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燈守ノ書 〜 大正怪異譚【改稿版】  作者: NOA
第1話 銀鼠の記憶
8/27

1-8

 燈守神社に隣接する灯神家の住まい。

 ちゃぶ台には、麦飯、焼き魚、味噌汁、漬物、厚揚げの煮物──素朴な夕餉が並んでいた。


 玲は夢中で飯をかきこむ。

「……なあ、玲。それ、何杯目だ?」

 呆れ顔の晴臣が問いかける。

「四杯目」

「やっぱり……なんでそんなに食えるのさ」


「……体を貸すと、腹が減る。全部抜けたみたいになる」

「そういうもんか。……そりゃ、食わんとやってられんよな」

「うん。詰めないと」

「……なにその言い方」


 晴臣が飯櫃(めしびつ)をのぞくと、もう残りが心もとない。

 そこへ湯気の立つ茶を盆にのせ、灯神家の主・敬道が戻ってきた。


「はははっ、ご苦労だったな、ふたりとも。玲、遠慮はいらんぞ。今日は米を多めに炊いてある」

「おかわり!」

 玲が勢いよく茶碗を差し出す。

「もう五杯目だぞ!?」

「……うん」


「俺の分、残ってるよな?」

 晴臣が念を押すと、敬道は笑って言った。

「おや、あと一杯分ってとこだな。煮物なら山ほどあるぞ。そっちは腹いっぱい食え」

「やった!」

 玲の目が輝く。


「晴兄、それ食べないなら──」

 言うが早いか、目にも止まらぬ速さで目刺しを箸でつまみ、ぱくっ。

「あっ、それ最後に取っておいたのに!」


 三人の笑い声が、ちゃぶ台を囲んで響く。

 湯気とともに広がる温もりが、静かな夜をやさしく包み込んでいった。






次回 第2話 白の陰陽師


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