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なかで、みたもの 6

随分と長い間お待たせいたしました……!

大変申し訳ありません!

今週より復活します。

よろしければまたお付き合いくださいませ!

 植物がまるで捕らえているかのようにその身体に巻き付いて離そうともしていない。少なくとも私の目にはそう見えて仕方なく、そしてそれはとてつもなく恐怖を煽る光景だった。

 ここで何が起こった、という問いはこれ以上ないぐらい無意味だ。応えられる者がいるなら私はとっくに身体を動かし、その人の救出に全力を尽くすだろう。枯れ果てた肌は彼らがとうに乾涸らび命までも枯らしていることを如実に語っている。ここにいる人間はこうして囚われたまま朽ち果てたのだ。

 だからこそ別の問いを口にした。


「なぜだ」


 何故彼らは数年間もここに囚われていながら、こうも原型を残しているのだ。骨と皮だけといえばそうなのだが、湿気と温度で額を流れる汗を拭いつつそれ自体が異常だと断言できる。

 これではまるで……この植物がそうしているようではないか。巨大な空洞を腹に抱えるこの化け物のような植物が、人間を骨と皮にしたまま……維持しているというのか。何の為に。どうして。


「……イチコ、来たのね」


 はぁ、と溜息を吐いてマナコが外から中に入ってくる。


「あまりこの中にいるとあなたも閉じ込められるわ。一旦外へ出ましょ」


 確かにそれは困る。彼らには悪いが私はまだそんな風に命を散らす予定は無いからだ。直ぐさま外に出て律儀にも出入り口付近で待っていたシキと目が合う。


「説明して貰えるんだろうね」

「……見ちゃったもんはしょうがないわねー。念のために訊くけど、ここで見たこと聴いたことを無かったことには?」

「見た記憶は消せないし、内容については聞いてから判断させてもらおうかな」

「……そうよねー。私があなたの立場でも同じこと言うわね、マジで」


 はぁぁ、と深い溜息はマナコの心労の深さを窺わせるには十分な長さだった。それだけ複雑な理由か、単に知られたら大変なことになるだけなので秘密にしたいのか。


「何かあったの?」


 この中で唯一あれを見ていないシキの問いをはぐらかしながら、私は視線で先を話すようマナコを促す。彼女は少しだけ「いいのか」と気を遣うような表情をしてきたが、今更シキの興味を誤魔化すことなどできやしない。ならば一緒に話を聞いてしまったほうがいいだろう。


「中で見たアレ、全部この町の人間よ」

「東地区に住んでいた人間ということかい?」

「そうよ。五年前に起こった東地区崩壊事件の主な犯人がこいつと言われているけど、何故こいつが危険視されているか知ってる?」

「でかい町を半壊させるような連中だ。それだけで警戒心を煽るには十分じゃないか。それに根底から枯らすことが出来やしない。……やろうと思えば出来るけど、恐らくそこは人の住める土地じゃなくなるだろうね」

「そうね。その理由は結構な割合を占めているわ」

「なら違うと」

「ええ、彼らが主として何を栄養としているか、が問題なのよ」


 そこまで聞いて先程の光景がフラッシュバックする。

 植物に絡め取られたゾンビ達。まるで全ての水分と中身を吸い取られたかのように骨と皮だけになり果てた哀れな姿。つまりそれは……


「……東地区の人間を食料とした。それ故に彼程の成長率を見せた、ということよ」

「ま、待ってくれ……つまりだ、食虫植物の進化形ってことかい?」

「そうね、そう思ってくれて構わないわ」

「人間なんか喰ったところでここまで急成長するもんかね……」

「あら、植物から見なくとも人間というか動物なんて栄養が袋被って歩いているようなものじゃない。ことこいつらにしてみれば無駄な部分なんて文字通り血の一滴もないわ」


 どこまでも栄養が詰まった御馳走というわけだ。


「それに数が数よ。一人や二人ならいくら何でもここまで急成長しないわ」

「……まさかとは思うが、行方不明者のほとんどが」

「ほとんどが……喰われたってことでしょうね」


 今でも行方不明者を捜せだの助けろだのデモをする集団がいることは知っているし、同情をしないわけでもないが、そんな彼らがいくら騒いでも国が動かなかったのはそういう理由があったということだ。つまり知っていたのだ、閉じ込められた人間の命は吸われ尽くされてしまったことを。


 では何故政府はそれを隠しているのか。


 緑の町にはそれなりの人数が未だに住処としていて、頑として動く気配は無い。だからか、と考えたもののそれだけの理由で隠すだろうか。植物が人間を食べる、というショックな事実は出来るだけ早めに公開し被害を抑えるべきではないのか。しかし現にこうしてこの東地区の主となった奴らと隣同士で住んでいる。五年前以降、奇妙な行方不明者を除いて事件らしき事件は無い。自然に伸びる枝や根っこは別として植物からこちらに直接干渉してくるようなことがなかった。

 これらは偶然か、必然か。


「……ちょっと待て」


 そこで一つ、ある仮定が私の頭の中に浮かぶ。

 もしその仮定が事実だとするならば、東地区崩壊事件とはとてつもない闇が潜んでいるのではないか。それに巻き込まれるのは冗談ではないし、マナコがわざわざここまで調査しに来た本来の目的も何となく察しが付く。

 そんな私の意図を読み取ったのか、マナコはまず自分からシキへと目を配った後に一言だけ小さく告げた。


「……ここを出ましょ。もう調査済んだから」


 それについては大人しく従うしかなかった。



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