第三章〜どうすれば?
よろしくお願い申し上げます。
なんだか思考が滞っているように感じた。動揺しているのかもしれない。
逃げるにしろ逃げないにしろ、勝海を助けに行くにしろ行かないにしろ、このままお化粧のし掛けみたいな顔で外に出るわけにはどの道、いかなかった。
わたしは再びマスカラをくるくるし始めた。
ウォータープルーフのマスカラだけれど、なんだか冷や汗に溶け出て眼を痛くしているような気がしてならなかった。
ふと気づく。
━━助けにいく?
何処に?
わたしは今の彼女の居場所を知らなかった。
無二の友人のひとりだ。いくら一方的に逃げて、と言われたからって、一人だけ逃げるわけにもいかないような気がした。
手掛かりは?彼女の居場所を特定する手掛かり。
━━記憶。
とくに彼女から、何処かに旅行するどとか田舎に帰省するだとか聞いた憶えはなかった。
もとより勝海はそれ程旅行は好きではなかった筈だし、好きだったとしても、わたしと同じくお金はあまり持っていないのだから、行きようもあるまい。カレシにでも連れて行って貰うとかならあり得なくはないけれど、生憎わたしと同じく、カレシが彼女に出来たという話は聞かなかったと思う。
では、何処に?
━━GPS情報。
でも、通話履歴にGPS位置情報が残されるほどセキュリティの甘いアプリではないようだった。
では、他には・・・。
わたしは考え込んだ。考えながら、チーク・パウダーを頬にぺたぺたした。ミラーを見る余裕もなく。
逃げて、という言葉が頭の中に反響する。
わたしが逃げなければならないかもしれないというのはもちろんだ。が、それよりもわたしは勝海の身を案じじていた。
少なくとも 彼女は 私の身を案じているようだ。ならば それに応えて、わたしは勝海の身を案じるべきなのではないか、そう思えてならないのだった。
一体、彼女の身に何事が起きていると言うのだ?
疑問ばかりが増えてゆく。わたしは焦った。わたしは、どうするべきなのか?
やっぱり警察にでも通報すべきなのだろうか?
いや、そもそもこの不確定な状況で警察というものは、動いてくれるようなものなのだろうか?
警察なんてもの、 いざという時には助けてくれないものだとは、よく聞く 噂だ。
ありがとうございました。