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燈守ノ書 〜 大正怪異譚【改稿版】  作者: NOA
第2話 白の陰陽師
10/26

2-2

 灯神家の夕餉は、味噌と煮物の匂いがやわらかく漂っていた。

 玲が箸を止め、思い出し笑いをしながら言った。


「今日、すごく変な人を見たんだ」

「変な人?」

 晴臣(はるおみ)が顔を上げる。


「うん。犬に吠えられててさ。髪が白くて、目が少し赤い。顔を襟巻きで覆って……ふふっ、あれで、隠せてると思ってるのかな」


 その瞬間、晴臣と敬道(けいどう)の間に、張り詰めた沈黙が流れた。二人は、ちゃぶ台越しに鋭く目を合わせた。


「どこでだ、玲!」

 晴臣の声に焦りが滲む。勢いよく膝をつき、身を乗り出した。

「石段の下。さっきだよ」


 立ち上がりかけた晴臣の肩を、敬道が押さえる。

「今はやめておけ。探して見つかる相手ではない」

「でも、父さん!」

「いいから」

 父の有無を言わせぬ声に、晴臣は口を閉じた。


 玲はきょとんとする。

「え、知ってる人なの?」

 敬道は短く息を吐き、静かに視線を落とした。

「……綺良という」

「きら……?」

 玲には聞き覚えのない名だ。


「八年前、ここを出て行った。晴臣より三つ上で、今は二十二になるはずだ……」

 敬道の声には、重い後悔が滲んでいた。


 晴臣は目を伏せ、苦しそうに呟く。

「綺良兄……」

 石油ランプの灯りが、その(うつむ)いた横顔をゆらゆらと照らした。


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