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ひざのくに年代記

 以下、『ひざのくに年代記』の記述を交えて。



 ーー「ううっ。まにあったぁっー!

 お嬢様のだけどお掃除すればバレないもんね!(※『バレました』byミカ)

 うーん。……快適だ」


 小さな個室に設けられた厠に腰掛け用を足す少女の目の前が揺らぐ。

 それは煙のようにゆらめきいくつもの煌めきと共に若い男の像を結んでいく。


「約束通り『瞬間移動」で……メイ?」


 彼女のおもてがたちまち赤く染まっていく。


「出てけー!」



 メイ・ムラカミ・スカラー(※村上命 菅原命)

 ムラカミ陪臣家の養女に迎えられ途中編入ながら王立学園を優秀な成績で卒業。

 王妃からの三顧の礼も多数の良縁をも無視して出奔。辺境に戻り、後に起こりしムラカミ・ドラゴンモンキー分家のメイドとして勤めながら夫の生涯の仕事であるスカラー派再興に尽くす。


 何故か辺境で生き残っていた『零の女神』信仰と統合され、今なお小さな祠で二柱の女神と共に祀られている。

 神格は当然どろぼう、いたずら、迷子、球技に家畜の保護、学問への渇望をも司ることから夢を追う者たち(冒険者)の守護神とも。

 享年57歳。


「ミカちゃん……ありがとう。先にいくよ」ーー




 ーー彼は戸惑いつつ答える。

 彼にとっては彼女は絵本を読んであげたり、勝手に本を燃やしたり捨てようとする困った歳下でしかない。掃除は助かっているが。


「裸で迫ったこともあるのに厠にいるところを見られたくらいで」


 最後まで言えなかった。

「ショウのばかー! きょうようある子が好きでわたしみたいなのに関心ないんだろーが! わたしもうそんなことしないもん! 絶対べんきょうしてめにものみせてやるぅ!」



 ショウ・スカラー(菅原 星)

 スカラー派再興の祖。伝説では魔導士。

 その知恵にて歴代の領主を支え、あるいはいくつもの爆発事故を起こして減給の憂き目を見る。

 後に妻となる女性が『どこの手のものかわからぬ』追手に追い詰められた時、空を飛んで迎えに行ったという伝説がある。

 享年74歳。


「メイ、次はこの本を読んであげましょう……むかしむかしあるところに」ーー




 ーー「ミリオン、あんたどこに落ちたい」「さぁどうしようかな」


 とぼける相棒に彼女は微笑み、爆薬にてプロペラを弾き飛ばす。座席の脱出機構の爆薬を用いて点火。


「音の世界に行こう」「あいよ」


 三つの燃料が段階的連続反応し強力な噴射をはじめる。

 視界が一瞬真っ暗に染まる。


 それが一気にひらいたとき、彼女は光の中にいた。



「……まったく、老骨にこたえるのぉ。このクサレビッチめ」

 大きな竜に座った老人は二人を慈悲深く見た。

「マーク?」「じゃよ。ミリオン。あとはこの老いた竜騎士に任せい」

「なんだよこのクソ野郎」「なんじゃとお」「まぁまぁ」



 ロベルタ・リコ・アクアマリン(ボビィ・『リッキー』・トッド)

 飛行機開発者にして飛行機操者。著書多数。

 空を目指す少女たちの憧れ。空の冒険者。


 伝説では『ひざのくにの空戦』にもかつての悪友グラッタン氏とともに老骨鞭打ち参戦しその伝説的撃墜数を更新。かつ墜落数も更新したという。


 帝国の記録、『ひざのくに』の記録を合わせても『ひざのくにの空戦』は記録上騎士爵領(※当時)の敗戦ではあるものの、騎士爵領側は『百万の幽霊』の仕業としか思えない撃墜記録をわずか30機と飛竜5騎にて成しており((※帝国側空軍主戦力バイドゥ2型 hp.R009、王国側通称『風船ガム』300体全滅)参戦したパイロットたちと整備班いずれもわずか10分で修理を終えて幾度も戦い抜いたという伝説、何よりロベルタが乗ったとされる機体設計図を調査した帝国技術者たちが『これでは飛ぶことすらおぼつかない』と評価していることから歴史の謎とされる。

 享年72歳。



「星のかなたが見えるよ。わたしがさきにきりひらくから……」ーー




 ーー彼は……空を見上げたまま肺潰れ最後に妻の名前を呼んだものしれない。

 遠くで主婦たちを指揮して戦っていたはずの妻が見えてゆびさきを握ってくれるまぼろしを見て。


「ああ。やっぱりきれいだな」


 太っていることなどみえはしない。

 あの時のしらたまの瞳はそのまま。


「お慕いしております」


 死体によくある硬直の類だったかもしれない。

 彼は彼女の指を最後の力で握りしめた。


 少なくともそのつもりだった。


 事切れたはずだった。


「姫さま……姫」

 自分の干からびた声で目が覚める。


「あれれ」

 彼女は彼に這いずり、かろうじて彼の指先を握ったはずなのに。

 めちゃくちゃ上に乗ってる。

 めっさ重い。


「ちょっ。ちょっとかぁちゃん起きてくれ」

「お慕いしております」


 まだ寝ぼけているし。

 なんかちょっと恥ずかしい。

 悪くはないけど。


「お熱いですね姫さま」

「よっ。大酋長」


 娼婦たちのやり手婆とパ族と思しき少年が彼らを揶揄う。


「かぁちゃん、頼むから起きてくれ」

 彼は泣き言を放った。



 クム・ジャディニィエ(スィッタ・クルアーン)

 庭師、園丁。水利の設計など多くの分野で活躍する。のちに王妃の招きに応じてやまとの庭を一から再設計。ムラカミ・アナスタシア本家始祖アメツチの心を大いに慰めた。

 その知的好奇心は歳を取ってなお衰えず王立学園に三年間通いながら工事を主導する。

 王都陥落のちその復興と街の再設計を任されるも年齢を理由に辞退。息子たちと辺境から手紙を送るロゼに任せその仕事を見届けてのち息を引き取る。

 立身出世夢見た青年は豊かさこそ手放したものの誠に愛する妻と多くの子宝に恵まれ、大往生を遂げたのである。

 享年87歳。


「いつか世界中、いえ異世界とやらの庭をも見てみたいですね。ミマリ様。

 ……おっとどうされましたか。黙っていてはわかりませんよ。あなたの姉様との関係もそうです。

 ところでこの借景は大したものでしょう。今は戦乱にて荒野でするが、わたくしどもこの世を去り御子たちが育つ頃にはきっと」



 サフラン・クルアーン(サフラン・ウルド『花屋』・マーリック)


 太陽王の忘形見とされる姫君をめぐり多くの無辜の娘たちが虐殺されたのはかの王国史における汚点の一つではあるが、ものの歌劇によれば真に愛する殿方と手を取り逃げ、ドワーフたちの祝福を受けて結ばれたとするものがある。

(※それどころかギロチンの露と消えた王太子一家もまたとある冒険者兄妹により助けられ、譲位の儀式も王宮陥落する日に行われており、その者たちの手引きにより正統なる王一家が何処かにて姿を隠しているという伝説すらある)


