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新婚初夜に『トロフィーワイフ』と暴言吐かれて放置されました  作者: 鴉野 兄貴
物憂う令嬢たち、ちっとも休めず

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ミカ、親友と再会する【一日目午睡時すぎ】

「ミカちゃん! こんなのといっしょにいたら性格わるくなるよ!」


 確かに。メイのかわいい嫉妬を考慮に入れ今までの友情による目を入れてなおカリナの性格の悪さは本物ですし。


 もともとはカリナがロザリア様と接触機会を作って欲しいと依頼をした瞬間、私が何事かいうより早く『だめぇ!』とメイが断ってしまい、カリナは当然『あなたには頼んでいない』と言ったからですけど。


 そして前述の発言です。


「性格……手癖の悪そうなイタチに言われたわ」

 実際どろぼうむすめですけど、最近は遠慮しだしました。


「それにこんなのと付き合っていたら老けるのが早くなるに違いないよ!」

 やめてくださいませ。カードゲームで言えばカリナのライフ(おはじき)はもうゼロです。


「老け……老ける……私そんなに歳を取って見えるのかしら」

「胸でかで目つきギンってしていて性格悪いし、それにあたま悪そう。ボケだしてるよ絶対。いい人がいたらその人が仲裁してやっと周りと仲良くできる人だよ。ミカちゃんこいつに近づくとロクなことにならないよ!」


 そこまでです。

 カリナは意外に繊細なところがあるのですよ。

 たぶん。


「確かにカナエがいなければ微妙かもしれませんが、カリナだっていいところも……」

「微妙とは何よミカ」


 あ。そうだ。

「つまり、メイがその役割をしてくださるのですね。ふふ。よろしくお願いします」


「えっ!?」

「はぁ?!」


 カリナとメイと嫌そうにお互いを指差し合い。


『こんなやつ嫌に決まっているでしょう!』

 見事にハモりました。多分大丈夫そうです。



「だいたい、ミカちゃん」

「はい」


「カナエって誰」

「先ほど話しましたよね」

 彼女の顔は今までにみたことなきものに。


「そうじゃない」

「?」



「私たちの友人ね。あんたみたいなアルパカと違って私たちは高貴な貴族令嬢の直属を務める」

「あんたに聞いてない」


 危うく猫の喧嘩(キャットファイト)になりかけたのを猫又ポチに仲裁された二人ですが、油断できません。

 タマが私の頭の上で休んでいますが重いので別のところでお願いします。



「……喋る猫がいるなんて聞いてないわよ」

「ちがうよー。おばさん。ポチはポチだもん。猫じゃないの」


「辺境にはわけのわからぬけだものがいると耳にしましたがまことに」

「なんだニンゲンめ」


 うーん。

 カリナはポチの喉を丁寧に弄ります。

 猫じゃらしのようなものでポチと遊び出しました。


「あ、ずるい私にもちょうだい」

「嫌です」


 カリナは犬や猫が好きですからね。

 私室には針で毛玉を詰めて自作した猫やうさぎなどをたくさん置いていました。

 秘密を暴くことになり、私とカナエは後でめちゃくちゃ詰められ叱られましたけど。


「欲しいわ。ミカ」

「ポチは売り物じゃないからダメ〜!」

「ニンゲンめ不遜だぞ」


 無表情で言うから生体実験か何かに使うように聞こえますけどね。



「このカピバラを」

「このおばさんを」


『なんとかして』


 ひょっとして二人は仲良しなのではと危惧するほどに見事なハモりを見せてきます。



「だいたい薄汚いあなたなどに」

「これ、ミカちゃんが買ってくれた服だもん!」


 カリナは私とメイを交互に見ます。


「……あなた、もう少し大人びた服にしない? その格好はミカの趣味でしょう。寒いわよ」

「えっ」

「え」


「ミカもミカよ。下働きの邪魔にならない短い肩掛けコートくらい買ってあげなさい。向こうの露店にふわふわの裏地が入ったいいものが出ていたわよ。絶対この子に似合うわ。少なくともあの領主はメイドが多少無相応な装いをしていても実用的ならば見逃すわよ」


 え?!


