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燈守ノ書 〜 大正怪異譚【改稿版】  作者: NOA
第2話 白の陰陽師
12/24

2-4

 翌朝早く、綺良は神在坂へと向かった。

 男から聞いた話を頼りに、「桔梗屋」という商家を探ることにした。


 井戸端で年配の女に声をかけると、話好きな調子ですぐに返ってきた。

「桔梗屋のご主人? ああ、最近おかしいよ。道端でぶつぶつ言ったり、山伏みたいな得体の知れない男が出入りしてるんだって。店もずっと閉めっぱなしさ」


 女は少し声をひそめる。

「でもね……ご主人も気の毒でさ。七つの娘さんが去年、流行病(はやりやまい)で亡くなって。奥さんも心労で先月逝っちまったの。身内を二人も続けて失えば……ねぇ」


 桔梗屋を(うかが)っていると、裏口から大柄な男が出てきた。

 古びた法衣に数珠を下げ、頭巾を深くかぶっている。

 その全身から、禍々しい気が漂っていた。

「では、今宵……」

 男の低い声に、桔梗屋の主人とおぼしき人物が深く頷いた。

(あれが──呪詛を請け負った陰陽師か)


 恐らく、彼らが放つのは命を代価にする呪。

 最も苛烈な術で、狙われた相手は必ず死ぬ。そして、それを望んだ者もまた命を落とす。


 桔梗屋の主人は、承知のうえで依頼したのだ。

「灯神敬道を殺せるなら、自分の命など惜しくない」

 そう言って、陰陽師に金を積んだのだろう。


 このままでは、術は燈守神社へと向かう。敬道も晴臣も、命を奪われてしまう。


(ならば……俺が受けるしかない)

 呪いを引き受け、結界の内で逆に返す。

 それが今の自分に残された、唯一の(あがな)いだった。


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