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燈守ノ書 〜 大正怪異譚【改稿版】  作者: NOA
第2話 白の陰陽師
11/23

2-3

 今の綺良は、武蔵の外れにある粗末な小屋に暮らしていた。

 祓いや占いで、その日を(しの)ぐ。孤独には慣れきっている。


 それでも時折、あのぬくもりを思い出す。

 ──灯神家で過ごした日々。

 敬道の厳しくも優しい笑み。

 「僕たち、兄弟みたいだね」と笑った晴臣。

 初めて食べた栗飯の味──栗の甘さが、なぜか胸に痛かった。

 八年も前のことだ。

 温かさに触れるほど、己の内に(くすぶ)るものが許容できず、黙って立ち去った。


(……もう、戻れぬ)


 外から足音。

 戸を開けると、顔なじみの流れの陰陽師がにやりと笑う。

「よお、久しぶりだな。お前、まだ生きてたか」

 気のいい男で、土産の酒をぶら下げている。勝手知ったる様子で腰を下ろした。


「面白い話があるんだよ──最近すげぇ依頼が来てさ。神主を呪い殺してくれってんだ」

「……神主?」

 綺良の手が止まる。


「ああ。娘を殺されたとか。まあ、完全に逆恨みだな。しかも、自分の命を差し出すってんだから……あれはやべぇ奴だったな」

 男は笑いながら酒をひと口飲む。

「まあ、こっちは似非(えせ)陰陽師だから何もできんけどな」

 綺良は震える膝を押さえた。

「どこの誰だ……そいつは」

「確か……神在坂ってとこから来たって言ってたな」


 その地名を聞いた瞬間、綺良の胸が大きくざわめいた。言いようのない焦りがこみ上げる。


(……敬道さん、(はる)──)


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