 彼女の経歴はよくわかってないが、妻との間に実に10人もの子宝もうけ、かの姫君と同名ゆえ始祖マリカからも『サフラン様』と呼ばれ城内外から親しまれた。


「はっ? 前にこのお城を見つけた時に買い叩いた美術品や書籍をさらに安く手放す気かい奥様!?  他に売るものがない? 放出したポーションのこの綺麗なガラス瓶は捨てる? ……あたしに任せな! こいつらを正しく使って霞から金を作ってやる! ……いやぁ実は私も昔一応色々叩き込まれた身でねぇ」


 庭師の妻が被災直後真っ先に成したことは即席の髪結たちを集めて被災者たちに対して無料で前髪だけでも散髪をさせたこと、そして美貌と化粧技術で鳴らすガ族女性たちに前髪が開けた彼ら彼女らにやはり無料で化粧をさせたことである。


 さらにこの間に娼婦とある程度高貴な生まれの方々かき集めて、ガ族伝統の無害な顔料を生かした化粧の鬼特訓を施し娼婦たちの古風かつ非健康的な(※ださいとも)ファッションとメイクを修正させ、

 同時にパ族やガ族の中でも際立った美少年やイケメン相手に前髪だけでもと散髪の鬼特訓を仕込み、


 同じように当地を訪れた三国の軍人や災害派遣団たちにも散髪をさせてから化粧を施させ、当地に大量に残っていたヒールポーションなどの容器にガ族の化粧品をつめ高級化粧品(※三部族の伝統品ゆえ今まで原価の概念すらなかった)として化粧などカケラも興味持たないムラカミの海賊や軍人どもに故国で待つ妻たちへのお土産として持たせて『通販対応を行う』としたことである。


『絶対買うべき被災してなければ私が私たちが買う』

「おっおう」「う、うむぅ」「わ、わかり申した」


 その効果実感した当地の女性陣の魂のセールスにより多くのサンプルが海を渡る。


 そのあまりにも良質なサンプルを試した内外より注文が殺到し、復興大いに助けたのみならず、翌年には主催参加閲覧全て女性のみという高級下着ショウなる恐るべきイベントまで開催。


 肌を晒すこと極端に嫌い泣いて嫌がる奥様すら『下着はダメでも水着モデルを』『妊婦だから恥ずかしい? とんでもない。あたしゃ10人目ができても産むよ? どこが恥ずかしいかね。妊婦だからこそおしゃれもしたけりゃ水着も着るし専用の下着があれば快適だし奥様がモデルならみんな買うよ』として参加させてこれまた大成功。


 勝因は動く会場と男子禁制、舞台を進む美女たちの華やかさ、下着の着方すら知らない層向け廉価品の販売と着用方法の指導、多彩なラインナップ、妊婦や太った女性向けにもかわいい作品を出したことと分析しており、無から文化すら生み出す商才溢れる人物であったと思われる。(※実際のデザインはロゼに任せた)


「いいかい! 9人も産んでなんだけど妊婦用の服も水着も、あるいは太っていたってやっぱりかわいい服はいいもんさね奥様にロザリア様や! この上洗いがよくて着ていて楽で肌触りもいいとなりゃ……(以下略)」

「は、はい」「不詳了解致しました……本家の姫さまのため最善を尽くします」


「会場の食い物はそうさね。ミリアのボランティアクッキー塩砂糖抜きに塩の効いたチーズと当地の各ジャムを試してもらってケイブルワインを出すのはどうさねマリア様ミリア様。甘いものしょっぱいものにワインで延々と食べるし美味いんだから皆様たくさんお土産を買って帰るだろうさ。なんせこちとら会場が動くときているから!」

「あっはい」「この人だれ? マリアが生きているだけでもびっくりだけどロザリア様も生きているしあたし支店見ににきただけなのにいきなり大口注文きてるし」


「たぶんわたしらのおかぁちゃんみたいなもんよ。ミリア」

「マリア様の申し上げること、否定致しません」「珍しく成り上がりと意見が一致しました」


 さすがに被災者に前髪を切ったりカラシ氏依頼で作っていた安全な爪切りを使ったりさらに今まで顧もされなかったガ族のメイクなどと『予測される費用は規模の割に安いとはいえ今するべきことに見えない』と領主夫妻ですら疑問視した試みを断行した理由について、

「踏み躙られ引っこ抜かれた花を育てなおすのは大変だけど、何もなくても髪切って化粧したらなんとかなるもんさ。わたしゃ何もかも無くすのは先輩だからね奥様」

 とのこと。


 妻のあとを追うように多くの孫ひ孫に囲まれて世を去る。

 一介の庭師の妻でありながら彼女を慕ったものたちには高貴なものたちも多く、その子供たちはいずれも良縁に恵まれた。


 その『子供たちには普通の生活を送らせてあげたい』という願いだけは叶えることならなかったが、その人生波瀾万丈にして、多くの身分も年齢も性別も問わず親しまれた領の『お母ちゃん』像であり、ひざのくに筋肉番付原画のひとつ『肝っ玉お母ちゃん』にて往時の姿を見ることができる。



「なんか、奥様が入ったお風呂をおすそ分けいただきだしてから妙に痩せたというか肌艶いいような……」

「サフラン様、それはわたくしが使ったままの洗面器です」


「ああ、ミカ、なんかあんたの洗面器って特別なのかなあ。勝手に使ってわるいね」

「いかけ屋さんがただでくれたのをヒマ潰し兼ねて自分でいかけた安物にそうらえば、本来高貴なあなた様が触れるにはあまりに」

「姫さま扱いはやめて。……いやぁ、どっちも水がなんかきらきらしているからさ。やっぱり泥水でないだけでもちがうのかねぇ。肌の調子がまるで違っていてさ」ーー




 ーー「ねぇねぇポール」

「黙って歩け」



 彼は頬赤らめつつ、彼女の腕をとり歩む。

 兵士ではなく花婿として。


「うしし。幸せ」

「ほら、ちゃんとしろ。義父さんたちが見ているぞ」


 祖母よりはるかに若く見える曽祖母のことは気にしないこととした。妻となる女性にもあれは従姉妹と説明している。……余計に嫉妬されて大変だったが。


「そんなこと言ったってヒールなんて履いたことないし、この白いドレス着にくいし、奥様ってよくこんなの着ていられるよねー。わたしだったら一生に一度しか着ないな。でもってずっととっとく。宝物にする。奥様くれないかなこれ」

「勘弁してくれ。置き場もないし。奥様が貸してくれたドレスを汚すなよ」


 祝福する人々やさしい花の香り。

 花嫁の小鼻がひくひく動くのをポールは見た。


「お、おい、ここでヤマネになんて……」


「へくしっ!」



 ポール・トッド・ライト(ポール・リッキー・アクアマリン)

 竜騎士マークと空の英雄ロベルタの孫。帝国貴族『右腕』を同僚ライムと討ち取った武勲は『ただの槍の物語』として詳しい。始祖ラッキィが旅立つ際に道具屋で買い求め、杖代わりに愛用されたまま『破滅』と戦った際にも携えていたとされる槍はのちに二人の子供のおしめ干しとして活用されている。


