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第一章・出会い 一

        一

 恐ろしい吼え声が辺りに響く。

 セージュが駆けつけた時には、戦士達は完全に戦意を無くしていた。

 ただ一人、金色の冠をつけた者だけが黒蛇に立ち向かっている。

 必死の形相だった。果敢にも手に持つ尺杖を振り翳し、己の十倍を優に越す黒蛇に対峙する姿は、勇者の名に相応しい雄姿。

「危ない」

 のほほんとした声色とは比較にならない速度で、セージュの体が無意識に動いた。

 蛇腹になった身体を縮め、大きく跳躍する黒蛇を視野に捉えている。

 考える必要などなかった。これは遊びではない。命懸けの殺し合いだ。男の前に飛び出したセージュは、手を翳す。邪悪と立ち向かうのに必要なのは、信念でも信仰でもない。強大な、光である。

「女! 何をする!」

 男の横をすり抜けたセージュは、静止しようとする声も無視していた。

 目前に迫る巨大な牙。太陽さえも飲み込む、黒蛇の口。セージュは臆する事もなく、ただ手を翳した。

 止まった。見えない壁にぶち当たり、黒蛇は弾き飛んで行く。縄状の身体には、蛇腹の溝があり、だらしなく伸び切っている。もんどり打って水面に身体を打ちつけた黒蛇。波紋が波になり、河岸には高い水飛沫が上がった。

「何をした?」

 背後からの問いかけ。セージュは答えなかった。

 第二波はすぐ来る。

 走る。

 セージュは光に包まれていた。

 目に入るのは最早黒蛇のみ。

 地を踏みしめ、跳んだ。鼓動が、脈が、極限まで速く鳴る。体温が高く、更に高くなる。耳鳴りがする。鼓膜が悲鳴を上げた。

 見よ。セージュは邪蛇の頭上で光輝いている。黒蛇は怯え、恐れ慄いている。

「あんた、消える?」

 抑揚の無い台詞に、我ながら情けなくなった。だが、心を乱してはいけない。どんな時も、怒りさえ抱かない。そう、抱いてはいけないのだ。怒りも“負の力”の一端に過ぎない。

 セージュは渾身の力を込めての黒蛇の懐に飛び込んだ。

 表皮を、分厚い皮を突き抜ける。湿った体内の、腐った血の匂いが満ちる肉の中へと分け入る。どろり纏わり付く、肉と血が肌を撫でる。

息を止め目を瞑ったセージュは、ひたすら嫌悪感を押さえ込んでいた。

 勢いは終始衰えず。

 再び皮を破って水中へと突き抜ける身体よ、決して楽には死ねず、老いさらばえる事も叶わぬ身よ、せめて今は熱く滾れと願う。

 黒蛇の体内は暗く、冷たかった。しかしナイルの流れは暖かく、セージュの勢いを和らげている。

 温い水中で味わう開放感。黒水に混ざる聖水が、セージュの身体に張り付いている穢れた血液を洗い流していった。

 ナイルの流れは、犯されてもなお穢れを祓う力を持つ、聖流なのだ。神秘の流れは、上流から土の混じった清い水を絶え間なく運び、黒蛇に犯された黒い水を浄化し、押し流そうとしている。

 悲鳴。

 腹からどす黒い血液と閃光が。光に触れた箇所からは炎が生まれる。

 燃え上がる黒蛇は濁水の中へと逃げた。蛇腹の身体をくねらせ、水を掻き分ける細長い胴体で、水を薙ぎ払いつつ急速に潜っている。

 水煙は空を覆い、太陽の光が霞む。荒れ狂い、津波となった黒水の塊が大地を襲った。視界の中に飛び込んだ、金色の冠を被った男は、戦士達と共に高台へと慌て登っている。

「呑まれる!」

 背筋が傷む。ああ、戦士達を守ることはできないのか。セージュが悲しみで胸に痛みを感じた時。激流が地面に広がり、戦士達に迫った時。

 大地が、ざくり裂けた。

 水は、瞬く間に深くうがいた黒い裂け目の中に吸い込まれる。戦士達は濁流に飲まれることなく、上に登っていった。セージュは胸を撫で下ろし、刺すような強者の気配を察知して、穴に目を向けた。

