ぱっちりばっちり
岩の家の善の自室にて。
「咲茉。寝たね」
「咲茉。寝たな」
咲茉の左隣で眠っていた詩と、咲茉の右隣、善の左隣で眠っていた昴は静かに起き上がると、ひそひそ声で言いながら咲茉を見下ろした。
「まだ朝ではない。もう少し眠っておれ」
「「おめめぱっちりあたまばっちり」」
「では遊んできてもよい。ただし、岩の家の中でだ」
「善。私たちが心配?」
「善。俺たちが心配?」
「ああ」
「「変なの。心配する必要なんてないって善、知っているのに。完全無敵の精霊様だぞ」」
「心配する必要がないほどに完全無敵の精霊だろうが、心配なものは心配だ」
「私たちが咲茉に気に入られているからか?」
「俺たちが咲茉に気に入られているからか?」
「そなたたちが咲茉を気に入り、咲茉がそなたたちを気に入っているからだ」
「「善。咲茉が大好きだ」」
「そのような言葉では足りぬな」
「「ふひひひひ」」
「善。咲茉と二人きりだからって変な事をするなよ」
「善。咲茉と二人きりだからってやらしい事をするなよ」
「「ちょっと遊んでくる。静かに。岩の家の中で」」
「ああ。遊んだらまた戻ってこい」
「「うん」」
詩と昴は静かにベッドから下りると、静かに床を歩いて、静かに部屋から出て行った。
「意識のない咲茉にちょっかいをかけてようが、まったく胸が高鳴らない。わけでもないが。手は出さぬ。少なくとも。咲茉が吾輩を求めぬ限りは。な」
善は詩と昴が出て行った部屋の扉のない出入り口から、間を置いて眠っている咲茉の寝顔を見下ろして目を細めた。
(2024.8.30)