 ライム・ライト・アクアマリン・『やくそくゆび』

 杖作りと剣作りの家に生まれるもお転婆すぎて仕事を全く覚えず、父や母の剣や魔道具の扱いを覚えて夢は冒険者だったが、初日から先輩に絡まれて酒場で大乱闘を演じ、セルクによって逮捕という名の保護を受ける(※酒に酔って寝ていたので彼でも逮捕できた)。そのままスカウトされ同僚として後の妻ポールに出会う。

 妻がらみの縁あって帝国貴族『ひだりこゆび』の叔母『やくそくゆび』を帝国より勝手に賜ってしまうこととなる。


 実生活では家事は妻に丸投げ。とにかく怠惰。時々寝て子供と遊ぶをモットーに生き、兵士としては前線で多数の武勲をあげる。


 彼女が戦わずにすむことこそ良いこととして妻ポールはそれを喜んだ(※ただし家伝の槍をおしめ干しにすることだけは許さず)。二人とも一兵士や一介の職人として生きたため記録は少ないが、同時代の人々の記述から子宝にも恵まれ天寿を全うしたものと思われる。何故か帝国貴族の縁者として帝国側の記録にその名を見ることができる。マリカの長女アマーリアが王立学園に通っていた頃は、帝国貴族『ひだりこゆび』の要請により騎士科補助教官としてポールが単身赴任し、当時の教員名簿にその名を見ることができる。(※その間、家庭と店は悲惨なことになった)。ライム及びポールともにポール教官赴任の副産物として王国準騎士の栄誉を受ける。ライムの最終階級は王国軍曹。



「今日こそ! 今日こそ決着をつけてやるぞポール!」

「(ほんといつもいつもごめんなさい。『ひだりこゆび』さんが譲らないのです)」


「あっ。ひだりこゆびちゃんだ!」

「『ひだりこゆび』おじちゃんも遊んで!」


「ククク、ガキども恐れよ敬え我こそサイキョーの帝国貴族ぞ!」「こわーい♪」「かっこいー!」「にっげろー♪」

「あいつ……いつまでくるんだ」「ずっとじゃないかなポール」ーー



 ーーアラン・ドローン

 経歴不詳だが王国騎士リュゼを支えた武将の一人。吟遊詩人。美しい妻を携えその甘い美声で多くのものの心を捉えた。数々の流行歌を手がけその楽譜は現在でも残っている。彼は著書で語ることをよしとせず歌や曲にて表現したため本人を知るよすがは妻と歌ったとされる楽しい曲、妻が喜んだからと洞窟内の反響を生かして邪教徒どもが喜ぶような激しい曲と多彩な曲を書き残していることくらいである。

 享年61歳。しかし彼としか思えない人物に会ったと証言するものは後にも多く、その証言によると若きころの彼そのものの姿をした吟遊詩人は胸に赤い宝珠を輝かせていたという。



「泣いているのですか。大丈夫。ずっと一緒にいられるのですから。ずっと……」ーー




 ーー「リコ」

 老人の後ろ、黙って様子をながめていた、大斧を背負ったマント姿の女性は彼女をたしなめるようにする。

「……母さん。ただいま」「おかえり。『風よ。人々の声届けよ。……”風立ちぬ いざ生きめやも”』」


 凪いでいた風は海側に吹いていく。


 風の助けうけ海賊たちの生き残りたちが仲間を救助しつつ反撃を開始する姿が空から見える。


 特にマストもなく飛行機乗り上げて半壊した船が風に流されるまま先陣をきり、同じく半壊した飛行機の機銃照射で活路を開く姿が。


「で、母さんに鼻の下伸ばしていたわけだマーク」「あのなクサレビッチ」


「なにこのクソ野郎やるか」

「いい加減にしろぉ! あとでうまい料理つくってやるから!」

「ニンゲンは愚かだの」「にゃあ」


「え、まじミリオン」「今日のおかずはなにかなぁー」「興味、深々」

「……重量オーバーにすぎるぞ。

 なぁ『ジェリー』」「がうっ♪」


 何を思ったのかミリオンはその剣と盾を投げ捨てる。


「喧嘩するならクリマンジュウカレー。仲直りするなら……モズクドウフ」

「なにそれ」「知らんぞ」「にゃ」「みゅ?」「それはヨロンジマとかの料理。葛の粉で固めた牛乳と海藻のゼリーのようなものをショーユとすり山葵で和えたもの。ファルコが作ってくれた」


「ディー……ネタバラシすんなよ。

 まぁアップル……離婚調停している子に食べさせたいから用意したもので、ロベルタたちに試食してほしいんだよね!」

「いいね! 俄然勝ちたくなったよ!」「失機者がなに言うとる。ベッドで寝とれ」

「なにをっ?! あんたのことなんかぜーんぜん好きじゃないんだからね!」「んじゃとぉ?!」「……よそでやってよ」



 ミリオン・ミスリル

 料理人。数々の革新的料理やさまざまな伝統料理を復活させる。特に辺境を訪れた王妃に対して、人の身の丈超える飾り菓子で王子たちの心掴み、美しい氷像に封じし数々の冷製料理と暖かさ衰えないスープにて辺境の料理に偏見を持っていた中央のものたちを見事もてなして王妃の心をいとめ幾度もスカウトされた逸話は有名。


 伝説では恐るべき戦士だったともロベルタと共に王国独立戦争を戦い抜いたともされるが年齢が合わない。

 彼がいつうまれいつ亡くなったかは判然としないが、初期の歴代の記録には同じ名前の子供が幾度も現れる。

 享年不明。


「くっそ。ここまでかぁ。……あれ、ちょ。どういうこと。ここどこだってよ。……え。きみアップル?! となりのその透明なひとだれ?! 何膝ついて無視してるの意味わかんない!?」


「控えよミリオン。魔王様の御前ぞ」

「何言ってんだアップルこのばか。死んだと思って心配したんだよ」


「来たか。我が名は魔将サラマンダー!

 勇敢なる戦士よ。貴様の武勇は同輩シルフィードのしもべたるこのアップルに並ぶと聞き及んでおる。


 今こそ魔王様にこうべをたれ我に仕えよっ!」


「えっえっわけわかんないよそこのエルフのお姉ちゃん助けて?!」ーー




 ーー「バーナード! あなた、あなた起きて」

「チェルシー?」



 少女の微笑みに反してその胸は彼女の顔が隠れるほど大きい。ちなみに彼女は少女に見えるが50歳を過ぎている。ドワーフの血筋だかららしく老化が遅いのだ。


 起き上がり彼女の顔をみる。

「幽霊?」「ばっか」


 いや間違いなく自分は力つき死んだはずだが。


 ふわふわした長い髪、豊かな胸、小柄な身体。

 いまだ胎ふくらまぬ彼女は妊婦とは思えないほど愛らしく美しい。

 ただし片手でぶん回す巨大な斧は別だ。


「死ぬほどいい目にあわせてあげよっか。戦ったせいかちょっとまだのぼせていて」

「やめなさい」



 バーナード・ショウ・レオラップ(※帝国奴隷としての型番はリュゼが頑なに記録に残すことを拒んだという)

 元帝国奴隷にして紋章学の権威。

 兵士としてまた将として初期の『ひざのくに』領の防衛を担う。愛妻チェルシーとの間に一女二男。

 国境をめぐる小競り合いや戦いなど領主に代わり時として伝令として飛び回り、あるいは将として雑多かつ大軍の情報統括を行うにも関わらず武家ならざる軍人としての最終階級は准尉にすぎず、セルクと共に『王国准尉閣下』と敬愛される。