「確かに子どもっぽいかも。でもでもミカちゃんには大人の格好って頼んだよ!」

「……『あの』侯爵令嬢にかわいい服を着せようとする娘ですよ彼女は。ファションセンスなら太陽王国最新を網羅しているロザリア様の側使である私の方が上です。それに……もう少し膨らみ始めた胸を強調しても今しかない青春の一瞬を強調できて愛らしい上セクシーになるのでは。

 ミカ。あなたファッション誌はちゃんと見ているの。流刑民としてこちらにきた私だって見ているわよ」

「えっ。えっ。カリナあなた何をしたの」


 彼女は私を無視するようにし、呆然としているメイを見て服装やアクセサリーのダメ出しを始めました。


「髪ももう少し……藍色のストレートは素の良さが出ていた確かにいいのですが……この王冠編みもつけ髪の方が髪を痛めないかと。いくつかの束にはパーマを入れてウェイブした方が変化がついていいですね……。あなたつけ髪はご存知? あら知っているのね。なら買う必要はないかもだけど北の露店にあったわよ。品質もいいものだし間違いないわ。ガ族だったかしら。あの野蛮人どもの髪でできたかつらはかなりいいものだから使うといいわ。元結に使うのはパ族とかいう野蛮人が使う紙の方が便利ね。あなたはいい髪をしているから湯気櫛は使わない方がいいわよ。でもあまりに汚いから……よく洗ったら暖かいタオルで乾燥処理。それから冷たい風を使うのよ。

 ちょっ待って。いいものを買ってあげるわ」


 カリナは呆然としているメイには大きい下着のようなものを買ってくるが早いか服の上からそれを纏わせます。もちろん服の上ゆえピッタリになります。服の上からすいつくようなそれは少々恥ずかしいほどに体型を簡単に引き立て、さらに出るべきところは豊かに細くすべきところは細く見せてくれます。


「キャミソールというものだけどご存知?」

「ううん。知らない」


 メイは素直に首を振ります。

 わたくしも寡聞にして存じません。


「そう。太ってもこれをつけたら細くなるわ。もちろん今より痩せても胸が大きく見えるし」

「なんか胸周りに型紙か針金はいっているのかな。とてもかわいいね。ちょっとあちこち透けているけど下に服着ているから恥ずかしくないもん」


 あちこち透けているそれは確かにメイの服と合わせるとより可愛くさらにセクシーに見えました。


 さらに背中までしかないコートの裏地はもこもこふわふわで七分袖。ケープまでついていていかにも家事手伝いが使うには勝手良さそうです。


「コートの表は多少の水や雪なら弾くから水仕事をしていても外回りでも使えるわ。あと手袋も欲しいわね。そうね。こちらのものなんて洗濯仕事にも使えて水も通さないししかも暖かいわよ。それにかわいいかな。

 エプロンも……そうね。撥水素材のものがあるから制服規定に沿うなら適当なのを見繕ってあげるわ。

 なにこの足首のフリル。かわいいけどあなたに合うのはアンクレットよ。綺麗になるわ。

 だいたい子どもや冒険者じゃあるまいしなぜこの寒さでミニスカートなのよ。断然この防水バッスル入りパニエよ。これなら前にもボーンが入っているわ。ミカ、この服でお湯を脚に溢したら大火傷じゃない。

 それからストマッカーも縫い付けないものがあるからそれで胸を演出できるように予備を買いましょう」


 せっかく頑張ったコーディネートなのに。


「あっすごい綺麗だしかわいい。大人ってかんじ!」

「ふん。当然よ。髪にコテや蒸気櫛よりこっちのつけ毛のふさを使うといいわ。え? 色が違う? ばかねこう使うのよ……ほら髪に隠れて歩くたびに時々見えるの。いいでしょ」


