ティータイム
「マスターはドクターと仲がよいのだな」
「………どうしてそう思うか。尋ねてもよいか?」
咲茉に空へと導くマスターになってほしいと願い出されたその日の内に、善が山と見まがうほどにそれはそれは巨大な岩を器用に切り抜いて造った、いくつかの部屋と階層のある岩の家にて。
客間でドクターこと祇園を待たせて、台所でティータイムの準備を横に並んでしていた咲茉は、人化している善の質問に答えた。
「ドクターと話している時はよく笑い声が聞こえるからだ」
「うむ、なるほど。だがそれは、祇園と仲がよいから。というよりは、そなたの話をしているからだ」
「私か?」
「そうだ。そなたの話をしていると、自然、笑いが出る。そなたはその場におらずとも、場を明るく、心を温かくさせてくれる。流石は、吾輩の羽ばたきに打ち勝った唯一無二の存在よ。才を無限に備えておる。ハッハ。どれだけ吾輩の胸を高鳴らせれば済むのやら」
「………マスター。色眼鏡で見過ぎだ」
「ハッハッハッ。謙遜の才もあるとは。参った参った。ハッハッハッハッ」
「………マスター。用意が済んだので、先に行く」
「手際もよいとは。ハッハッハッハッ」
「………」
(2024.8.10)