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しごと、みつけて 9

 タクがこちらへ気づく前にふらつく足へ活を入れ立ち上がる。それから何事もなかった風を装う為、軽口を叩く。


「捕まえたって、私のおかげだがね」

「む……」


 タクはその一言で黙り込み、むすっとする。どことなく可愛いしぐさをするじゃないか、こいつは。刑事は無言のままマサオの手首を固め、とりあえず身動きを封じた。


「しかしなんで突然壁が崩れたんだ? 一体何をしたんだ、お前は?」

「元々ぼろかったからね。押せば崩れると思ったらあっさりとだよ。案外上手くいったようだね」


 胃が捻れるような痛みは継続中だが、おくびにも顔に出さないように努める。


「なるほどな」


 そんな程度で納得するなら安い嘘だ。痛みを我慢してる甲斐がある。

 タクは捻り上げたマサオを見下ろしながら呟く。


「どうするかなぁ、これから」


 警察が情けないことを言わないでくれ。


「また暴走されても困るだろう。縄で縛って、あのジンヤって刑事が呼んだ応援を待とう。というよりもトランシーバーで場所を伝えなよ。このぐらいチャチャっとこなして欲しいもんだね」


 最後は嫌味だ。タクは反論しかけたが、ぐっと押し黙り、言われた通りのことをこなす。


「あとは……」


 ふぅ、と息を吐く。マサオがどうしてこんな行動に出たのかは警察が調べることだ。何にしろマサオ夫婦から受けた仕事はキャンセルとなるだろう。ま、その分をあのジンヤって刑事にふっかけるつもりではいるが。


「あ」


 その時、視界の隅にとことこと走ってくる少女の姿が見えた。


「シキ、気付いたのか」


 少女はこくりと頷いて、マサオを一瞥する。


「……気絶?」

「ああ、転げた際に気を失ったみたいだ。医者じゃないから何とも言えないが、大した怪我はしてないだろう。しかしあの刑事が見ていたのに、よく来れたな」

「連絡取ってる隙に」

「ああ、こっそり抜け出したってわけね」


 どの刑事も間抜け具合は変わらないらしい。昨日、ゲンさんにこの町の警察はよくやってるとフォローしたのは取り消さないとならないかもな。


「マサオがおかしくなった瞬間って、覚えてるかい?」


 私の問いにシキは一度首を傾げ、それから首を縦に振る。


「家の中に入ったら」

「いきなりおかしくなった?」


 相変わらず表現が下手なのでそう補足してやる。


「突き飛ばされた。その後は覚えてない」

「そうか。結局よく分からないってことだ。――刑事さん、私達はどうすればいい? 一度戻っていいかい?」

「あ、ああ……いや、応援が来るまで待っててくれないか」

「だろうねぇ」


 刑事として一般人を巻き込むのは気が引けるけど、事件に関わってるかもしれない人を帰らせられない。しかも応援が来るまで一人じゃ不安ということだ。逆の立場でも同じ事を考えるだろうね。

 シキは倒れたマサオと刑事を見比べ、それから崩れた壁を見上げた。どうしてこうなっているのかとその瞳は疑問を投げかけていたが、私に投げられたわけじゃなさそうなので無視をする。


「なんだかややこしい事になってきた気がする」

「ややこしい?」

「ああ、結構ね。頭の中を整理したいので、一通り済んだら店に戻ろう」


 今回のマサオの動きはおかしい。というよりも、どうしてマサオのところにテロリストが近寄ったのかという問題になる。そして彼らはいつどの様に、そして何の命令をマサオに埋め込んだのか。

 これはマスターの情報が重要になってきそうだ。彼がしっかりと情報を手に入れてくれていることを祈るしかない。


 ――本当に。


 はぁ……と、何度目かの溜息をつく。


 ――ややこしいことに巻き込まれる予感がする。

次回は7/19(金)22時に掲載予定です!

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