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よいよい




 岩の家のぜんの自室にて。


「私が自分で処理できればよかったのだが、私には私自身の暴走を停止する方法がわからない。本当に、マスターには世話をかけ通しで、とても。申し訳なく思ってはいるが。私は、」


 咲茉えまは続く言葉を飲み込んだ。

 言えるはずがない。

 こんな、


(夢の中で、自分で自分自身を終わらせると、できないならばドクターに頼ると大見得を切っておきながら、この体たらく。これだけでも、情けない事この上ないのに。まさか、こんな言葉を、)


 言えるはずがない。

 言えるはずがなかった。


(私はやはり、あの時、)


「咲茉よ。そなた、何か勘違いをしてはおらぬか?」

「何も勘違いはしていない」


 うつ伏せ寝していた善はやおら起き上がると、隣で仰向けになりながら目を瞑っていた咲茉の左側の顔の輪郭に沿えては、大きなその竜の片手でそっと包み込んだ。


「そなたに支障はない。誰がそなたのメンテナンスをしていると思っている。吾輩なのだ。暴走など、させるはずがなかろう」

「だが、私が兵器を組み込んだ人造人間である以上、必ず、不具合は起こる。今も。夜のメンテナンスの時に、マスターに攻撃しているのだろう。データにはない。だが、マスターの身体に傷があった。些細な傷だが」

「クハッ。そなたは吾輩に攻撃していたと気付いておったか?しかも。ハッハッハッ。吾輩が竜の力で回復させた傷も見抜くとは」


 善は目を細めると、咲茉の顔から片手を離して、目を開けるように言った。


「拒否する」

「そうか。拒否か。よかろう。ではそのまま目を瞑っているがよい。どれだけ強固に目を瞑っていたとて、咲茉の目を開けさせる方法なんぞ、いくらでもある。が」


 善はまた、やおらうつ伏せ寝の姿勢を取って、目を瞑った。

 咲茉の隣で。


「今日はこのまま吾輩の部屋で眠る。それでよいな」

「………」

「クハッ。沈黙もまたよし。よいよい」











(2024.8.28)




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