5話 魔人王対小鬼王
出来るだけ早い更新ができるように頑張ります。
「うおらぁぁ!!」
グレンは小鬼王に向かって大きく飛んだ。
愛用の武器、魂魄喰鎌を空中で力強く振りかぶり
一撃必殺の勢いをもって振り下ろす…!!
―ガギィィィィィィン!!!バゴォ!
小鬼王と自ら宣言した緑色に尖った目、体躯の大きなゴブリンは禍々しい姿の戦斧を手に持ち受け止めた。
グレンの一撃は魔人の王の名に恥じない凄まじい威力の攻撃だった。
小鬼王の足を地面にめり込ませ、罅割れを起こすほどの破壊力。
だが緑色の醜い顔は涼しい表情をしている。
小鬼王は戦斧でグレンを魂魄喰鎌ごとはじき、グレンはその勢いを利用して宙返りをし地面に降り立ち、距離をとる。
「ハッ!やるじゃねぇか!」
「ゲッゲッゲッゲッゲ…魔族でも最弱の魔人の攻撃など造作もないわ…」
お互いの表情に笑みが浮かぶ。
小鬼王は蔑み、下卑た表情で。
グレンは強敵に出会えたことを喜ぶように。
他のゴブリン達はグレンを逃がさないようにと2人の戦いを中心にして包囲している。
2人は武器を構え、じっと睨み合っている。
緊張感が渦巻いていた。
ヒュッ!
10時の方向からグレンを目掛け1本の矢が飛んでくる。
それを合図に小鬼王が一気に飛び込んできた
大きな体格に見合わないスピードで猛烈な勢いだ。
グレンは矢を左手で叩き落としながら右手1本で魂魄喰鎌を握り小鬼王の戦斧を迎撃する
3合程打ち合うとお互いの柄同士がぶつかり、鍔迫り合いのような状況になる。
体の大きな小鬼王は上からジリジリとグレンを押し込む。
グレンは少しずつ膝を落としていくが次の瞬間―
ズゴン!!
グレンは小鬼王の力を受け流し、小鬼王の戦斧の刃が地面を抉る。
回転して瞬時に体を入れ替え振り向きざま魂魄喰鎌を振りぬいた。
「こざかしいわぁ…!!」
小鬼王が戦斧から手を放し、右手の甲で魂魄喰鎌の刃を下から上に弾く。
弾かれて無防備になったグレンの腹部目掛けて小鬼王の左拳が迫る
ドバン!!!
拳から猛烈な空気を破るが鳴る
グレンは回避するが、右脇をわずかに拳が掠る
掠ったポイントからグレンの全身に衝撃波のような波が伝わるがグレンは止まらない。
一歩前に出て左肘を小鬼王の眉間に叩きつけた。
「グゥ!!」
小鬼王は顔を抑え呻き声を上げながら左手で戦斧を持ち、大きく振り回すと後ろへ飛ぶ。
「火炎弾!」
グレンにお追撃の炎が3発、グレンの右掌から放たれる
1発、2発と小鬼王は弾くが3発目は対応が遅れ、顔面に直撃した。
「いいねぇ、小鬼王。―あぁ、悪くない。
大した魔力も感じねぇからコモノかと思ったんだが…お前は肉体派か。」
口元を拭いながらグレンは不敵に言葉を放つ。
掠った拳のダメージの影響か少し口から血が垂れていた。
「キェーッヒャッヒャッヒャ、笑わせおる。
貴様も軟弱魔族にしてはなかなかではないか、誉めてやろう。
じゃが…我に目をつけられたこと…相手が悪かったと思え。」
顔面に火炎弾が直撃した小鬼王は少し顔に火傷した程度でダメージというダメージは無いようだ
一進一退の攻防。
2人の実力は拮抗…しているようにも見える
「おい、小鬼王。ここに拠点を作った目的はなんだ。」
グレンは問いかける
「つまらん事を聞くものだ。貴様達魔人共を蹂躙し、凌辱し、喰らい尽くし、我らの力とする為よ。
「それだけか?」
グレンには気にかかることがあった。
小鬼王達の拠点となった森は魔人族の国の中でも首都からほど近い距離にある。
魔人族の国は魔大陸でも奥地に存在し、さらに奥、国境から離れた地点に首都を置いている。
他種魔族と比べ力が劣る魔人族が他魔族に侵攻された際、対応する為の時間を少しでも稼ぐためだ。
国境から首都まで他国の侵攻や魔物の発生に至るまで、どんな小さなことでも即座に伝達される。
さらに首都の近辺は治安維持の為に常時警備隊が周回し、魔物が発生した場合は即座に殲滅へ動く。
そのため小鬼王の様な力を持った魔物が現れるまで放置されることはまずない。
(―ゴブリンの群れから王が誕生する程の時間は経っていない。
何か目的があってこいつらが現れた…むしろ送り込まれた、と考えるほうが自然だろうさ)
