楽死
学生生活というのは空気を読むことが出来なければ死んでしまうような社会だ。
周りのみんなが右と言っているところに一人だけ左なんて言った日にはそこに居場所はなくなってしまう。
そんな明るく楽しく、そして狭苦しいような世界で毎日を生きている。
私も、そんな世界の一員であり、一因あることに誇りと嫌悪感を持っている。
酷く息苦しく、どこか物足りなさと、つまらなさに包まれた世界がいつか壊れるのを心のどこかで待ち望んでいた。
春の半ば、クラス替えの盛り上がりも落ち着きだし、ある程度グループが固定され出した頃。
私は、いつものように目立ちたがりな中心的な女子の周りを金魚の糞のように漂っていた。
朝、いつものように登校すると、中心的な女子を筆頭に、とある男子に嫌悪感に満ちた目を向け、陰口を楽しそうに叩いていた。
その対象になっている男子は、良くも悪くも、いや、悪くしかない意味で浮きまくっていた。
クラスが鋭意発目の自己紹介から、「誰ともかかわる気はない」なんて言い放てばそりゃそうなるだろうといった感じである。
しかし、憎いことに何よりも顔がいい。
彼の人を近寄らせない雰囲気も併せて、魅力をまとっていた。
女子のグループの中では暗黙の了解になっているが、中心的な女子である子も彼に自信満々に告白をしていたらしい。
しかし、こっぴどく振られたことで陰口をたたくようになっている事は誰も口に出さないでいた。
そんなある日、珍しく朝寝坊せずに起きることが出来たので早めに登校することにした。
誰もいないだろうと考えていた教室には、噂の彼がいた。
彼は、教室の隅に飾られている花のため水をやっているところだった。
教室の入り口の私と目が合った彼は、少し照れ臭そうに人差し指に手を当て微笑んだ。
それから、朝は寝坊どころか母親を起こすくらいに早起きするようになった。
朝の誰もいない静かさの中で過ごす、彼との時間が楽しみだった。
ある時、中心的な女子から呼び出しを食らった。
どうやら、彼と仲良くしているのに気づかれたらしい。
それでもいいと思えた。
これまでの人生で、まともに空気を生きてきた。
けれど彼といると、全部の時間が楽しくて、こんな息苦しい世界から死んでもいいと思えた。
死んだように生きるか、周りから死んだように扱われながら生きるか。
考えるまでもなかった。
行き詰ったので投げっぱなしです。すみません。