 臭いがする。死の臭いだ。手を血潮で染めたものの臭いは、どんな時も出会った瞬間に鼻に付くのだ。湧き上がる嫌悪。何者かの好戦の意識が肌を刺している。

「何か来る」

 セージュは水面に高く顔を突き出した。息を継ぎ、大地の裂け目を見つめる。

 下方から現れたのは、等身大の男。白に極限まで近い薄茶色の布に包まれた者は、傍らにジャッカルの被り物をした半裸の男を従え、太陽の光の中姿を現した。

 セージュは水面で見詰めていた。未だ荒れ狂う水の中、神々しくも禍々しい二体の姿を、ただ見る。

『上げよ』

 ジャッカルが口を開いた。口が動いている。被り物ではなく、頭がジャッカルなのだ。褐色の厚い胸板の上に光る黒い目は、爛々と輝いているではないか。セージュは口を開けたまま、見入ってしまった。

「亜人間が、生きてる?」

『大地に、上げよ』

 尺杖を持つ手が、すと下がり、もう片方の手が前方に伸びた。指差している。

真っ直ぐにセージュを。

「……なら一歩引くよ。ご氏名ありがとう」

 別段ありがたくはないが、セージュは一応手を合わせて拝んだ。

 亜人間。人以上の能力と知能を持ち、人より優れた文明を誇っていた。しかし、すでに高度な文明と共に滅亡したと聞いている。生き残りがいてもなんら不思議はないが、セージュは正直驚いていた。

「あの神さんが、存在を許したとはねえ」

 神、と口にしてはみたが、そんな大層な代物ではない。神もまた、命持つ者に過ぎないのだから。      

 刹那、水面が盛り上がった。

 セージュの下方より巨大な黒蛇の頭が迫り、水が持ち上がる。勢いを増すと、濁流がせり上がり、小山になって流れ落ちた。

 セージュは水と共に流れていた。熱い。体が熱くなってゆく。脳をつんざく散命の叫び。漲る、ちから。

 生きながらにして腑を抉られ、体内に呪の宿命を埋め込まれた哀れな女。

 糧となるは救済の一念。

 漲る。皮肉にも濁流に飲み込まれたものの魂が、内に秘めた力を極限まで高める。

 広がる。力が、広がる。漲る力は白光と化し、ヴェールとなり、全身を包んでいる。

 セージュは指先を合わせた。

 熱が身体を駆け抜けて一箇所に固まる。左足の外側が、斬りつけられる痛みを伴い魔方陣を浮かび上がらせている。ナイルの水面が足先に触れた時、自らの使役する僕の名を、のほほんと、呼んだ。

「フォカロル」

 魔方陣から勢い良く噴き出した風が、皮膚を奪い空へと駆け上る。空中で渦を巻く空色の風が、一人の、有翼の戦士を形作っていく。

 水中に落ちていくセージュは、上を見上げて微笑んだ。

「フォカロル、只今参上仕った」

 野太い声の持ち主は、鳶色の羽を二、三度優雅に羽ばたかせ、急降下を始めた。一旦沈み、水中から浮かんできたセージュを、両の手で掴み攫っていく。

 少し、穢れた水を飲み込んだ。胃が焼け付いて気分が悪い。吐き気を堪え、口を押さえながら、セージュは命令を下した。

「フォカロル、あの蛇を陸に上げてくんない?」

「御意」

 後を追って来る、水飛沫を撒き散らし大気に飛び出した黒蛇を指差すと、セージュは僕の横顔を盗み見た。

 立派な、鳶色の髭を蓄えた顔面はごつごつとしていて逞しく、傷跡だらけの頬には深い皺が刻まれている。 激戦を繰り広げてきた証が、体中に刻み込まれていた。筋肉の鎧を着けた腕にも、皮の靴を履いた足にも、一杯に広げられた翼にも。歴戦を潜り抜けた強い者が好きだ。好意を込めて、セージュは太い腕を軽く叩く。

