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ルーナ視点


※※※※※※※


ルーク視点になります。

「ノ、ノーラさぁぁぁん!俺と言う者がありながら何でだぁ〜チクショー!ルーナ、ルーナの事は嫁に出さないからなぁぁあ」


ルーナの叫びを聞き走ってきたニコルはノーラの報告を聞いた途端客間のドアの前に膝を突き項垂れた。


折角身内みたいな存在のニーノ、ルーク、ニコル、カイの4人が客間に来たのでそのままノーラが打ち明けたのだ。


「ふふふ」


ノーラはお上品に笑ってサラリとあしらう。


「ハイハイ」


ルーナはいつもの事だと適当に返事をし受け流す。


「なんだその素っ気ない返事はっ!俺の夢はなぁ、ルーナとノーラさんとニーノとのんびり暮らす事だったんだよぉぉ〜」


「はぁっ。もう、ニコルは私が家を継いだらサバルトーネ家に来ればいいじゃない」


深く考えず言ったルーナのこの言葉に部屋に居たニコル以外の全員が息を止めた。


「あれっ?ルーナちゃんそれって俺をお婿さんにするって事?いやぁ、やっぱそうだよねぇ。皆ごめんね〜?」


ヘラヘラ笑うニコル。ルークは言葉を失い膝から崩れ落ちた。

ノーラが慌ててルークを立たせて大きく口を開ける。


「ニコル、謝られてもお婿さんになるのは絶対ないわよ。ルーナ、もしかしてまだ気付いてないの?」


「え?何が?ニコルはサバルトーネ領でギルド長やればいいと思って言ったんだけど……」


カイがほっとしたように息をついた。


「あービビった。大穴でニコル来たかと思ったけどニコルだもんなぁ。ないよな」


「ちょっと、カイ〜。前から言ってるけど俺の扱い少〜しくらい良くなんないかなぁ?俺だってルーナのお婿さんになる資格はあるさ」


「ないわよ。だってニコル私の事異性として好きじゃないじゃない。私はお互い愛し愛されて、想い合える人と結婚するのが夢なの。お姉ちゃんと王太子殿下みたいな愛、いいわよね」


「ルーナちゃんは相変わらずだなぁ〜」


ニコルこそ相変わらず口で言うだけ。本心は何処か知らない所にある。


ルーナがうっとりしているとカイが口を尖らせた。


「でもさぁ、兄上もノーラさんの事が忘れられないなら周りにそう言えば良かったのに。そしたら俺がすぐ兄上にノーラさんの事教えたのにさ。ギリギリ会えて運が良かったよ。下手したら婚約者決まった後会ってたかもしれないんだぜ?」


「そうだけど会えたんだし、あのパーティーで出会えたからこそ運命的なの。はぁ。姿絵を見てお姉ちゃんの成長した姿を思い描いて想いを募らせてる王太子殿下を想像したら素敵よね。憧れちゃう」


ノーラとカデリアの恋ですっかり夢見がちな乙女気分に浸っているルーナをルークがじっと見つめる。


「なら、君の事を想う人が君の姿絵を毎日眺めていたら嬉しいかい?」


「もちろん、それが好きな人だったら嬉しいわ!でも、ジェシーみたいに一方的なのは勘弁してほしいかな」


「……一方的じゃなくなるにはどうしたらいいんだろうか?」


ルークが悩ましげな瞳でやたらと食いついて来る。

ジェシーは相手、ルークがジェシーの事を良く知りもしないのに気持ちを押し付けるから一方的で醜く見えた。


「ルークは大丈夫だと思うわよ」


「ほ、本当に?」


ルークは憂いを捨て一気にふわぁとした笑顔を見せた。

その笑顔はルーナの母性本能をくすぐる。


(一喜一憂して可愛いなぁ)


「本当よ。ねっ、カイ」


ルーナが同意を求めるとカイは頷き微笑んだ。




※※※※※※※※※




ルークはギリギリと痛む胸をグッと拳で押さえた。


(何故彼女はわざわざカイに同意を求めるんだ?)


カイは昔と変わらず大好きな友人だが恋に関してはライバルだ。カイ本人はまだルーナへの気持ちに気付いていないが。


(だから今のうちに彼女を振り向かせたいのに……カイと笑い合ってる所を見ると僕が婚約者だと言いたくなる)


ルークたっての希望により、既にジェロルドとサバルトーネ伯爵の間で婚約話が纏まっている。


だがルークはルーナに親に決められた結婚と言う意識ではなく、好きで結婚すると思ってほしい。


自分が好きな分、どうにかルーナに好きになってもらいたい。なのでまだ婚約話を内密にして貰っている。


たとえルーナが結婚までに恋心を持たなくても嫌と言うほど愛して年月を掛け振り向かせようと思ってはいるがそれは最終手段だ。


(結婚する時にお互いに好きと言う気持ちがある方が理想的だろう。でも、好きになってもらうのがこんなに難しいとは……)


