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「ごめんなさいルーク、うちの義姉が迷惑をかけてしまって」


ルークの腕を取り歩きながらルーナはしょぼんと俯いた。


(後でニコルにも謝らなきゃ)


「君が謝る事じゃない。でも婚約の話と言われた時は本当に驚いたよ」


「私も、あの瞬間心臓が投げられたかと思ったほど驚いたわ」


ルークがはたと足を止めルーナを見つめた。


「それは……ただ驚いただけ……かな?」


「どういう意味?」


「その、ショックとか……嫌だとか……不愉快だとかそういう気持ちがあったかどうか……し、知りたくて」


ルーナはルークが何故そんな事を知りたがるのか不思議に思ったが言いにくそうに聞いて来るので真面目に答える。


「そうね、とてもショックだったわ」


「そ、そうか、ショックだったのか。とても……そうか……」


ルークはとても綺麗な笑みを浮かべるがルーナにはサッパリ意味が分からない。

でもその顔を見ていたら理由なんてどうでも良いと思えるほど心が明るくなってルークの笑顔から目が離せなくなる。


(カイが羨ましいなぁ)


再びカイに小さな嫉妬をし、唇を尖らせる。ルーナに言わせると親友焼きもちと言うやつだ。


「あの場にカイがいなくて良かったね」


「え?ああ……いたら割り込んで来てややこしくなったかも知れないね」


目線を下げ一気に複雑そうな表情を見せたルーク。

心に広がるモヤモヤ感。


(切ないんだろうな……)


モヤモヤ感がじんとした気持ちに移り変わり、ルーナはルークに共感しているのだと思った。


(私まで切なくなってきちゃうわ)


2人揃って切なくなるのではなく元気付けようと息を吸い、ルークの下げられた目線に入り少し目線を上げ顔を覗き込む。視線が合うと笑顔で声を掛ける。


「ダンス、いつ踊るの?カイとも踊れたらいいのにね」


ルークの伏し目がちだった目は瞬時に開かれ瞳孔が大きくなり、瞳をキラキラと輝かせた。


「かっ……」


反射的だったのかルークは短く声を上げ、耳まで一気に赤く染めると不自然に辺りをキョロキョロと見回した。


(かっ?はっ、カイの事を言うなって事?よく考えたら当然だわ。私ってば良かれと思って余計な事を)


ルーナも辺りを見回すと近距離に人はおらず、ルーナとルークの周りには少し不自然に思えるほど空間が出来ていた。安堵しコッソリと囁く。


「大丈夫、私のスカートボリュームがあるから皆距離を取ってるわ。近くで聞いてた人はいないみたい。良かった」


「へ?ああ、そうだね、あのシャンデリアがとても可愛くて僕は……はぁぁ、どうしてあんなに輝くんだろうか。あぁ……すまない。心臓がドキドキして止まらないから落ち着くまで少し待ってくれないかな?」


ルーナが頷くとルークは瞳を閉じ片手で顔を覆い、小さい声で「あぁ、可愛すぎる。だめだ、落ち着け、落ち着け。ああぁ……可愛い。輝きすぎ……」と呟いている。


(突然シャンデリアに萌えたのね?久しぶりに不思議ルークを見たけど、何だか可愛く思えてきたわ……)


ルークが落ち着くまで微笑ましく見守っていたが、話がかみ合わないほど動揺しているルークを見て、もううっかり口にするのは止めようとルーナは心に誓った。


ふと会場内の音楽が止まり、威厳ある音楽が演奏され始めると一気に会場内の空気が変わる。

ワッとざわめきが起こり瞬時に静まると全員の目線が同じ方向へと向けられる。


ルークとルーナも同じように顔を向ける。王族の登場だ。


今日はカイに合わせているのかネイビーのコーデが目につく。

白い宮廷服の上に深いネイビーの布地に金糸で刺繍が入ったマントを羽織った国王陛下。

隣には白地のドレスにネイビーの花柄が入った布を肩に羽織った王妃殿下。


その後ろにネイビーと白の宮廷服を着た第1王子、第2王子が続き1番最後にキラキラモードのカイが出てきた。

今日は王女はどうやら顔を出さないのか見当たらない。


髪色が黒か深い紺色に分かれているが彫りが深く眼力が強い、エキゾチックな顔付きは家族だと良くわかる。


他国から嫁いで来た王妃殿下すら似ているから不思議だ。


国王陛下からのお言葉が終わると国王陛下と王妃殿下はすぐに2階へと上がって行く。

姿が見えなくなると華麗な音楽へと変わった。

するとルークがルーナの手を取る。


「僕と踊って貰えるだろうか?」


「はい」


ルーナとルークが大広間の真ん中にあるダンスを踊る場所に入るとサアッと空間ができた。


(ルークはさすが公爵家ね。皆が遠慮するんだわ)


