ロッキングチェア
「呼ばれて飛び出てじゃんじゃじゃーん。俺様が来てやったよ~ん」
「神出鬼没なやつだ。咲茉の眠りを妨げるようならば、その口をもいでやろう」
「いやん。お昼寝しているとは思わなかったのだ。ゆるしてくれ」
岩の家の台所にて。
いつもの如く突撃訪問したドクターこと祇園は身をよじらせ、声量を絞りながら、ファブリックシートのロッキングチェアで居眠りをしている咲茉へと近づいた。
「飛翔の訓練に力を入れて疲れたようだ」
善は夕食のごろごろ野菜スープに入れる野菜を乱切りにしながら、声量を抑えて言った。
「ふうむふむ。飛翔の訓練に力を入れて。ねえ」
「クハッ。何だ。そなた。咲茉を心配して来たのか?」
「そうだよ~ん。昨日会ったばかりなのについつい顔を見に行こうかと思うくらい超心配してるよ~ん」
「そうか。感謝する」
「はははははは。もう立派な咲茉の保護者だな」
「クハッ。保護者、か」
「はははははは。違うか。保護者兼恋愛関係者か。お互い無自覚だろうが」
「保護者。恋愛関係。さて。吾輩と咲茉の関係はどのような名称が相応しいのか。考えているが、思いつかぬ。ただ。咲茉は吾輩にとって唯一無二の存在であり、生涯を懸けて、共に生きる存在である」
「生涯を懸けて共に生きる………ね。善よ。現状のままでそれが叶うと、まさか本気で思っているわけではあるまいな?」
ニヤニヤニタニタ。
いやらしく笑う祇園を一瞥したのち、包丁を動かし続けていた善は夕飯はどうするかと尋ねた。
もちろん、馳走になっていく。
祇園は前のめりになって言ったのであった。
(2024.8.24)




