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なんて考えていると、予め用意されていた車のソファに座らせた。座らせてからすぐに僕の腕をタオルで縛り、その後は体を旅行鞄のように投げられたのであった……確かにあの鞄って旅館に着くまで邪魔だけど、こんなに乱暴に扱いましたか!?でも、よく考えたら知らず知らずにやってるかもしれないね。ごめんね鞄……って、僕鞄じゃねー!!!人を勝手に拉致った挙句、物のように扱いやがってこうなったら、自力で……うん、やめた。だって、僕の下に殺人で使ったナイフ、しかも紅く染められたのが。これを見て闘争心が完全に萎えてしまい、大人しくすることにしました。
『ブオン!!』
どうやら車にキーを入れエンジンを吹かしたらしい。ん、逃走……だとすると、真っ先に浮かんだのがハリウッドの十八番のシーンであるカーチェイスだが、あれは死と常に隣り合わせとはこのことで日常の生活には不必要で、僕の生活にも必要ないが、このアクシデントによってそれは始まりそうである。
さて、どうしたものか。シートベルトが出来ない。腕がタオルで縛られているからだ。急カーブなど来てみろ、体が重力に引かれて車内の壁に激突するのは確実だ。本来なら慰謝料をもらいたいけど、事情が事情なので口がそれを言えずに結局心にしまいこむ他ないので黙ってこの場を凌ぐことにするのであった。
『ブオン!!!ブゥーン!!!』
エンジン音を誰かに聞いてほしい言わんばかりに上げ、車体が動き始めた。僕が思っていた通りに加速し、安全装備されていない僕の体は前に引かれた。その後また微力ではあるが体が後ろへ戻る。これが慣性の法則かと、いつ習ったか忘れた法則の名前を思い出し少しばかり頭と体を日常に戻そうとした時だった。