ルーナは感心しながら向かい合い両手を取る。

少し緊張しているのかルークの手が震えるように大きく揺れた。


(なんだか私も緊張するわ。手汗かかなきゃいいけど)


初めてパーティーで男性とダンスを踊るのだ。

ルーナは緊張しすぎて手をギュッと数度握り直した。


演奏されている華麗で軽やかな曲は男性の肩に手を回し身体を近付けて踊るタイプではなく、両手を握り身体は離してお互いの顔を見ながら踊るタイプの曲だ。


近過ぎない分顔がよく見える。

目が合い、照れくさくて微笑むとルークも微笑んだ。


時には繋ぐ手が片手になり、くるくると回る。両手繋ぎに戻ると微笑み合ったまま視線がぶつかる。


心も音楽に合わせて一緒に踊っているみたいに、ころころと転がってとてもくすぐったい。

ルーナは喜びの気持ちで心が満たされ微笑みから大きな笑顔になった。


ルークもつられたように満面の笑みを見せるとルーナは思わず見惚れ、最後のフィニッシュのステップで躓いてしまった。


前のめりになるとルークが胸で受け止め支えてくれた。


細いのに意外としっかりした胸板。

香水をつけているのか、爽やかなのに甘くほんのり色気を感じさせる香りが鼻孔をくすぐる。


身体がボッと燃えたように熱くなり、ルーナはすぐに反応出来なかった。

恥ずかしさから目線を下げ、ゆっくり身体を離して謝る。


「ごめんなさい。支えてくれてありがとう」


「あっ……ああ……」


ルーナは目線を下げたままルークに向かい最後の挨拶をするとすぐ近くからカイの声が聞こえてきた。


「おいおい、真っ赤だぞ」


(やっぱり赤いよね?恥ずかしい。前世のいつぶりだろう。男の人の胸板にドキっとするなんて)


はぁと息を吐いて顔をポンポンと軽く両手ではたく。


「なんだろーなー、頭じゃ分かってんだけどなーやっぱなんか面白くないんだよねー。ルーナ、俺とも踊ろうぜ」


下げている目線の先にカイの手が差し出されると華麗だが少し厚めの音楽へと演奏が変わった。


(これは肩に手を回すタイプの音楽ね。カイ相手なら緊張しないし大丈夫。踊ってるうちに頬の赤みも消えるでしょ)


ルーナがカイの手を取ろうとすると先にルークがカイの手を取った。


(あ……)


ルーナの心はきゅうっと締め付けられる。


(ルークもカイと踊りたいんだわ)


思った瞬間、更に心が強く締め付けられる。

顔を上げると赤く染まったルークの顔。ルーナはゴクッと唾を飲み口を開いた。


「ね、このままバルコニーに行って3人で踊らない?」

「いいね」


ルークが光の速さで答えた。

ルーナは自分の判断が正しかったと、ルークの為になったんだと嬉しくなった。


カイが「ああっ」と声を出すので顔を見ると眉を下げとても困ったような顔をしている。


「どうしたの?」


「いや…………うん、俺的には面白いからこのままでいいのかもしれない。バルコニー行こうぜ」


3人でバルコニーに移動してライトアップされた庭園を眺める。


手入れされた庭木が並び、花壇には薔薇が咲き誇り中心にある白い噴水は光を浴びて浮き上がっているように見える。空は星が瞬き、まんまる月が見守っている。


「とても素敵な夜だわ」


「ああ、君とこの景色を見られて嬉しいよ」


うっとりとルーナが零すとルークが柔らかい声で答える。と、すかさずカイが口を開く。


「だな、俺もお前と見られて嬉しいよ」


ルーナがカイに目を向けるとニコニコと嬉しそうに目を細めている。


(バルコニーに来て良かったわ)


軽やかな音楽が聞こえて来ると3人で手を繋ぎ輪になって回り踊る。


ルーナはとても楽しい気分になり声を出して笑うとルークもカイも声を出して笑った。

曲が終わっても興奮冷めやらぬルーナは声を上げる。


「お姉ちゃんとニコルとも踊りたいわ!」


バルコニーならば人目を気にする事もなく踊れる。

スッカリ気分を良くしたルーナはバルコニー近くにいたノーラとニコルを呼んだ。


ルークとカイが優しげな笑顔で見守る中、ルーナはノーラとニコルと手を繋ぎ3人で輪になり踊る。


唯一ニーノがいない事が悔やまれるが、ダンスフロアと化したバルコニーは暫く皆の笑い声が絶える事はなかった。





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