お騒がせヒロイン
「レイムス・フェロガス、発言を認める」
「王太子シグルス様、処罰はきちんと学業を修めさせてからの方が宜しいのではないでしょうか。魔法などについても学園ならしっかりと学べますし、その方が能力が上り有用となります。長い目で見れば学園を辞めさせるのは悪手に見えます」
もっともらしいが学園は魔法について特化して学ぶわけではない。
そして、あれだけ不敬を働けば貴族だから処刑とまではいかなくともお家降格もあり得るレベルなのだが…フェロガス様は知らないんだろうなぁ…と一瞬思う。
そして顔を見て思い直した。
うん、単にマリアと離れたくないんだろう。
彼はまだ一年だというのに既に攻略されていたらしい。
「まだ学園生の身ゆえそれも考えた。だが魔法の専門家たちと協議した結果、学園は聖属性の習得には不向き、教会こそ一番能力が伸ばせる場だと結論付けられた」
「しかし…」
「私からも宜しいでしょうか?」
食い下がる彼を遮り手を上げたのは宰相子息バルム様。
「フェロガス殿にお見せしたいものがあるのですよ」
そう言いながらニコニコと内ポケットから折りたたまれた紙を取り出した。
受け取り広げ目を通し始めたフェロガスの顔色がだんだん悪く変わっていく。
「これ…は…」
「彼女が学園に入ってからしてきた行いですよ。授業をサボった内容からディルアーナ嬢への過剰な戦闘の持ちかけ、不純異性交遊、学園への持ち込み禁止アイテムなどしょっちゅう使用してますし王族専用エリアへの無断侵入などもあります」
ニコニコとしたまま口にした罪の一つ一つは大した事ではない。
罰されても厳重注意が関の山だろう。
しかし量が量だった。
細かな文字でびっしり書かれているのに数枚に渡っていたのだ。
「そこに書けていないのですが、そこへリュシルファ様への不敬や危険思想が加わります。彼女の行動履歴を見るに王族やそれに準じる方への敬意が感じられないんですよね~…まるで我々を恋愛ゲームの駒として見ているようにすら思えてしまいます」
そう言って困ったように肩を竦めるバルム様。
うん、マリア、攻略対象のことは恋愛ゲームの駒扱いしてると思う。
さすが鋭い…てか鋭すぎて若干怖い。
「他の方々もご覧になりたければ扉外に控える私の侍従が数組持っていますので後ほどどうぞ」
そう言ってバルム様は一礼した。
フェロガスは力なく立ち尽くしている。
あの量の問題行動に不敬な言動…元々庶子だった彼女が学園を辞めて修道女になるだけというのは寛大な処遇だとフェロガスも認めざるを得なかった。
「他に異議のある者はいないな?」
シグルス様の確認に誰も反応しなかった。
こうしてお騒がせなヒロインのマリアはゲームの本編である二学年生となる前に学園から去ることとなった。
ゲームを知っている私的にはマリアは何がしたかったんだ感が否めないし何回『マリア、バカなの?』と思ったか分からないけど…。
平和に過ごせるならもう、なんでもいいや。
城に来る前と打って変わってそんな肩の荷が下りた気分になった。




