね、植物増殖より遙かに厄介だと思うけど」
まったくその通りだ。
爆弾というところで、むしろ私達に関するのはそちらなのだろう。あの男は……もしかしたら操られていたのかもしれない、という発想は決して突飛なものではない。如何せん実例をこの間目の当たりにしたばかりだからだ。
「そうだね……腑には落ちないが、それでお終いとしたほうが良さそうだ」
くい、と袖を引っ張られる。
「でも」
シキが何かを言いたそうにじっと私の瞳を見つめ続けて、それから目を逸らした。
「シキ?」
名前を呼んでみるものの、それ以上の反応は無い。
色々と不思議な点を残しながら、私達は警察に立ち寄って今日の仕事を終えたのだった。
……警察ではタクが出張ってあれこれ訊いてきたものの、相変わらず引き締まらない会話内容でこちらの気力が挫けたこともここに記載しておこうと思う。
次回から新章「みどり、どかして」が始まります!
よろしくお願いします!