 後の帝国認定において敵名(かたき名)としての一代子爵『膝の国の獅子(レオラップ)』(※亡くなってからは伯爵相当)が贈られた。


 愛する家族と賑やかな姉弟に囲まれてかつての奴隷は幸せを掴んだ。

 享年50歳。ーー




 ーーチェルシー(ドワーフ名『白亜石』)・ウォーホースシュー・レオラップ

 再婚で得た愛妻バーナードと仲睦まじい暮らしを所望するも、押しかけてきた小姑や義兄弟を追い返すのに苦労する。

 バーナードが姿を隠すとともに慰問に訪れた多数のドワーフたちと共に地下に姿を隠したとも伝えられる。

 以上により享年不明。ーー




 ーーここまでか。奥様申し訳ございません。


 化け物が自らの頭蓋を兜ごと砕く音が聞こえて。


「あ、あれ?」

 彼は目覚めた。


「ふみゅ」

「起きなさい。メイ」


 少女は子供たちを抱いたまま眠っている。

 彼女を見守る老人の顔はやさしい。


「ベッポ。立てるか」

「なんとかです。執事頭どの。モモは、孫は逃げ切れましたかね」

 その孫は……何故かメイといまだ夢の中。


「起きなさいメイ。


 さぁパン釜をあけてサフランをたっぷり含んだ葡萄パンを焼くのです。

 坊……旦那様がたが帰ってきますゆえ」



 ジャン・“小渓”・スチームクロック

 とある商家の執事として、王国戦争を戦い抜いた勇者のひとりとして勇名馳せる。


 のちの王国騎士リュゼを養育した実質養父であり、多くの後進をある時は厳しく、ある時は暖かく見守り育んだ。

 享年72歳。



「ああ奥様。アルダス様。いまそこに」ーー




 ーー「あなた、目くらい合わせたら?」


 無意識に喉をみて話す彼に彼女は呟く。


 いや無理無理! 破壊力バッギュン?!


 もともと彼は部下に小言多いが女性には口下手かつ不器用だ。

 伊達に執事として父に匙を投げられたわけではない。

 妹みたいな感覚で接する部下のライム以外の女性には目を合わせることもできない。

 特に彼女のような美貌の持ち主には。


 怒ってなお彼女はいつにも増して美しい。

 どうも化粧をしていない時の彼女は。


「……はあ。帝国のもののけどもには屈せず最後までひとり生き残り戦い抜いた勇士なのに、どうして私を見ると倒れるのでしょう。わたくしもをとめ(乙女)ゆえきずつき……あっ化粧取れてるうっ!?」


 『彼女』は倒れ伏した勇士に呆れつつ近づく。

 己の武勲より率いたものどもの死を恐れ嘆くちっとも武人らしからぬ彼に。


「とはいえ、あなたの尽力此度のいくさでは多大にして、わたくしあなたになにかお礼をせねばなりませんよね。


 わたくしの純潔はさておき、相応のもの……あなた自身は武勲立てられずとも、多くのひきいしものども無事に帰してやりたいというあなたの願いは叶えるべきです。

 そして必ずわたくしの前にもどりなさいませ」


 彼女はそっと彼の頬にくちづけると、そのまま後にしてしまった。


 セルク・“小渓”・スチームクロック・キスカゴースト

 執事頭ジャンの実子。『不器用者』とは自らを称して。

 一王国兵にすぎないのに『ひざのくに』半島における戦いでは領主に代わり幾度も大軍率いて戦い、自身の武勲冴えずとも多くの人々を無事返すことから『王国伍長閣下』との愛称でバーナード共々現場の戦士たちや銃後の主婦たちに慕われる。


 帝国認定における敵名かたきなは一代伯爵『キスカゴースト(鳴神島の幽霊)』。


 敵陸海空軍を迎え打つ出城として設定された絶対防衛圏キスカ(鳴神島)という小島より、霧に乗じて全ての味方を撤退させ、各建物に『ペスト患者収容施設』及び島内の水源または井戸悉くに『男性機能消滅毒投下済み』などのデマ看板、風で打ち鳴らされる銅鑼などなど多くのトラップを置き土産とし、霧に水争いにと大混乱となった敵軍に自滅同志討ちを促し多大な損害を与え、また敵軍がその後もありもしない伝染病対策に手間取り、敵将たちもまた己の職務を放棄して男性機能回復(※ガクガ曰く、『あの島の水は気分が落ち着くだけ。命令に固執せずとも作戦は達せられると判断して落ち着いて逃げたセルクたちが証明している』)に手間取られたため、勝利条件としての指定期間の足止め(※初期の案では防衛隊全滅を想定としたもの)をも達成したことにより『幽霊』『尻に傷持つ男』『息子の仇にして恩人』などと彼と交戦した敵将たちからは畏れ罵られた。


 努力みのり、美貌の妻ミカを迎えたことあるも三ヶ月で夫婦生活は破綻し、何年も経ってから別の妻との間に四人の子供もうけて父を喜ばせる。

 享年61歳。



 ⁇?「あなたは幸せでしたか? わたくしどうにもこういうことは帝国のクソどもと違って慣れていないのです」ーー




 ーー「上申じょうしん! 上申にございます!」


「何御用かしらデンベエ」

「此度の政策、まこと不服です!

 誰がかの戦役にて、(※わざと)遅れたとはいえン族ングドゥ(※の到着を邪魔して)共に同一同時刻に援軍と多数の支援物資を携え休戦即日朝に真っ先に現れ、この領地復興に尽力したと思っていらっしゃるのか領主様奥方様に」


「ああ。なるほど。マリカ。流石にやりすぎだな」

「デンベエ、あなた過労死する気でしょうか」


「は?!」


 マリカは説く。

「あなたがおっしゃるのは原価で私ども領主が一括して支援物資召し上げ、各小売業者……手売り含むに分け与え競争促し、広告を兼ねた包装を行う代金にて領主の手数料とする政策案のことですね」

「他にありますか! 寡占を防ぎ被災者同士の手売りを促し小売業者にチャンスをと言いつつその実、恩を仇で返す気がぁマリガっ子!」


 口角唾を飛ばさんとする彼に領主夫妻は告げる。

「そのことだがデンベエ。なまもの、腐るものはどうするのだ。保管場所は。借りた船の運賃はどうする。彼らにも往路復路ともに予定があるゆえ留めることならぬぞ。


 街中の建物悉く燃え壊れた今、人々はマリカの紙(だんぼー)でできた仮設テントを使っている状況であるのに君はこの領のために大規模な倉庫まで作ってくれると言うのか。ありがたいことである。


 我々には『うたうしま』とミリオンが管理する倉庫があるがおまえはどうするのだ。

 あれは何故か腐らんしいくらでも入る」

「運送費もわたくしどもならかかりませんよ。童ども送り迎えするゆえに」


 ここでマリカは大仰に嘆いてみせる。

 まるで舞台女優である。

 ただし下手くそすぎて主役交代は必定。



「あゝ! 大商人塩屋伝兵衛の献身なんと素晴らしいことでしょう。

 近く生まれる曾孫と遊ぶいとまをも捨ててかのものは領地のためつとめるとおっしゃっておりますリュゼ様!