 くやしゅうことにファッションではカリナには敵いません。

 わたくしのものを取られたような悔しさがあります。


「いいけど、やっぱりミカちゃんが選んでくれたふくがいいかな」

「メイ……」

 ちょっとうるっときました。


「あ、お金はミカに払ってもらうわ。あなた侯爵令嬢に言われるまま投資してそこそこ稼いでいるでしょう」


 ぶ。


「え、ミカちゃんお金持ちなの」

「嘘です! そんなに持っていません!」


 少なくとも二、三度実家を安全に往復できる渡航費と王都の郊外に新築で小さな家を建てる程度はございますけど。

 ここ10年いただいたお給料の使い道はほぼございません。お嬢様とどこまでもお供するつもりでしたので。


「少なくとも流刑民の私よりは持っているわ」

「何したのよカリナ」


 どうもマリア様と同じように彼女も流刑民として海を渡ったようです。



「ああ。堅物カリナもついに不埒な流刑民どもに夜毎に汚され。

 辛かったでしょう。ごめんなさい私あなたのことを知らず力になれず」

「あなた、時々私より人を怒らせるから気をつけなさいよミカ。こんな子と一緒にいると酷い目に遭うわよメイって言ったっけ」


「あっかんべ。余計なお世話の〇〇さん」


 私が嘆くと彼女は鉄面のあだ名に反して頬と耳を赤らめて抗議しました。その辺はうまく切り抜けたようです。よかった。あとメイの伏字は私も存じない言葉です。


「私はどうなっても構わないけど、愛しい私のお嬢様は御守りしきったわ」

「あなたらしいですね」

「ふーん。このひとの主人だからきっと性格悪いおばさんだね。きっとべんきょうとかはなにかけたいやみなひとだ」


 性格については……。

 でもお嬢様と同年代ですよ。


 ロザリア様は学業も優秀でしたが、どちらかといえばファッションとか芸術に一家言あります。

 通称『オシャレ番長』ですし。


「最近は給料が出るけどあの宿舎はまだ寒いし、お嬢様に近づくなと監視をつけられてさっきやっとまいたのよ」

「何したのよあなた……」

「きっとわるいことだ」


 メイ、あなたも横領は家内で内密に手討ちがありえるのですよ。

 旦那様とお嬢様だから教えさとして許してくださいましたけどね。


「とりあえず、この子借りていいかなミカ」

「はっ?!」


「……い、や、だっ!」

「おとなしくしなさい。泥棒猫を香水山猫程度には磨いてあげるから。それにミカの見立てとは違う意味でオシャレしてみたいでしょ。ミカよりは私の方が街中には詳しいわよ。いい店もいっぱい知っている。古着でも最近はいいものがあるし、古代魔導王国期のものも放浪時代の実用品もここなら揃うのよ。道具立てもぼろぼろじゃない。リュックについているキモい人形の服も」

 ひょっとしてカリナはオシャレに関しては長台詞になるあたりカラシくんと同類では。

 もっとも彼女の場合あのロザリア様のおつきなのでセンスのないものを用意すれば鞭が待っていますが。


「キモくないけど、長靴下のモッピちゃんの服は欲しいかも」

 そこですか。メイ。


「決まりね。この子借りていくからミカ、領主様たちによろしく。こらこら噛むなっ。引っ掻くな」

「やだぁ。わたしはミカちゃんとすごすのー!」

「あ、あの本人の意思を尊重してほしいのですがカリナ」

 しかしカリナは暴れるメイをグイグイと。


 大丈夫ですかね。


 まあカリナですし。あれで面倒見は良いのです。

 あれでは人に好かれる要素はほぼありませんけど。


 でも、私も新作を買ってみようかしら。

 カリナではないですが新聞も買いましょう。



『【転載記事】藩王領に『物狂い王妃』現る。『気狂い騎士』従え救世救民の旅。自ら銃をとり山賊を討伐したという謎の貴婦人に直撃インタビュー。帝国に滅ぼされしユメミル国のケイブル王家という実在しない国と王家とのゆかりを語る彼女は狂人か英傑か。藩王都で慕われる彼女の実相。ドゥオーフ藩王陛下自らが語るその苛烈な戦いぶりに反した彼女の非の打ち所がない人柄を深掘り【引用元。太陽王国 ワザマエオテマエ新聞】(※当誌は転載に伴い引用元に適正な著作権料を支払っています)』