小鬼王はにたぁっと醜く相好を崩す
「他に何があろうか!貴様を屠り、この地をわが同胞の繁殖場とする。
魔人の孕み袋からはひ弱な人間に比べ力のある同胞が産まれやすいからのう…
我がゴブリン属の最強王国を築き、あの小生意気な犬っころに吠え面をかかせてやるわ…!!」
「犬っころ…ね」
(なぜゴブリン共の大型の拠点が突然現れたのか引っかかっていたが…そういうことか)
グレンは得心がいったようにニヤリと笑う。
「なるほどなるほど。まぁ大体分かった。
ゴブリン程度で最強王国とは笑っちまうけどな。そろそろ遊びは終わりにしようか。」
グレンの体から炎の様な陽炎がユラユラと立ち昇り、強烈な殺気を含んだ風が彼を中心に吹き荒れた。
風を浴びたゴブリン達が次から次に倒れていく。
瞬く間に2人だけになった。
小鬼王は驚きの表情をしている
「貴様…我が同胞に…何を…」
「何もしてないぜ?お前さんが貧弱と言っていた魔人の殺気に当てられてバタバタ死んじまっただけなようさ。
この程度の配下しか持たず…最強王国なんて笑わせてくれるな」
「許さん…許さんぞ…この魔人のクソガキがぁぁあぁぁあ!!」
小鬼王の体が大きく膨らみむ
「我…は…ワ…レ…ワ…!!!ゴブリンノ…オォォォォグオアァァアアア!!!」
咆哮と共に小鬼王の体が禍々しい異形へと変化した。
小鬼王の体からはどす黒い瘴気―魔物が持っている、負の力を持つエネルギーのようなもの―が溢れ出し、足元の植物を枯らしていく。、
「フシュー…フシュー」
小鬼王の瞳には理性の光はなく、口からは泡を吹いている。
右手に戦斧を持ちドスドスドスと走り出す。
戦斧は瘴気の影響を受け以前よりも遥かに強大に、恐怖を感じるデザインへと変貌していた。
斧頭には猫の目の様な宝玉がはめ込まれており、瘴気を吸収しているように見える。
「ガァァァァァァ!!」
無造作に戦斧をグレンに向けて振り下ろす。
戦斧の刃には黒い瘴気が纏わりついていた。
強化された小鬼王から放たれるそれは、触れるもの全てを一刀両断し、叩き潰す勢いがあった。
バゴォォォォォォ!!!!
戦斧が触れると爆発したかのように地面が抉れた。
あたかも隕石の衝突のような衝撃だ。
掠りでもしたらどれだけのダメージを受けるかわからない。
直撃したら…肉体なんて粉々に吹き飛んでしまうだろう。
―だが、グレンはそんな攻撃をいとも簡単に回避する。
「ハッ、なかなかの圧力だが…当たらないと意味ないだろ!」
上空へと避けていたグレンは、落下の勢いに任せ小鬼王の頭を上から下に魂魄喰鎌の尻でぶん殴る。
小鬼王は前のめりになり、前に2、3歩ふらつく。
グレンは懐に潜り込むと石突で鳩尾を1発、下がった顎を掌底で下から上に突きあげる
のけぞったところに、炎を纏わせた後ろ回し蹴りを放つ。
「おらぁ!!!」
小鬼王の大きな体が重力に逆らうかのように後ろへ吹き飛ぶ。
地面に2度、3度叩きつけられ、木々を圧し折りながら森の奥へと飛ばされていった。
グレンはすぐに小鬼王の飛ばされた先へと向かう。
「グゥヌオアァアア…」
激しく飛ばされ、森の奥の岩壁に大きな体の痕を残しながら小鬼王は倒れたが、戦斧を支えに立ち上がろうとしている
グレンが追いつき、穏やかだが凍てつく声をかける。
「さて…最後に言い残すことはあるか?小鬼共の王さんよ」
「グ…ガ…」
口から血が流れ言葉が出ない
瞳には呪いを込めたような、憎悪の光が宿っている。
グレンは左手から黒と赤の炎が溢れ出す。
竜の様な姿を形づくり体に纏わりつく。
「土産にお前のことはしっかりと灰にしてやるから安心しな」
魂魄喰鎌を構えると、竜の形をした炎が魂魄喰鎌の刃に吸収され妖しい輝きを放つ。
そして―
「獄炎乃竜」
魂魄喰鎌を振り下ろすと、5つの竜の形をした炎が小鬼王を襲う。
四方を囲まれた小鬼王は必至で振り払おうとするが、4つの竜の咢に飲み込まれる。
さらに、上空に舞い上がった炎の竜が一直線に燃え上がる小鬼王へ向けて降下する
竜の咢に飲み込まれた小鬼王を中心に突風が巻き起こる
「ヴォオオオオォォォォ…」
小鬼王の断末魔の咆哮が岩壁に木霊する。
「…ゆっくり休め」
炎が消え去った後には…小鬼王の塵すら残っていなかった。