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なかを、とりもち 4

 文章を作るのはさほど得意ではないが、緊張状態のタクよりマシなものは作れるだろう。小一時間程度悩み抜いて書き上げたメモをタクに渡し、改めてシキ相手に練習をさせる。

 人前は平気なくせに女の子が絡むと駄目とか、典型的にも程がある奴だ。

 そんなタクでも二時間ほど練習すると、大分様になってきた。


「――最後に両家にかわりまして、本日のお礼を申しあげ粗餐ながらどうか時間まで、ごゆるりとお過ごしくださいますようお願いいたします」

「お、いいんじゃないか? もうめんどくさいからコレで言っちゃえよ」


 マサオの感想はともかく、その意見には賛成したい。ずっと付き合ってきたシキにも疲労の色が見え始めていた。どうやら適当に手を抜くことをまだ知らないらしく、二時間も真剣に付き合っていたらそうなるだろう。しかし女の子間に緊張しなくなったところで、果たしてこれが本当に本番で役に立つ経験となるのかね――そこまで考えたところで、結局はタクがやる気になっているわけだし、当初の『背中を押してくれ』というのは結果論として成功というわけだ。

 そこへヨウコがアイスクリームを差し出してきた。シキが視線でこちらに確認してくるので、私は「ありがとう、ヨウコ」と言う。シキの表情が僅かとはいえ綻んだように見えた。もうちょっとその顔に変化を加えてくれればあの子の笑顔が見られるのだろう。いつかその笑顔を見てみたいものだ。


「とりあえず大丈夫そうかい?」

「あ、ああ、多分。けどまだ不安だな」

「イマイチ自信のない発言だね……。じゃあどうする? 当日も私達がいたほうがいいかい?」


 そう提案するとタクはしばらく悩む。


「……頼む」

「わかったよ。で、式はいつ?」

「この日だよ。まだ先だけど……。招待はされてない者を中へ入れられないと思うから、近くで待機しててくれ」

「見張りじゃないんだが、それで気が紛れるってんなら引き受けるよ」

「引き受ける?」


 ピクリ、と刑事の顔が引きつった。


「まさかそれも仕事だっていうのか!」

「頼まれ屋に頼むっていっちゃったら仕事成立だよ。大丈夫、その程度なら格安で引き受けといてやるさ」

「くっそ、マジか……」


 タクに悩む余地はない。そういうわけで明後日、式場内にはお邪魔出来ずとも近くまでいって励ます依頼を受けることに成功したのだった。





「役に立った?」


 唐突な質問に対し、つい言葉を詰まらせる。

 その質問の答えに窮したわけではなく、それの持つ意味を計りかねたからだ。じっくりとタオルに浸透していくお湯のように内容を吟味していく間、シキはただただ返答を待ち続けている。彼女の求める答えはそこまで深くはない。しかし返答を探している時間が長すぎたようで、少女は「……駄目だった?」と聞き直してきた。

 深く考えた私が悪い。彼女は元々喋る方ではないから、今日の行動を振り返ってみて思い出してやるべきだったのだ。そうすればすぐに何を言っているのかわかり、私は小さく笑ってしまう。今日の頼まれに関していえば、確かにシキは役に立った。


「だが、シキ相手に緊張することもなかろうに。まったく、ロリコンか」


 私相手だと女に見てなかったようだが、それを口にすることもないだろう。


「ろりこん?」

「シキが予想以上に大人だった、ということだ」


 意味がよく分からなかったのか、首を傾げた少女に思わず笑ってしまった。


 まだ手伝い始めてから二日目だ。慌てる必要なんてまったくない。しかし子供というのはその一日二日でも我慢ができず、時には背伸びをするものだ。私だってまだまだ若いし暴走しがちなところはあるが、それでもシキより経験豊富ということもあるし、頼まれ屋の家業も長い。この仕事が何なのか、これからじっくりと教えてあげればいい。

 少しだけこの子が羨ましかったが、表情には出さず、なるたけ忘れるようにする。古い記憶は古いまま、ただ自分を振り返る時のアルバム程度でいい。必要以上に出しゃばって今の生活を壊す事はないんだ。


 ――どうして今、過去を振り返ったのだろうか。


 自分の中に生まれたその疑問。

 シキの「卵だけじゃバランス悪いから、ばんごはんは野菜も」の一言にその杞憂はあっさりと吹っ飛んだのだった。


次回は8/13(火)22時頃を予定しています。

申し訳ありません、諸事情で再来週の月曜まで更新している余裕が無さそうです……(わかりやすい諸事情ですが)

宜しければまたこの作品にお付き合いください!

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