 フォカロルは主を小脇に抱え、空高く舞い上がると、片手を掲げ、力を解放した。

「水よ。舞え」

 下では蛇腹体の黒蛇が水中に戻り、収縮を始めていた。太陽まで届く牙を光らせ、上空を飛ぶ邪魔者を水面下から狙っている。

 目は、日食の如く縁が煌々と照っていた。獲物に慈悲は掛けず、また非道を非道と感じる心すらない空虚の中、渦巻く殺傷への欲望だけが、不気味に光っている。

      

 ウォールは、変わり果てた郊外の様子に驚きを隠せなかった。

「これは」

 泥が田園を埋め尽くしている。しかも饐えた匂いを発する水は、触れた作物や家畜を腐らせていた。ウォールの楽園には、今正に死の臭いが充満している。

 轟音と共に水飛沫を上げる黒蛇を睨みつけた。唇を噛むと、合わさる下唇から血が滲み、口の中に鉄の味が広がった。

「おのれ、我が故郷をこんな姿に」

 憎しみが胸を浸している。後悔が憎しみを煽る。決戦のために召集が掛かった時、不在にしていた事に、無性に腹が立った。

 ウォールは辺りを見回し、大河の傍にある高台に兄の姿を認めると、体躯を揺らし走り始めた。

 都市の名は、イネブへディ。白い壁の意を持つ都は、偉大なる王、ナルメルの即位に合わせ造られた大都市である。上下エジプトが併合してから五年。広大なナイルの恵みに支えられ、人々は平和を謳歌していた。

 だが今、悪夢がこの都を襲っている。エジプトの邪神、月の蛇の復活である。長い身体でとぐろを巻き、口からは怨挫の毒を吐く巨大な黒蛇が、ナイルの流れから太陽を壊そうと襲い掛かったのだ。

 人々は恐怖に包まれていた。絶望が大地を暗黒に変え、嘆き悲しんでいた。

「くそっ!」

 ウォールは吐き捨てた。苛立ちが限界まで高まっている。

 義理兄の傍から離れるべきではないという信託なのか。自分が去れば、王であるナルメルの障害を取り除けると考えたのは間違いだったか。王都は、落ち着くと思っていたのに。旅をしようと出て行ったのは、今朝ではないか。僅か数時間で、王都に災いが降りかかるとは。これは、偶然か。それとも誰かに仕組まれていることなのか。猜疑心が生まれ、走るウォールはナルメルを探した。ただ一人の、真の理解者の姿を。

「兄上!」

 一気に高台まで駆け上がると、憔悴している兄に声を掛けた。生きている。怪我も無いようだ。ほっとすると涙が出そうになる。優しい義理兄は王になっても変わっていない。血の繋がっていないウォールをいつも迎え、ウォールの前だけでは兄でいてくれたのだ。

