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燈守ノ書 〜 大正怪異譚【改稿版】  作者: NOA
第1話 銀鼠の記憶
4/23

1-4

 怪異が出るのは夜だという。

 だから二人は今夜、離れに泊まることになった。


 ふたりきりになると、玲はずっと気になっていたことを口にした。

「晴兄。外で、呼んでる。さっきからずっと」


 晴臣は提灯を手に取る。

「行ってみよう」


 裏庭へ出ると、月もない闇があたりを包んでいた。

 虫の声ひとつなく、湿った空気が肌にまとわりつく。

 草を踏む音だけが、やけに耳に残った。


 玲は一歩、二歩と蔵の方へ進む。

「あそこ……」


 指さした先で、何かが提灯の光を弾いた。

 晴臣がしゃがみ込み、手を伸ばす。

 銀細工の鼠の根付だった。小さく「ちゅぅ」と鳴くような音を立てた。


 指先が触れた瞬間、二人の頭に声が流れ込む。


『聞こえておるなら、さっさと来んかぁ──!』

 晴臣と玲は顔を見合わせる。

『この家の者は鈍すぎて、わしに気づかん。啓太郎に伝えねばならぬことがある。早う、連れて来い!』


 玲がふうっと息を吐く。

「なんで怒られてんだろうね、晴兄」

「まったくだ……よく喋る鼠だな」

『何を申すか! この姿ではどうにもならんのだ、仕方あるまい!』

「はいはい……」


 晴臣は銀鼠をそっと布に包み、懐に入れた。

(根付に念が宿ったか……。よほど強い思いが残っているらしいな)


 玲はこっそり心の中で笑った。

(頑固鼠……ぷっ)


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