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ピクニックバスケット




 崖の頂にて。

 うたすばるを抱えて、一気に崖の下の樹海の森から崖の頂へと跳躍した咲茉えまを待っていたのは。


「マスター」

「昼食がまだ済ませていなかったであろう」

「………そうだったか?」

「そうだ」


 ぜんは持っていたピクニックバスケットから取り出したレジャーシートを岩肌の地面に敷くと、靴を脱いでその上に座り、同じくピクニックバスケットから咲茉の昼食を小さく低い円卓ごと取り出して乗せた。


「詩と昴はもう食したので、おやつの向日葵の種クッキーを食すがよい」

「「さっすが善!わかってるう!」」


 おとなしく咲茉に抱きしめられていた詩と昴は咲茉に地面へと下ろされると、いの一番に駆け出し、レジャーシートに乗る前に靴を乱暴に脱いでは地面へとほっぽって、善に抱き着いては、両手を善の頬に押し付けた。


「「くれ!」」

「ゆっくり食せよ」

「「うん!」」


 紙ナプキンに包まれたヒマワリの種クッキーを善から手渡された詩と昴は、善の膝におとなしく座って、身に着けている狐の仮面は外さず、仮面の穴が開いている口の部分から一枚ずつゆっくりと食べ続けていた。

 善は詩と昴を膝に乗せたまま、肩から下げていた円筒と蓋になっている四つのコップをレジャーシートの上に置くと、円筒の中身の檸檬水を四つのコップに注いだ。


「いつまで突っ立っている。咲茉も早く座れ」

「「座れ座れ」」

「ああ」


 善、詩、昴に促された咲茉は靴を脱いで座ると、善から手渡されたおしぼりで手を拭いて、続けて手渡された紙袋の中を開いた。


「トマトミートソースと溶けるチーズ入りの揚げパンだ。この檸檬水は塩も入っている。少しほろ苦いがすっきりとして飲みやすい」

「ねえねえ」

「なあなあ」

「私たちおしぼりで手を拭いてないけどいいの?」

「俺たちおしぼりで手を拭いてないけどいいのか?」

「子どもは一食ぐらい手を拭かず食しても死にはせん」

「「じゃあ。咲茉は手を拭かないで食べたら死んじゃうの?」」

「ああ。手をきれいにしなければ、咲茉は死んでしまう」

「マスター。死ぬは言い過ぎだ」

「そうでもなかろう。調子が悪くなるのは事実だ」

「そうだが………詩。昴。気にせず、クッキーを食べていい」


 詩と昴に無言で凝視されていた咲茉は居心地が悪そうに言うと、詩と昴は止めていた口を動かして向日葵の種クッキーを食べたのであった。











(2024.8.16)




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