『【広告】落ち目の今こそ買うべき太陽王国移民株式会社株。識者が語る資産形成』

『連載。ロゼちゃんの街中ファッションチェック。本日のおしゃれさんは海賊船『黒龍号』を束ねる『寝坊助』ブラック・ドラゴン氏。白竜亭看板娘マイカ嬢の私服を紹介』

『王国激震。園遊会にはぐれバイドゥ乱入』

『特集。本日のヒットソング。『黄竜亭』の充実した音楽環境を楽しむ。流行曲「とおいそらからきたおとめ」歌詞楽譜完全掲載。各楽器に合わせたアドバイス込みであなたも弾ける』

『今日のお料理。冬だからこそ街で家で。あなたも育てられる大好評闇豆芽(もやしの意)キットの料理。やまとびとがもたらした干し柿を細かく切り塩炒めに和えてスパイスリーフを添えておしゃれで塩と甘みの絶妙。肉を添えればさらに栄養満点。ミリオン・ミスリル』

『【新刊情報】『よくわかる家庭の医学。太陽王国の知恵編。著者ジョセフィーヌ・カリーナ・マーリック他。【推薦の言葉】賢者ショウ・スカラー:太陽王家の祖先にして『星を追うもの』の一人ともされた著者と歴代王家が改訂を重ねた決定版。焚書を辛くも逃れ本日領主様の奥方の手により無事翻訳版が出ました。医師ピグリム・ブラザーフッド:家庭に留まらない豊富で実践的な内容。医者が見ても唸らされるチャート診断からの記事への誘導という簡潔かつ実用性なアイデアはいくつもの補記やフォロー作品を産んだ金字塔。初期の統計を駆使し当時の人々を頻繁に悩ませた症例、安価で実用的な補助具作成の考察、井戸や厠などの作り方までわかりやすい文体で調べたい情報順に列記した構成は後世に残すべき名著。医者があえて推薦する医者要らずの名著をぜひあなたのご家庭に。古本屋台でも絶賛発売中です』

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『社説。広告出稿についてのお願い。本誌「ひざのくに新報」は誹謗中傷名誉毀損を目的とした広告にはいくらお金を積まれても応じる事はできません。広告欄を利用して記事と混同されるような広告もお断りしています。また現状は金融商品広告に応じていますがこれらは記事と区別がつくように編集を行うことをご了承ください。主筆ベンジャミン。挿絵ミューシャ。デザインロゼ。本誌における医療記事及び広告は命に関わるため外部監修としてピグリム・ブラザーフッド(心療内科及び外科)ングドゥ(薬学、内科)ガクガ(外科)ンガッグック(点穴及び灸治療)をつけ編集済みです。ご安心して記事をお楽しみください。本誌の売り上げのうち5%をパ族紙産業保護活動へ。5%を寡婦孤児救済活動に寄付を行っております。寄付事業報告書は次号掲載します』



 ……最近クオリティが上がりましたね。


 ガクガに秘蔵の干し柿を盗み食いされた時は本気で怒ったのですが、彼女は熱心に当地の渋柿を持ち込み私を手伝い、その後しゃあしゃあと私の秘伝を仲間に伝え冬の味覚として。

 でも紹介されているアレンジは私自身も考えつきませんでした。あとで食べにいきましょう。


 今思えばこの新聞が辺境にしてはやたらクオリティも準法意識も高く領主の行動でも忖度なくすっぱぬくのはお嬢様のみならず昔からの知人連中が関わっていたのだからと思えば納得です。

 海賊の多くは文字が読めないので包装紙もしくは簡易防寒具や焚き付けとして使われていますけど。


 いけず岩に座り、ガ族の女性が路上茶店として淹れてくれた茶の香りを楽しみ新聞を読んでいますと正面から記事を覗き込んでいる少年と目が合いました。

 厳密にいえばうっとおしいので睨もうとしたのですが。


 あれ。

 あなたどうして。


「あれ。ミカ殿」


 あなたデンベエじいちゃんとマリア様とフランクリンの印刷所に行かなかったかしら。またわざわざ服まで変えて汚い格好をして。


 あ。そうだ。

「そうだ。ここで会ったのはいい機会だし買い物手伝ってくれませんかカラシくん。ちょっと多めに買いたいので。あなただって防寒具とか必要でしょう。靴は必要よ。凍傷になっちゃうし。買って差し上げますよ」

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