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三客のカップ




 岩の家の客間にて。

 白桃クリームのカンリーノ、白桃ゼリー、白桃とレアチーズのタルトをそれぞれ乗せた三段のケーキスタンドを三つ持ってきた咲茉えまは円卓に置くと、ドクターこと祇園ぎおんぜんがお茶を持って来るので待っていてくれと言った。


「そうか。では待っていよう。咲茉。貴様も座って待っていたらどうだ?」

「いや。マスターが来るまでは立って待っている」

「貴様が立ったまま待っていたら、マスターはいい顔をしないだろうな」

「そうだろうが。私なりのけじめだ」

「けじめか」

「ああ」

「マスターはよほど貴様を溺愛しているようだな」

「………嫌われるよりはいいのだが。正直、困っている」

「ほおう。困っているのか?」

「困っている」

「どうして困っているのだ?」

「褒められた時、どのような反応をすればいいのか。わからない」

「ほおう。嬉しくないのか?」

「よくわからない。嬉しいのか。嬉しくないのか。ドクター。私は、あなたに私の身体を機械化してくれるよう依頼した時、感情を消去するように言ったか?」

「言っていない。貴様も覚えているはずだが?」

「ああ。そうだ。覚えている。はずだ。何もかも。だが。マスターと共に暮らし始めてから。いや。マスターに空へと導くマスターになってほしいと願い出た時から。私の記憶に支障がきたし始めた。ぼやけたり、消えたり。私は。どうして、私の身体を機械化までして、一人の人間を殺害しようとしたのか。忘れてしまった」

「思い出したいか?」

「………私は「思い出さずともよい。そなたは今、吾輩と共に空を自由に飛べるようになる事だけを考えておればよいのだからな」


 遅くなったな。

 善が祇園に詫びると、手早く紅茶を三客のカップに淹れてはそれぞれに配し、咲茉に座るように勧めたのであった。












(2024.8.11)



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