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しごと、みつけて 7

 煙草を吸う二人の刑事を眺めながら、私は地面から突きだした太い木の幹に身体を預けた。緑の町というだけあって、ここは植物で溢れている。外に出れば緑色を見ない箇所は存在しないぐらいだ。

 その中で私は今までの経緯を軽く説明した。相手に条件を突き付けて飲ませたのだ。下手な嘘を吐くのは筋が通っていないと考えてのことであるが、若い方は私より年齢上だろうに、どうにも落ち着き無く、内容を理解すればするほど顔色を変えたり舌打ちしたりする。それでよく刑事をやっていられるものだ。


 こちらからの説明が終わると、ジンヤから二、三の質問を受けて終わりとなる。

 次は彼らの説明だ。私が「フェアに行きたいね」と言うと、苦笑しつつ事情説明をしてくれる。彼らにとってただの一般人からコインの話が聞けた以上、ただ黙っているわけにもいかない、つまりある程度の誠意を見せるべきだと判断したのだろう。これも私がテロリストだと思われたらあり得ない状況だったわけだが。


「この町にテロリストが潜伏したという情報が入ったのは三日前だ」

「三日前?」

「くそ、この辺は草刈り屋がいないのか」


 足に絡まる蔦を取り払いながら、若い刑事は咳払いをする。


「数日前に他の地域でマークされていた人物がこの町に来たらしい。そこで我々もマークをしていたってことだ。コイン云々の話は知らないが……しかしこれで決定的じゃないですか」


 最後はもう一人の刑事へ向けてである。


「だな……。嬢ちゃん、実物を見せてくれないかね。一応この目で確認しておきたい。おいタク、メガネを用意させろ」


 まぁ、そうなるな。実物を確認するまで安易に信じるのは危険だ。やっぱり若い刑事はまだまだ経験不足のようだ。それにしてもタクって名前なのか。

 ハローグッバイの連中をマークしていたというのはちょっとした驚きだ。まったく正体が掴めていないと囁かれていたのに、実はそうじゃなかったということだ。しかし安易にこの町へ来させてしまったのは考え物だろう。いくらマークしていても、決定的証拠が無い限り逮捕もできないし接触も不可能、というわけか。


「わかったよ。今は持ってきてないから、預けてあるその店まで行こう」


 私が幹から背中を離した時だった。


「あれ?」


 つい間抜けな声を上げてしまう。仕方ないだろう、ここからならマサオの家が丸見えで、その家のドアを叩こうとしているシキの姿を見てしまったのだから。


「何やってんだ……!」


 刑事そっちのけで私はシキを止めようと身体を浮かせたが、しかしその前にマサオが顔を出してしまった。刑事と一緒にいる手前、慌てて身を隠す。シキは何事か言った後、家の中へと案内された。


「おい、あの子はなんだ?」


 タクが少女に気付いて声を上げる。なんだと言われても、そんなこと私が聞きたいぐらいだ――とは口に出さず、私もその家へと向かった。シキが入っていったというところに嫌な予感がしたのだ。


「嬢ちゃん、あの子と何か関係あるのか?」


 中年刑事がそう尋ねてくるが、それにすら私は答えない。

 何かと制止しようとしてきた警察二人を押しのけてその家の扉を叩こうとしたら、いきなり激しく扉が開かれた。


「マサオ……ッ?」


 必死な形相をしたマサオが私を手で無理矢理どけながら外へと飛び出していく。遅れて刑事二人が私の背後から中を覗き込む気配がした。玄関近くの家の中で倒れたシキと、それを抱えるヨウコがいたが、ヨウコの様子が何かおかしい。ぼぅと空を見上げているようで、自分から抱えているシキのことなど眼中にないようだ。


「なんだ?」


 異様な様子にたじろいでしまう。そんな私の横を擦り抜けてジンヤが彼女の前で右手を振ったりしたが、何も反応はない。一度鼻から「ふん」と息を吹いて、その刑事はパンと両手を叩いた。

 途端、ヨウコの両目に意志の光が点り始める。


「あれ……私……」


 正気を取り戻したヨウコは自分の抱えているシキに驚き、それから周囲を見回して私と目があった。


「イチコさん!」


 名前を叫ばれたのでビクッとすると、そんなことに構わずヨウコは喋り出した。


「マサオが! 急に私達を殴って――」

「なんだって、何があったんだ?」

「わかりません……ただ、この子を家に招き入れた途端、主人が急に豹変して……」

「豹変?」


 一瞬だけだが、確かにマサオの様子は変に見えた。どうしてそうなったか――


「そうか、そういうことか。ヨウコ、その子をお願い」

「え?」

「刑事さん、マサオを捕まえるんだ。急いで!」


 ジンヤがタクに指示を下す。中年の刑事のほうがやり手に思えたが、若い方が体力あるので、タクに追わせた方がいいだろうという判断かもしれない。


「頼まれ屋さん、あんたも追ってくれないか?」

「私がかい」

「事態が事態だし、緊急の頼み事だ。仕事と受け取ってくれてもいい。彼女達の面倒は俺が見よう。一般人に頼むのは気が引けるが、応援は呼ぶつもりだ。ただし見つけても近付かず、連絡をしてくれればいい」


 なるほど仕事か。そう言われると弱いな。

 マサオを探すだけの仕事で金がもらえるなら、やらない手はない、か。本人を見つけ連絡をするだけで小銭ぐらい入れば割合はそんなに悪くない。その場のやっつけ換算ではあるが、動く理由としてはそれなりに意味を持っていた。


「わかった。頼まれよう。報酬は後でしっかり話し合おうじゃないか。それじゃあ二人を宜しく頼むよ」


 家を飛び出した私は、タクの後を追いかけていった。

次回は7/12(金)掲載予定です。

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