胸の高鳴り
ひとぶひん、ひとぶひん。
祇園にもらった咲茉の設計図及び説明書と照らし合わせながら、まずはよくよく観察してのち、慎重に慎重を重ねて、竜の力を使い、ひとぶひんを変形。
兵器を変形させて、無害化していく。
取り除く事はしない。
これらの兵器は咲茉の拠り所である。
空っぽでも、空っぽなりに必要なのである。
ゆえに、
変形させて、無害化して、咲茉の身体に遺す。
ひとぶひん、また、ひとぶひん。
変形させる為に、竜の力を、己の力を、咲茉の身体に遺す。
いついつの日にか。
もしも己が消滅したとしても、
とわに遺るように。
「まったく。そなたは。どれだけ吾輩の胸を高鳴らせれば、気が済むのやら」
一日に三度のメンテナンス。
一度目は、観察。
二度目も、観察。
そうして、三度目で、ひとぶひんの変形の実行。
をするわけだが。
祇園からもらった説明書通りに咲茉を機能停止にしたとて。
咲茉は己の身体に無数に組み込まれた多種多様な兵器に触れたその瞬間、目を覚まして。
「抹殺を開始します」
「クハッ。かような無機質な表情でも、声音でも、そなただと言うだけで」
胸が高鳴って仕方がないわ。
(2024.8.14)