どんよりとカイとルーナを見つめていたがどうにも胸が苦しくてカイの顔を両手で掴みルーナから瞳を逸らさせ自分の方へと向ける。


「おいルーク、俺は大丈夫だって」


カイが呆れたように声を出すがルークは頬を膨らませた。


(嘘だ。全然大丈夫じゃない。カイは彼女を愛してる)


パーティーの時、カイに言葉の色を見ろと言われて見た。その色はとても複雑だった。


動揺、迷いの黄色をベースに少しだけ嘘の赤が混じり、家族愛であるオレンジが強く出て恋愛を象徴するピンクもわずかだが混ざっていた。


総合すると家族愛のような気持ちが強くてまだ自覚していないだけ。ルーナの事をなんとも思ってないと口では言うが内心迷っているはずだ。


(本人は嘘をついてるつもりは無かった。だからこのまま気付かないでほしい。もし気付いてしまったら……カイに勝てる気がしないんだ)


ルークは絶対口に出すつもりはないが、ルーナとカイは前世で家族に近い深い関係だったと判断している。


「ルーク、いつまで俺の顔見つめてんの?この体勢さすがに照れるんだけど?」


カイの言葉にハッと我に返り手を離すと、ルーナがやけに優しい瞳でルークの顔を見つめた。


「ルーク、カイの言う通り大丈夫よ。前も言ったけど、私達は何もないから安心してね?」


(何故彼女は僕に大丈夫だと言ってくれるんだろう。僕の気持ちに気付いてるんだろうか?)


不思議に思いながらも頷くとニーノがルークの上着の裾を握り哀れみの目を向ける。


ルーナにパンを差し出され幸せ過ぎて泣いてしまった時もこの瞳で見られた。ニーノにはルークの気持ちはバレバレである。


「どうした?」


「兄上……後で僕と2人でお話ししましょう……」


やたらと真剣な表情のニーノにルークは頷いた。


夕食後、ニーノの部屋に行きソファに座り向かい合う。


「……兄上の為にハッキリ言います。兄上はルーナ姉様の事が好きすぎて行動が変です。カイ兄様の顔を掴んでる姿を見てルーナ姉様は兄上がカイ兄様の事を好きだと勘違いしてるって気付きました!」


「まさか……僕の気持ちに気付いて大丈夫だと言ったわけではなく……」


ニーノはふるふると首を横に振る。


「姉様は全く気付いてないです……カイ兄様との事を応援してる……って」


ルークは返す言葉が出てこない。

自分より年下で恋愛経験もないニーノの言う事が正しく思えるからだ。


「僕がカイを想っていると勘違いしているのか……言われてみたらそんな気がしてくるよ……どうすればいいんだろうか?」


少し悔しいが自分よりもニーノの方が恋愛スキルが高そうだと判断。


ルーナに自分の事を好きになって欲しい一心で、藁をも掴む思いでニーノに問いかけた。


するとニーノはコホンと1回咳払いをした。


「変に誤解を解こうとするのではなく、まずは兄上を男だと意識させるべきだ。って……」


「なるほど、どうやって?」


「え〜と、ピーターの時代は壁ドンで一発だったって」


ニーノの恋愛スキルが高いわけではなくピーターの言葉だと思うとホッとして笑みがこぼれた。


「兄上、ピーターが今の顔いいって!姉様にそう言う顔を見せろって。あと、やっぱり男らしさが大事」


(彼女を見守ると言うから羨ましさと敵視していた部分もあったが……)


「ピーターアドバイスありがとう。その、壁ドンって何かな?」


「えっと、壁際に姉様を追い詰めて最後にドンってするんだって」


「壁際に追い詰めて……ドン?」


(壁際に追い詰めて最後にドンと壁に身体を押せばいいのか?)


ルークは思い切り首を傾げる。

頭の中でシュミレーションをしてみたがただの粗暴者にしか思えない。


「それは男らしいと言うより女性に対して少し乱暴じゃないかな?」


「んーと、優しいだけの男はいい人で終わる可能性があるから少し強引なとこも見せたほうがいいんだって!ピーターは生きてる頃メイドさん達で取り合いされるくらいモテモテだったから任せろって言ってるよ」


「なるほど奥が深い。壁際に追い詰めたらどうすればいいのかな?それで終わり?」


「えっと、少し顔を近付けて口説く?何処かに誘ったりするんだって。それと、もう好きな気持ちを変に隠さない方がいいって。逆に好きなのっ?て悩ませなさい。って!」


ルークは頷き、自称恋愛マスターのピーターの教えを一つ一つメモに取り、ルーナに男だと意識させると誓ったのだった。






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