 わたくし、広告関連は素人にて、広告用の包装すら事欠くいま、マリア様と関係深くまた豊富な経験もつデンベエにこそ現実的な調整頼もうとおもうておりましたが蒙昧なおぼしけりにすぎぬことにごさいました!


 ああ。デンベエは素晴らしい男。

 この歳になってもなおも衰えぬ職業意識により家庭顧みることかなわず、曽孫に『おじちゃんだぁれ』と言われてしまいいまだ思春期の孫には『おじいさまくさい』とか言われてしまうのです!


 それでもかれはこの地に尽くそうとしてくださいます!


 リュゼ様、是非ともかれに望むままの大任をば……」



「わかった! わかり申した! それで結構ですわい! 孫娘やこれから産まれる曾孫のことを出されたらたまりません!」



 村上『塩屋』伝兵衛

 悪徳商人とも強欲とも呼ばれるが後述するミューシャの祖父ともされる。

 当地における『商店の王』と呼ばれる弱小手売り業者や露天商を活用し彼らの利益を高め保護する独特の寡占防止システムを主導し、多くの後進を(※不本意ながら)育てることになる。


 後に発見された『大迷宮』にて発見された異世界やまとのものと思しき品に着目。

 故郷に帰還するためかの迷宮に挑み一人消息を絶つ。

 義息子ベンジャミンをはじめ多くの弟子を持ち、孫娘と曽孫に愛され、商人として充実の一生であった。



「あゝ。海がみえる! 白浜が見える。

 アメツチたちから聞いた村神の宮が見える!


 わたしはやまとのくにに帰ってきた!


 ……お嬢様は村神本家のものでしょうか。

 わたくしは塩屋伝兵衛と申するケチな老商人にございまする。

 まことに勝手かつお手間ながらあなたのお兄様天土様がたについて長い長いお話ございますれば是非清聴願いたく」ーー




 ーージローラモ、モモ、ペッボ

 彼ら三人の記録は少ないが、ジローラモは後に劇作家としてベンジャミンの脚本をさらに洗練させた。モモは王立学園教員名簿にその名を見ることができる。ベッポは王国独立戦争の兵士として勲章を受けているらしいが、本人曰く売って孫のお菓子にしたと述べていたと当時の人々の日記にあるーー




 ーーポチ、タマ、シロ、コマ、パイ、スライム

 歴代当主の愛猫として名が残るポチとタマは何故か『ひざのくにの空戦』にて勲功あげカツオブシなる干し鰹一年分が支給されたことになっている。


 通信や傷の応急手当にスライム分体を活用する事例は当時から始まっているが、この件に関してはおそらくパイロットたちのメンタルケアに猫を活用したのではないかというのが定説である。


 ロベルタ失機後も竜騎士マークとともに空戦に参加し、巨大化したり稲妻ぶつけたり吹雪呼んであるいは翼を生やして空を飛び無数の小型バイドゥどもを討ち取り多くのパイロットたちを生還させたという伝説はパイロットたちの酸素欠乏症あるいはかつて勇名を馳せた老騎士マーク老一流のジョークであるという見方が一般的である。


 二股の尻尾を持つ黒白の猫二匹は本来、かつて『車輪の王国』にて道路建設に従事した『女男爵』の紋章であるが、王国独立戦争の戦訓により『パイロットは最低でも尉官、一代騎士相当以上でなくば戦隊として成立できない』ため、彼女の紋章は軍務につく間一時的に騎士貴族相当となる当地のパイロットたちに愛用されるマークである。


(※奇しくもそれが雑多な経歴の当地パイロットたちの結束を高めることにもなっている)


 オリジナルの紋章は盾を前に背を向け合い尻尾でハートを描く二股の猫が描かれていたが、当地の空戦隊の紋章はスライムを表す青い鞠で遊ぶ中、尻尾がハートを描く二匹の猫であり、前方には三羽の小さなコカトリスの黒影、最大三本の風切り羽が追加されている。(※伝統的にスコアを増やすごとに風切羽根を描きたし、三つ揃った時点でエースと呼ばれている)


 彼らと同名の猫たちはムラカミ・アナスタシア本家の祖アメツチの愛猫としても記録にあることからやまとびとたちのなかでは一般的な猫の名前と思われる。


 始祖妹背がコカトリスから風切羽根を捧げられたエピソードは歌劇において定番ではあるが、王都陥落事件以降は太陽王国の国鳥がコカトリスであることからややブラックジョークじみた演出がなされるようになった。またコカトリスは神格としてのメイを尊重する人々にとって神聖な生き物とされ、卵や羽はとっていいが命はとってはならないとされている。


 スライムは体積あるいは群体次第で高い知能を発揮するという説は一般的ではあるものの、人の姿をとって人と結婚した、蘭となり竜を育み世界を変革するという伝説は疑問視されている。


 依然歴史上スライムなる生き物は近年のみに出現したものであり、人間にもっとも近しい魔物でありながら未だ謎の多い存在なのである



「ミマリー! パイちゃんがいっーぱい卵産んでくれたのみてみてみて。これから育てるからよろしく」

「いい加減にしなさいメイ! 学園の秩序をみだしてわたくしに恥をかかせるような真似ばかり!」


「え、ミマリパイちゃんのこどもみたくないの、かわいいよ絶対かわいい。保証するから」

「だから、どうして薄汚い卵をわたくしのベッドに入れようとするのですか!


 ……ほんの少しだけですよ。ほんの少し……陪臣家の皆様がカラシくん開発の孵卵器ふらんきの実験を行うための間だけ……。


 って。

 メイ。わたくしのベッドで寝ないでくださいまし」ーー




 ーー「カリナ。結婚してくれないか」

「わたくし殿方は苦手です」


 そもそも言い出す場所が悪い。

 しかも彼は寝ぼけている。


 連日連夜朝昼晩問わず医療チームを率いあるいは自ら診療し、戦争後遺症に悩む人々に向き合って力尽きて椅子の上でわずかな睡眠をとってまた診療する。医者の不養生そのものだ。


「先生。わたくしこの地に着くまでわたくしのお嬢様をお守りし、幾度も殿方からおそろしい目に逢いました」


 彼女はそっと彼にケープをかける。

「あなたはちょっと違うようですけど、殿方には変わりません。これはどうあっても変わらぬこと。わたくしもどうあっても変わらないのです。……たぶん」



 ピグリム・ブラザーフッド

 元兵士。領主付き御典医。戦争後遺症に疾病や怪我のみならず精神の健康の概念も導入し多くの人々やその家族を救う。

 三度のプロポーズを経て愛妻にして助手カリナを迎えるも、常にすげない態度を取られると同僚バーナードにこぼしていたという。

 新聞『ひざのくに新報』は初めて医療顧問をおいた画期的な新聞であり、初期の顧問としてあるいは家族に対する惚気ともつかない医療小論文は今なお愛されている。

 医療と関係のない分野では「カリナ・『薬師寺』」なる妻をモデルとしたと思しき童話があり、母親を無くした兄妹のもとに不思議な魔法を扱う家庭教師カリナが現れ巻き起こる騒動と暖かい家族愛を描き、決して妻との仲が悪くはなかったことが伺われる。