「おお、ウォール、駆けつけてくれたか」

 黄金の冠を被った、見目麗しい義理兄が、破顔して腕を広げている。

「遅くなった。申し訳ありません、ファラオ」

 兄の柔らかい笑顔を見て安心したウォールは、我に返り、跪いた。

「ウォール、何を他人行儀な。ナルメルで良い。それよりも見よ。あそこに我が国の守り神がいる。シルビイがやってくれたようだ」

 ナルメルは、安堵の笑みを浮かべ、地べたに座り込んでいる。ウォールは二神の姿を探し、神々しい守り神を平野の上に認めた。

安心感が広がるが、ただじっと立つだけの姿に違和感を覚え、振り返った。

「ファラオよ、では今戦う者は、誰だ」

 ウォールは、ナイルを見た。荒れ狂う黒蛇が、空を舞うものに翻弄されている。

 黄土色の水が、遥か上流から山を作りうねり、下流からは青き水面の塊が、強烈な質量を誇り押し寄せている。両脇からやって来た水塊が黒蛇に殺到し、黒蛇は悲鳴を上げた。

 ウォールは、黒蛇の頭上にある鳥型の影を指していた。

ナルメル達の視線が一斉に向けられる。視線を手の先に戻したウォールは、鳥型の男が抱く女の姿を見、目が離せなくなった。美しさでは、王宮の侍女達にすら劣るかもしれない。黄色の肌、彫りの浅い顔は、東洋の出を物語っているからだ。だが、荘厳な美を撒き散らしているのは黒髪の女だ。

 戦う乙女の名は、何と言ったか。戦乙女はどこの国の書物で目にしたか。

「あれは一体……誰だ?」

 呟きは、次の瞬間驚愕の声に変わった。

        

 黒蛇が飛び上がろうとした時だった。上下流からやって来た水が、巨人の手となり鱗に覆われた身体を掴んだのだ。

「フォカロル、あっちに投げて」

「御意!」

 セージュの指令を受けたフォカロルは、手を陸に向けた。

 暴れる黒蛇を軽々と持ち上げた水手は、水面から腕を伸ばし、肘まで見せている。

対岸へと倒れ掛かった腕が、急速に守り神の待つ陸へと動いた。両の手に掴んだ黒大蛇を、守り神達の目前に叩きつける。黄土色の左腕も、小魚の見える右腕や拳も、散らばることなく陸をうがいたのだ。

