陶然と
「クハッ。何だ?咲茉も吾輩の膝に座りたいのか?」
崖の頂にて。
無言で向日葵の種クッキーを食べ終えた昴と詩が、そのまま座っていた善の膝の上で眠ってしまった。
咲茉が二人の様子をトマトミートソースと溶けるチーズ入りの揚げパンを食べながらじっと見つめていたので、善は少しからかうような気持ちも込めながら、どうせ否定するのだろうと予想しながら言った。
案の定、咲茉は否定した。
「ただ、意外だっただけだ」
最後の一口を食べ終えて、善に御馳走さまでしたと礼を述べ、檸檬水を二口飲んでから、咲茉は口を開いた。
「マスターと昴と詩がこんなにも早く距離を縮めるとは思いもしなかった」
「クハッ。まあ。利害の一致。というやつだ」
「利害の一致」
「吾輩とそなたのような関係ではなくとも、距離を縮められる関係性がある。という事だ」
「………私と、マスターの関係」
「そなたは吾輩とそなたの関係にどのような名称をつける?」
「教えを与える者と教えを乞う者だ」
「それ以外は?」
「それ以外、とは何だ?」
「クハッ。咲茉よ。そなた、吾輩のように飛翔できたならば、吾輩の傍から離れるつもりか?」
「………わからない」
「わからない。つまり。その可能性もある。という事だな?」
「ああ」
善は目を細めては、陶然と笑った。
「そうか。それもよかろう」
(2024.8.26)