 享年67歳。



「だいたいぼっちゃんは食生活から変わらねばなりません。あなた様は領主かもしれませんが健康に関しては医者の言うことは聞きなさい」ーー




 ーー「お願い、くすりを……薬をくれぇ!」「カリナお願い薬をあれがないとわたし」


 彼女は冷淡に告げた。


「洗剤くらい買いなさいよ。バカなの」


「えっ」「やだぁ」「カリナってわたしの姉妹の友達でしょ」「私たち12人もいるのよ」「洗濯代だってバカにならないわよねえ」「そうそう。私たち食事だけの居候だもん」


『(……えっと、上からキアラにシーラ、ミドリにアオイにバーバラ、最後のちっこいのがモモヨ(※マリア様命名)だったかしら……わたしのカナエはこんなにずうずうしくない!)』


「カリナお願い。できたら弟たちの薬を」

「ソフィー、あなたがバーナードさんの姉さんでもそれはダメ。だいたいあなた独り占めするでしょう。この間は何故か化粧水まで要求したわよね」

「うちではうえたマムゥとセブとジャンとエイジとタロットという弟たちがわたしのかえりを待ち侘びて」


「だまらっしゃい。マリア様が記者を募集しておりますゆえ、全員文字を習い奉公しなさい。さすれば月給は出るでしょう。記事のでき次第ゆえ……特にデザインやファッションや化粧に関する記事には妥協許しませんよ。わたくしのお嬢様がご覧になるのですから!」


 カリナ・ウルド『薬師寺』・ブラザーフッド

 彼女の経歴は判然としないが、初期の流刑民裁判にて妹のためパンを盗んだとする娘と同名ではある。私生活ではビグリム医師の助手にして当地のさまざまな安全かつ高品質な化粧水や化粧品、洗剤、そして医薬品作りを主導する。あまりに高品質かつ量産したことから魔法で無から生み出したともされるが、多くの後輩を育んでおり事実無根である。

 享年54歳。美人薄命と人々はなげき悲しんだ。



「意外と、楽しかったですよ先生。

 ごめんなさいミカ。メイ。

 カナエに会ったら『貴女のおかげと』よろしく……」ーー




 ーーカラシ・ニコン

 地主の息子。天才と呼ばれた男。年代記そのものには登場しないが、彼の持つ安全剃刀の特許はガクガの待つ替刃特許と合わせて膨大なライセンス販売収益を長く『ひざのくに』領にもたらした。王国債権当地の税収20年分という破滅的金額返済にも一役買っている。その後彼とガクガの共同出資会社(※彼らは名目上のオーナーであり、運営は『ひざのくに株式会社』に委託)が生み出す安全剃刀は次々改良、特許更新を続け今なおブランドとしてその名を知られている。研究者にして発明家。マリカの親友。変わった特技としてボクシングがあり、これはリュゼよりその素質を認められている。

 藩王国にて『物狂い王妃』と出会い、多くの人々に慕われる彼女の活動資金を援助した。

 晩年は農学者として実家にもどり、念願を達成する。

 享年63歳。



「マリカ様。あなたは『よみのくに』とやらにいますか」ーー




 ーー「マジありえねえ!」「なにあの方々!」

 女三人を残して先に行ってしまった領主妹背に反感を敵が抱くのも無理はない。


 彼女はふっと吹き出してしまった。

 ガクガはしばらく戸惑っていたがそれに倣った。

 表情筋が死んでいるかも知れないカリナは別である。

 彼女は空気に徹してメイドのように給仕の用意を始めた。


 戸惑う敵たち、特に念力刃を操り彼女を追い詰めていたバーナードの兄弟が近くにいたので、彼女は彼に気さくに声をかける。

「ほんとひどいもん、アイツ、学生時代なんかさぁ、パンダだのタヌキだのオランウータンだの押し付けてさぁ」

「わ、私に話しかけているのか」


「他にない。ガ族嘘つかない」

「信用できそうにございません」


 澄ました顔のガクガに黄色いスカーフの少女が呟いてしまう。


 以降悪口合戦に花が咲き、彼女は新たに得た12人のしもべ引き連れ出口を目指す。


 カリナに傷を治してはもらったが肌には血がついたまま。


「化粧がみだれちゃったわ」

 その血でルージュの代わりにする。

 アイシャドウは壁に指を擦り付けて代用した。

 少し乱れた髪を治してくれる少女はもういない。小さな櫛で自ら直しつつ歩く速度は変えない。


 その様子を呆然と見つめているバーナードの兄弟が思わず問いかける。

「何を……しているの」

 女みたいな声だ。


「普段化粧なんてしないけど、私って実際結構な美少女なのよ。このスカートは勝手に魔法で綺麗になっても、化粧直しまででき……興味あるの?」


 その長身のバーナードの兄弟は、いや女性はゆっくりと頷いた。


「そっか。私より詳しい奴に聞いて。化粧道具の作り方についてはそっちのカリナでもいいけど」

 そして長身の彼女の男のような短い髪を見る。


『……こいつ、意外と逸材かも』


 そして直接の交流はあまりないとはいえバーナードの女装を想像してしまいげんなりする。


「マリカは大丈夫としてロザリア様たちを助けにいかないとね。


 まぁロザリア様に間違いはないわ。

 でもお怪我はされるでしょうから。


 そうでしょ。あなたたちは強くてかっこいいからそれくらい当然よね。


 だから。……『何がだからだ』とか突っ込むなよ。

 あんたたちのこと、このアルフォンヌ・マリア・ケイブルが引き受けた!

 大船に乗った気でいなさい!

 ……だいたい夫とおじいさまが面倒見てくれるから」



 ミューシャ・グリンアース(※一説では王国を震撼させた王太子婚約破棄騒動の余波で散った悲劇の令嬢アルフォンヌ・マリア・ケイブル子爵位代行その人とする流言あり)


 印刷会社の女主筆として正義感溢れる若き12人の記者たちに発破をかけ、歯にきぬ着せぬ大胆な領主批判記事をも主導しぶちかましつつ、私生活てはさまざまな斬新な画法を世に放った一流の画家。

 初期の風刺漫画家の技法をも完成。

 主筆でありながら文章を書くことは苦手で記者たちの自主性を重んじていたとも。


 多くの人々に愛され、その町娘ならざる大器により身分性別年齢問わぬさまざまなものが彼女の元に集い、ケイブルワインを当地にて復興させるなど子を持つ職業夫人として才気溢れる姿を当地の男女に示し続けた。

 暇を見ては多くの(※珍奇な)当地の動物たちを描くとともに『笑顔の作家』と後に称される庶民の笑顔、街の日常風景、特に『ひざのくに筋肉番付』などの原画、絵本やカードの原画は現存しているもの全て高値で取引されている。


 代表作『アクセサリー屋とその客むすめたち』『肝っ玉お母ちゃん』『彼の背を見よ』(以上『ひざのくに筋肉番付』原画)、『泣く娘(ロザリア)』、自動車を思わせる空想の乗り物操る女性を描いた『いさぎよしすべてよし』(※現存する中において唯一当時の画家の中で始祖マリカを描いたものともされる)他多数。


