絶対に嫌だ
「ドクター、私を殺してくれ」
「えええ何でだ絶対に嫌だ」
咲茉と善が暮らす岩の家から一番近い、ドクターこと祇園のアジトにて。
何の連絡もなしに突然訪れた。
しかも善と一緒ではなく一人で。
その時点で何か厄介な事を頼まれそうだなと思ったら、案の定で。
祇園は咲茉の頼みを即座に拒んだ。
「お願いだ、ドクター。私を殺してくれ。私は今、私を完全に制御しきれていない。意識がある時もない時もだ。意識がない時には、マスターに危害を加えている。マスターはとても強いので、私の攻撃など意にも介していないだろう、すぐに回復するだろうが。傷を負わせている事は事実。もしも。万が一。マスターに。取返しもつかない危害を加えてしまったらと思うと………思考も煩雑化してしまって、不透明化にしてしまって。うまく言語化できなくなってしまった。これ以上、狂ってしまったらどうなるか。自爆しようとした。自殺しようとした。だが、できなかった。恐らく、マスターがメンテナンスで兵器を使用不可能にしている。のだと、思う。自殺できないようにプログラミングしたのだと、思う。マスターに直接尋ねていないので定かではないが。何故、私はマスターに直接尋ねられないのか。それすらわからない。ドクター。頼む。私を殺してくれ」
「理由はわかっただが絶対に嫌だ」
祇園は両腕を交差させては、力強く拒み、拒む理由を簡潔に言った。
咲茉を殺したら、善にひどくひどくとってもひどい厄介事を一生押しつけられ、それから逃げる事が絶対に不可能だから嫌だ。
(2024.8.22)




