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生い立ちから、パソコン検索だけの環境へ

俺は、人を殺した。ある男に銃口を向けたら、その男は死んだ。

どうしよう、俺の人生はこれからなのに、と、普通なら思うだろう。

しかし俺は、人生を半ばあきらめていた。


『親ガチャ』という言葉がある。親が社会的に高い地位について、何不自由無く育ったのが『親ガチャ』の『勝ち組』の『上級国民』などと言われる。


俺の親は、『負け組』の中の『負け組』。


『親ガチャ』の中でも、大ハズレは、平凡な親ではなく、虐待をする親だと思っている。


虐待が趣味みたいな親だった。どこにも連れていってもらえず、それをねだったら殴られた。


とにかくもう、ここにはいたくない。どこでもいいから、世界のどこかに行きたい、という願望は、当時からあった。


そんな地獄の生活から抜け出すため、家出をした。


あの親たちは、俺が家出をしても、捜索願いすら出さず、気にもとめなかった。実質ネグレクトだ。


あてもなく町をさまよい、気がついたら、その手に銃を持っていた。


ある男とトラブルになった。何のトラブルだったのかは、いちいち覚えていない。


その男に銃口を向けたら、その男は死んだ。


そして俺は、裁判で終身刑の判決を受けた。その後、なぜだかわからないが、パソコン画面の前に座らされて、個室に閉じ込められることになった。


このパソコンだけは、自由に何でも使えるとのことだ。検索さえすれば、何でも出てくる。


世界の名所とか、国名とか検索すれば、画像でも、動画でも、何でも出てくる。ただし、それ以外には特にやることがない。刑務作業すら無い。


刑務作業も何もしないまま、個室でボーッと過ごす。いわゆる禁固刑というやつだ。


終身刑だから、もう一生、外の世界に出ることは無いのだろう。


外部の人間と接触する機会も無い。パソコン画面から伝えられる情報が、唯一の情報だ。


そこで最初に検索したのは、『世界一周旅行』そして、『ワールドツアー』だった。


実際には行かないけど、思い浮かべながら、今日も検索をかける。


禁固刑だから、何もすることが無い。刑務作業すらしなくていいという。なんだか、キツネにでもつままれたような話だ。


国名と、いろんな検索ワードを組み合わせて、検索すれば、関連するいろんなニュース記事や、画像、動画が出てくる。






実はこれ、(すさ)んだ人生を歩んできたことが、事件を起こし、加害者となるに至った動機であり、そのような者が数多くいるということで、新たに導入されることが決まったカウンセリングのプログラムらしい。


そんなこととは(つゆ)()らず、俺は、いや俺たち受刑者は、今日も検索に励む。

ちなみに検索(けんさく)履歴(りれき)は、逐一(ちくいち)チェックが入り、検索の内容によって、心の動きがわかるという。


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