 妻である劇作家ベンジャミンとの間に一男一女をもうける。54歳にして何を違われたのか断絶したケイブル子爵位を賜るも娘に生前相続。

 生没年不詳。後述するロゼとともに農民反乱に巻き込まれて死亡したのではないかと推測される。


 初期の当地裁判にて王国法に逆らい流刑民に裁判を断行した記録に後述のロゼともにその名前があるが同一人物かは不明。『王都に危機訪れるとき必ずケイブルが帰ってくる』と庶民に信じられていたことを受けて王都占領した太陽王国市民軍に対してケイブルの旗掲げゲリラ戦を貫き解放に尽力した『物狂い王妃』を支持する記事を多く主導していることからも『物狂い王妃』とは何らかの縁者ではないかとも憶測されている。

 領主妹背の子供たちからは実質伯母として尊敬されており、彼女の大器が伺える。


「マリカ、説明してくれるかしら。うん。わたくしぜーんぜんっ! 怒ってないわよ。あなたと違って『多少は』長生きしたし、若返ってラッキーって感じだしね」ーー




 ーーロゼ・オハラ・パ(※上記と同じく太陽王国におけるかつての王家に対して本家関係でありながら流浪を続け、王国を震撼させた王太子婚約破棄騒動の余波にて散った悲劇の令嬢ロザリア・カリーナ・マーリック伯爵令嬢そのひととする説もある。パ族は婿入り婚のためパは自称)


 デザイナー一族オハラ家の養女。

 20歳を過ぎてから正式にオハラに加わったためその前の素性はようとして知れない。

 若い時より月刊誌として始まった新聞『ひざのくに新報』のデザイン担当として辣腕を振るうのみならず、今に続く観光都市『ひざのまち』のデザインを行った。


 その際住民たちの生活水準を高めることを第一義とし700年の伝統もつ領都の数々のデザイン、建物、彫像、ドレス、馬車、自動車と思しき空想の乗り物などを手がけ、あらゆる分野におけるデザイナーとしてその名声を不動のものとする。


 上記ミューシャとは生涯の親友。


 職業婦人としてまた自らをモデルとして多くのアパレルブランドを手がけ、現在も残るアクセサリーショップ『ユマキ』を継いだ。


 アイスダンスやオペラ歌手、楽器演奏チャリティーコンサート、舞台女優をも務めるほどのその美貌と多才もまた有名であるが、休日の多くの時間を三部族の生活習慣に関する詳細なレポート作成に尽力。

 本人曰く『ある高貴な方との子』として一男二女をもうける。その側には彼女の忠実な騎士として常にパ族にして三部族筆頭ンガッグックがいた。


 領主妹背が『大迷宮』に挑んだのち、三部族と共にかの遺跡の追跡調査を主導。『大迷宮』内に多くの橋頭堡となる部屋や階層を確立。その功績からか依然『ひざのくに』領における採掘権を主張する太陽王国により断絶したマーリック本家(※王家はあくまで本家の分家で主従逆転した例)の家督を与えられる。

 彼女は異国の爵位を得ることよりも知人を取り戻せずその娘や息子たちを想い泣いたとされる。

 没年不詳。農民反乱までは生存確認。



「マリカ様ご機嫌宜しゅう。ところで現在如何なる状況かを愚昧にして偏狭なるわたくしどもの如きしもじもにもわかるよう説明していただけることと存じます」ーー




 ーー“炎踏む足”ガクガ・ガ・“小渓”(※自称)

 三部族の誇る守護者にして絶世無類の戦乙女。

 始祖マリカの朋友にして彼女の子供たちの乳母。

 寿命短き代わりに歳を取らないガ族のさだめをとき、始祖マリカに泣き落として息子ピピプゥ(又の名をアルディン)をもうけるも、その後も平然と生き続け、ガ族としては驚異的な81歳という天寿を全うする。



「リュゼ、そこにいく。

 マリカ、待たせたな。


 次の冒険はなんだ。ガクガずっとお前たちと一緒。

 とても、とても幸せ」ーー




 ーーフェイロン・ミスリルあるいは飛竜フェイロン・村神・“小渓”

 マリカとリュゼの養子など多くの記述あるが年齢生没年そして同一人物なのか複数の人物なのかすら判然としない。

 さらに当時の空戦隊整備中隊(※『ひざのくにの空戦』のち帝国との条約違反を盾に解散を強制された『ことになっている』)における隊長アザリーの養父も同じ名前であるらしく混乱をよんでいる。

 同名の子供たちが以後700年近く年代記には登場し、カーテンに隠れ王都に関わる情報を伝える嬰児として歴代当主たち自ら記しているが嬰児が何故そのようなことができるか判然とせず、その描写から当地における諜報員のコードネームではと推測されている。ーー




 ーー「ではそのように。下がれ。


 ……カーテンに隠れておりますれど、またお尻が見えていますよフェイロン」

「ミマリには敵わないなぁ」


「また来てくださいましたね。いつも楽しみにしているのです。本当ですことよ。フェイロン。


 (※うるうる)もしわたくしが隠れても墓参りは欠かさず700年くらい……」

「長いっ!? 長いよ?! ミマリそれは重すぎるっ!」



 ミマリ・ムラカミ・アナスタシア(村神美鞠)

 ムラカミ総本家ナレヰテの姉。ムラカミ・ドラゴンモンキー分家の祖マリカの妹。

 凡愚と称された夫に代わりその呵責なき改革と粛清により恐れ敬われりしカリスマ。


 民衆の絶大なる支持を背景に逆らうもの全てたいらげムラカミ侯爵家の地位を確固たるものにする。


 誤解されがちだがのちにおこるムラガミ子爵伯爵家は辺境に出奔した侯爵家陪臣のシナナイとフミュカ(※歳下の叔父と歳上の姪という若干爛れた関係とする資料もあるが子爵伯爵家は否定している)間を祖としており、侯爵家の守り手ムラカミ子爵家は現在絶えている。


 後に起きた太陽王国市民軍運動による王都陥落後も『凡愚王』ともに囚われ、政敵である公妾ポンパドゥール夫人と共に軟禁生活を受けるも生き延び彼女と和解。王都開放後はポンパドゥール夫人の影響もあり打って変わった慈悲溢れる政策で裏切り者共にも多数の温情ある措置をとりさらなる尊敬と崇拝を集める。


 王都中央の噴水にて今でも、王都陥落時に生き残った兵士たちを矢弾顧みず高台にたち鼓舞するその神々しい姿と、彼女の背を守るように足元の絶壁にて王自ら剣構える『凡愚王』と祈り杖持ち戦い続ける公娼ポンパドゥール夫人の3人の勇姿を見ることができる。


 噴水の泉にコインを投げると願いが叶うとされ、多くの観光客が惜しげなく投げるコインを発端として設立された『ミマリ基金』は今なお多くの子供たちを救っている。

 享年85歳。


 生涯の友となった政敵を看取り1年後の大往生であった。

 遺言は残されていないが、王宮の小姓と思しきとある仲の良い嬰児を迎えて短い間語らっていたというーー



 ーーカナエ・ムラカミ(帝国奴隷『K.(ed) No.a36947Bf. D.C.P.E.I:25/10/145 I.G.D.P:25/10/115』)