 黒大蛇は痛みに耐えかね、怨挫の声を上げている。聞くだけで精神が抉られる不快な騒音。響く叫びはセージュの耳を襲った。

「煩いなあ」

 のほほんと言ってのけたセージュは、高ぶる気持ちを静めようと勤めていた。

戦いの時には、普段滅多にない充実感を感じる。永く生きて来たために、平凡な生活では満足できないのだろうか。「違う」とセージュは知っている。

 一重に、胸の奥底に隠した、強い、こびり付いた強い想いが、自身を支えているだけの事だ。

「さあ、お二方。望み通りに引き渡したよ」

 セージュは、鳶色の羽根を持つ熟練の戦士の腕に抱かれ、遥か下方を見ていた。

 包帯を全身に巻いている男が、ジャッカルの顔を持つ半裸の男に片手で合図をしている。半裸の男は、一度地面へと尺杖を強く打ちつけると、空へと掲げた。

 太陽の真下に暗雲が湧き出てくる。一点貫いた穴から染み出る雲は、墨色をしている。稲光を纏い、雲はたちまち月の竜の頭上に広がった。

「あれは?」

「マイスターよ、あの者から神聖な力を感じますぞ」

 フォカロルが身震いしている。相反する力を感じ、心身が萎縮しているようだ。

 僕の苦痛が伝わってくる。セージュは、有羽の戦士の腕を優しく撫でた。

「無理しないで、大回りして私を丘に置いて」

「御意」

 頷くフォカロルは急旋回をして、街側にある丘目掛けて羽ばたき始めた。       

 半裸の男は、先の尖った長い鼻を上に向けていた。体勢を立て直した黒蛇が、二体の存在に気付いて威嚇している。

 セージュは、フォカロルの腕の中、丘に二人の男の姿を認めた。

「あそこね」

 旋回するフォカロルに気付いた男達が、見上げ口々に驚きの声を上げている。

 舞い降りた有羽の戦士はそっと手を放し、セージュを地面に立たせる。

「使命は果たしましたぞ!」

「ありがとう、お疲れ」

 空色の風が音を残して掻き消えていく。フォカロルだった風は、大気に溶ける。セージュは風に手を振って、黒蛇へと身体を向けた。

「貴様、何者だ!」

 周りで、戦士達が槍や剣を構えて遠巻きにしていたが、セージュは一瞥すると再び黒蛇に視線を移した。

 初めて出会った者を助けた時は、皆が同じ対応をする。何度も経験しているし、もう飽き飽きしているのだ。

「怖いのは解るけど、後でにして」

 手の平を力なくぱたぱた振って、セージュは戦いを見守っていた。

 戦場の真上の雷雲は、雷を落とし始めている。飛び掛ろうとしている黒蛇を牽制し、動きを封じる雷は、青白い光を放っていた。

「あれは、魔物かな?」

 不気味さを感じる二体は、胸を張り悶える黒蛇を見ている。亜人間にしては、能力が高すぎる。セージュは自問していた。

「いや、我らの神だ」

 声の響きは太く、落着いている。

 呟きに答えた男は構えるでもなく、すと傍らに寄り添った。横目で見ると、怯える気配も見せずにセージュを見詰めている。

「神様ねえ。ま、私に命令するんだから、それくれいの力はありそう」

 興味深々の眼差しを向ける男は、褐色の肌から白い歯を剥き出しにして、豪快な笑みを浮かべた。

 男は、白い布服の上に鎖帷子を着て、白銀の胸当てを着けている。腰には大振りの両手剣が下がっていた。黒のレザーパンツにレザーブーツを履き、その上に白い腰巻きを巻いている。 腕と脛には銀製のガードを付けていた。背が高く大柄で筋肉質。くっきりした顔立ちをした意志の強そうな男だ。長い波打った黒髪が、逆に彼の男らしさを強調している。

 額を覆い隠すように白い布を巻き付けており、やけに目立っていた。 

「嵐の神、黄泉の神。月の竜を封じることのできる神だ」

 丁寧に順番に指を指し、示している。

 エジプトは大きな国であるが、北欧から真南に南下して、ぐるり回って放浪して来たセージュは、砂漠は知っていても、大国である上下エジプトは初めてだった。

 様々な文化に触れ、他国の言語すらも頭に入っているセージュには、エジプト人の言葉すら耳慣れなかったが、近国で使う言語に毛が生えた程度の訛り言葉に聞こえて、少しだけ笑った。

「へえ、やっぱエジプトって変わってる。どうやって呼んだの?」

「神の愛し子、シルビイの力だ」

 男は破顔している。愛し子の名は女のようだ。よっぽど愛されるなりをしているのだろう。男を盲信させる女は想像し易い。巨乳で顔形が良く、淫らな雰囲気があって、女らしい曲線美を誇っている。エジプトは暑いから、肌の露出も半端ないのかもしれない。亜人間を神と呼ぶのは、シルビイという女が仕組んでいるのではないだろうか? 差し当たって聞きたいのはコンタクトの有無だけだ。セージュは軽く話した。

「いや、連絡手段は?」

「ん?」

 顔をちら見すると、まったく理解できていない表情だった。

「あー、いいや、なんでもない。召喚なの?」

「解らん。我が知っているのは、シルビイが祈ると必ず現れるということだけだ」

「ふうん、連絡係がいるのね」

 まただ。男は、解らない事を適当に話さないだけなのだろうが、もっと察しがいいほうが助かるのに。

「んん?」

 諦めて、質問を変えてみる。

「神は、普段どこに?」

「解らん。神の居場所は、天上と、地下深くではないのかな?」

「まあ、ごもっともで」

 知らないのか。まあ、無理も無いだろう。神官が詐欺行為をしているのか、それとも亜人間が詐欺をしているのか。どっちにしろ戦いと今後で解る。セージュは納得して男を見詰めた。

 内面もまあまあ成熟しているようだ。問いかけにも落ち着き払って答えているし、男は名うての戦士の相をしている。

セージュは満足して名乗った。

「ふうん。私はセージュ。よろしく」

「我は、ウォールという」

 握手を交わすことなく褐色の戦士と並び、“神の業”を目に焼き付けようと、戦いの模様を見るために目を凝らした。



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