生きる意味
殺したい人間が居た。
確実に殺せるように、ドクターに身体の機械化を依頼して、人造人間になった。
一年間の血の滲むような特訓により、自分の身体に組み込まれた兵器を使いこなす事に成功して、殺したい人間を殺そうとしたら、殺したい人間はすでに別の人間に殺されていた。
ぱたりと。
心臓の音が止んだ。
誰にも迷惑がかからないように、誰も訪れる事のなく周辺に生物も存在しない崖の上で自爆しようとしたその瞬間、轟音が鳴り響いたかと思えば、突風によって縁から中央へと身体が転げ回っては、仰向けになった私の目に飛び込んできたのは。
翼も身体も羽ばたきも、とても大きな大きな、紅の竜だった。
っとっとっとっと。
とくとくとくとく。
どくどくどくどく。
心臓の音が再び鳴り響く。
私は、生きる意味を、見つけた。
私は、あのすべてがとてもとても大きな紅の龍のように、空を飛ぶのだ。
決意した私は大声で、紅の竜に願い出た。
私を空へと導くマスターになってほしいと。
ゆえに。
「マスター。私が頼んだ事はこういう事ではないのだが?」
「いやいや。こういう事だろう?」
いや絶対に違う。
断言できる。
(2024.8.7)