 彼女に関する記述は『年代記』そのものには記されていないが、上述したアルフォンヌ・マリア・ケイブル子爵位代行に殉じた側使がメイと同じくミカの養妹であったとされ、同時代の人々の記録からその名前と明るい性格がもたらすよい影響を知ることができる。


 歌劇『偽りの王妃は自らの想いをひた隠す』は史実を大胆に解釈しアイスダンスを交えた当地が誇るエンターテイメントとして今なお上演され続けるものだが、かの『物狂い王妃』こそが彼女であるという奇天烈とも言える解釈は女性同士の主従関係とその高貴な魂の継承及び耽美で一徹な騎士との旅を女性キャストのみで描く伝統芸能であり、多くの女子の心を震わせてやまないという。


 史実における『物狂い王妃』は藩王国での活躍の他、王都解放にも義勇軍として尽力したともされるが、上述した側使がその人であるという解釈はあまりにも劇作家ベンジャミンと演出家として参加した若き日のロゼの発想の飛躍が過ぎており、まさしく完全なるフィクションと言わざるを得ない。



 ⁇?「いばらのみち進むものどもよ。涙拭きいざ立ち上がれ! 汝が友守り汝が道いくものどもよ。くつわそろえてケイブルの御旗のもとにつどえ! 王都解放は近いぞ!」ーー




 ーー『まどうもの』(『心臓』。『村神こころ』はクウカイがつけた家族だけの秘密の名前)

 本物の帝国貴族。後に判明することだが帝位継承権三位。帝位継承権一六位『あぎと』とともに始祖マリカの人格形成に大きな影響を与える。王国宰相クウヤ・ムラカミの妻としてマリカ、ミマリ、ナレヰテの3人の子宝に恵まれる。

 当地の記録ではマリカの母を名乗る佳人が長期滞在していたことになっているが公式記録にはなく、王国領内の馬車事故で転落死し遺体は原型を止めていなかったとされる。


 ファッション、礼法など多くの分野で成り上がりばかりの王国貴族の模範として敬愛された中、若くして亡くなった彼女を悼んで子供たちはそれぞれの地に廟を建てて弔っており、今でも観光スポットととして整備されている。帝国貴族にありがちなことだが生年不詳。ゆえに没年齢不詳。

 帝国継承権三位として拉致される『マリカの受難』の原因ともされる。


 ⁇?「お姉さまお怨み申し上げます。お母様、ミカちゃん、メイ。ついでにシナナイくんまでわたくしのもとを去りました。あなた様はわたくしから大切なものをことごとくうばうのですね」ーー




 ーーリュウェイン・”小渓”・”りゅうとさる”

 帝国『ひざのくに』辺境伯。のちに王国辺境伯として認められる。王国独立戦争の勇者アルダスの嫡男を名乗る。


 騎士家でもなかった一介の商人の息子が一代にてここまで出世する例は珍しく、神格化される。


 その知性と武勇並ぶものなきのみならず、妻マリカとの恋愛談は多くの喜劇の題材とされ、庶民向けに劇作家ベンジャミンが記した脚本によるものは今なお上演されており、貴族でありながら庶民の悪罵交えた丁々発止のやりとりを伴う二人を描く演出は公演のたび笑いと喝采を浴び幾度も名優を生むことになる。

 妻マリカとの間、実に3男5女に恵まれ、また大酋長としてガクガとの間にも1男ピピプゥあるいはアルディンをもうける。


 子供好きと伝えられており多くの孤児を引き取り、得意の大工仕事と鍛治仕事で彼ら彼女らを楽しませるため休日は城の改装を重ねその居城『うたうしま』は以後700年近く『ゆうえんち』などと字名されることになる。

 神格としては武に関わる知恵、鍛冶や大工、子供たちの守護神。なお彼に祈ると確実に意中の女性にフラれるというありがたくもない加護もあるという。(※縁切りの加護は期待できないので意図して彼に縁結びを祈ってもまた無駄である)

 後年妻マリカを帝国に拉致され、粘り強い外交努力により取り戻す。

 60歳にして妻とともに『大迷宮』に挑み、消息不明。遺体は未だ見つからず。



「なんだあれは。マリカわかるか」ーー




 ーーマリカ・ムラカミ

 ムラカミ・ドラゴンモンキー家の祖。

 学者にして帝国貴族。侯爵令嬢。

 生涯の研究と称する栗や海栗のトゲにまつわる研究にとどまらない膨大かつ広範囲な研究、翻訳作業、領内改革、古文書や芸術品の保護など超人的な働きを多くの人材育成により主導する。特に金融面、その相場師としての能力は高く、伝説化されている。

 妻リュウェインとの間に長男フェイデルナンド、次男ローンダミス、長女アマーリア、三男リュカリオン、次女ローザリア、三女マリネと四女フミュカ(双子)、他にも多数いる養子たちなのか二人の子供か判然としない五女ヱノイェ(※総本家ナレヰテの養子に出される)と多くの子宝に恵まれ、そのいずれも若くして大成している。

 神格としては当然学問。他に相場、山師、盗賊、娼婦、病人、麻薬患者たちから信仰されている。なお、マリカを祀った廟の管理人は歴代頑なに『恋愛成就』を謳っているものの、領内のものはかの喜劇の印象が強く、誰一人として彼女にそれを祈るものはいないという。理由は推して知るべし。


 私財を投じて持ち株会社としての『ひざのくに株式会社』を設立。

 これにより子供たち及び子孫、各勢力の相続争いを回避し、以後約700年に及ぶ対帝国戦争に備える基盤を固めた。以後王国や太陽王国では相続に持ち株会社制度を用いる大家が増えたという。


 45歳にして妻リュウェインとともに国境付近にある『大迷宮』に挑み行方不明。遺体未だ見つからず。


「光が……大きな星がたくさん動いておりまする我が背よ。あれは……街の灯でせうか」ーー




 ーーミカ・ムラカミ(村上美香)

 彼女の功績は全てマリカの字名あざなであるMの名で行われたため判然とはしないが、始祖マリカが消息不明となった後も一途に彼女の生存を信じて辺境に留まり続け、数々の『マリカのノート』をまとめその研究を引き続き完成させたのは彼女と思われている。(その署名はマリカの学生時代の字名Mで一貫されている)

 民話のみに限ればその美貌と能力並ぶものなしとされ50歳を超えてなお多くの求婚とスカウトを受け続けるも、若い頃に兵士長セルクとの間に三ヶ月間のみの婚姻を結んだのちは頑なに独身を貫き(※実兄ニノスケはうまく使いこなした)、多くの後輩を育て王国の側使やメイドの質を辺境から改革したとされる。また彼女は身分も出身も問わず多くのものを弟子としたため助手たちの中には後に機械や魔導分野にて多大な功績を誇るものも次々と現れ、数々の戦乱に喘ぐ寡婦たちには特に尊敬され敬われ続けた。

 78歳まで現役を貫き、以下の言葉を残して行方不明になる。


「お嬢様が呼んでいらっしゃいます。それではみなさまこれにて。ご機嫌宜しゅう」ーー


【To Next Generation】

シリーズ共通EDテーマ

「WINNERS FOREVER~勝利者よ~」歌詞

歌:INFIX

作詞:長友 仍世

作曲:長友 仍世

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