第3話「ガンプラ効果で爆騰!……のはずが」
「これより、“しずコイン連動型静岡限定ガンプラ”のプロジェクト発表を行います」
知事の声が、報道陣と職員をざわつかせた(いつものように)。
私――泉田アオイ(19)、知事秘書官。
思い返せば、今日は本気で何かがおかしい予感が(いつものように)していた。
「知事……今度はホビーですか?」
「アオイちゃん、静岡と言えば何だと思う?」
「……お茶?」
「違う、バンダイのプラモデル工場だよ!」
「そういえば、ありましたね……」
そう、静岡は日本最大級のプラモデル生産地。
知事はそこに目をつけ、県独自で“しずコインでしか買えないガンプラ”を限定開発すると発表したのだ。
「これが“しずコイン専用ガンダム”の初期デザインだ!」
スクリーンに映し出されたのは、シャア専用ガンダムをベースにしたモビルスーツ。
しかし、そのカラーリングが――
「……薄いグリーン……?」
「そう、これは“深蒸し煎茶”をイメージした静岡カラーだ!」
記者の一人が吹き出し、私は頭を抱えた。
「シャアって“赤い彗星”じゃなかったんですか!? お茶色って……逆に一番ダメな方向では……」
「だって赤いと普通すぎてインパクトがないでしょ? しずコインの個性を出すには、ここしかないって思って」
ネットは一時騒然となり、ガノタ界隈が激しく反応。
『お茶カラーとかセンスねぇww』
『静岡県、サバ缶の次はガンプラを台無しに』
『欲しい……けど欲しくない』
午後1時。
しずコイン、爆騰。
+23.8%
午後4時。
正式カラーが“深蒸し煎茶風”と明言され、価値暴落。
-31.4%
「知事、なぜ初報で“お茶色”って言わなかったんですか!」
「言ったら売れないと思って……」
「結果的にもっとひどくなってます!!」
その日のしずコイン相場は、過去最悪の“半日乱高下”として全国経済紙の一面を飾った。
「でもさ、経済って、心の揺れと連動してるって言うだろ?」
「……それ言うの、何度目ですか?」
しずコイン専用シャア専用ガンダム(深蒸し煎茶カラー仕様)は、後日“公式非売品”として県庁の倉庫に封印されたのであった……。