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たわけ




 岩の家の前にて。


「では、ぜん咲茉えま。馳走になった。また近い内に来るからよろしく!」

「ああ。ドクター。息災でな」

「では、月に一度のメンテナンスで会おう。月に一度の」

「ははははは。いやいやいや。俺様に会えなくて善も咲茉も寂しいであろうから、頻度を高めて来てやろう。は!そうだそうだ。馳走になってばかりでは申し訳ないからな。今度は俺様のアジトに招待してやろう。俺様の料理の腕前をたんと堪能するがよいよい。そうだな。今俺様が日時を決めておいてやろう。三日後の午前十一時だ。昼食を用意してやろう。ははははは。楽しみにしているがよい。では、バイバイバイビー」


 賑やかなティータイムを終えては、とても賑やかに帰る、ドクターこと祇園ぎおんを善と咲茉は並んで見送った。


「あやつは一人でも喧しいな」

「ドクターはとても陽気な人だから」

「咲茉は祇園が気に入っているのだな」

「………そう、だな。気に入っている。の、だと思う。安心する」

「そうか。それは何より。メンテナンスを任せる相手が気に入っていなければ、大問題だからな。咲茉が気に入っているからこそ、吾輩も吾輩たちの家に足を踏み入れるのを赦しているというものだ。本当にあやつは運がよい」

「マスター」

「何だ?」

「私は、邪魔、ではないだろうか?」

「………何故そのような考えが生まれたのか。尋ねてもよいか?」

「マスターは独りで生活する事が、気に入っているのではないか。私と共に生活する以前は、固定した居を構えず、独りで気に入った場所で暮らしていたのだろう。だから、私が傍に居る事でマスターに苦痛を与えているのではないかと思ったのだ。マスターは、私にとても、優しいので。我慢しているのではないか?」

「………そうだな。確かに。吾輩は一匹での生活が気に入っていた。自由気儘に。孤高に。何ものにも縛られる事のない。竜とは本来そういう生物だからな。ただ、吾輩は咲茉と出会って、竜としての本性を、吾輩の思考を書き換えられた。吾輩は今、咲茉と共に生活する事で、この上ない幸福を与えてもらっている。感謝しかない。我慢など、戯けた事を申すでない」

「………私は。マスターにそこまで気に入ってもらえるほど。マスターに与えているとは。到底思えないのだが」

「ハッハッ。今はわからずともよい。時間をかけて。わかっていけばよい」

「………わかった。すまない。足を止めてしまった。家に入ろう」

「ああ」











(2024.8.14)




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