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4話 ゴブリン討伐戦②


「うおらぁぁ!!」


グレンさんは雄たけびを上げて小鬼王へと向かっていった。

その背中は心なしか楽しそうな感じがする。



「くそったれ!グレンのやつ…全部片付いたらぶん殴ってやる…!」


ブラウさんはブツブツ文句を言いながら迫ってくるゴブリン達を次から次に片付けている。


飛び掛かってくるゴブリンを下から上に切り上げ、四方を囲むように迫るゴブリンを回転しながら薙ぐ。

飛んでくる矢をゴブリンの死体を盾に防ぎ、そのまま右へ刺突を繰りだし返す刃でゴブリンの体を切り裂くと…

勢いそのままに反対側のゴブリンを袈裟切りにする。

瞬く間に周辺はゴブリンの血だまりができ、死体が積みあがっていく。

グレンさんと対等に会話をし、討伐隊の隊長に選ばれるだけの力を持っていることを存分に証明していた。


そんな緊迫感あふれる戦闘の中…僕はというと…



「く…うわぁ!近寄るなぁ!!!!」



ブラウさんから出来るだけ離れないように気を付けながら慣れない短剣を振り回し、必死でゴブリンの攻撃から逃げ回っていた。

目の前に現れるゴブリンの攻撃は短剣で受け止めたり、避けたりと必死の思いで対処し、矢や魔法で攻撃される度ブラウさんが剣と魔法で撃ち落とし助けてくれていた。


(本当に凄い…逃げ回るだけの僕を守ってくれながら…あれだけの数で襲ってくるゴブリンに一歩も引けを取ってない…)


一気に押し潰せる思ったのだろう、勢いよく迫ってきたゴブリン達の攻勢が少し弱まった。


少しホッと立ち止まった瞬間、右足を誰かに掴まれた。

見ると、上半身のみになりながらもまだ息のあるゴブリンが僕の右足を掴んでいた。

左足でゴブリンの頭を蹴ったり、振りほどこうとするが思ったより力が強くほどけない。

マズイと思った瞬間、目の前に複数の炎の塊が迫ってきた



 ―しまった…!



風盾(ウインドシールド)!!」



 ―ドゥウン!!



僕の周りを空気の層みたいなものが一瞬で囲むと、炎の塊を瞬時に散らした



「ぼーっとするな!!螺旋風(ウインドスパイラル)!」



ブラウさんが僕を足を掴んでいたゴブリンを蹴飛ばし、魔法を使って切り刻む。



「ハァ…ハァ…あ…ありがとうございます…」



息を切らしながらブラウさんに声をかける



「ふん。そんなことはいい。だが…お前も少しくらい数を減らしたらどうだ」



「む…無理ですよ…剣を振ったことなんてないのに…」



刃物は料理で魚を捌くときくらいしか使ったことない。

逃げている最中も短剣を振り回していたが威嚇にしかならず、まともに当たることはなかった

動いてる物体を相手に使ったことのない剣を振って当てるというのは難しい…


襲われているとはいえ生き物を殺す勇気も僕にはなかった。



「ちっ、使えんやつだ。俺一人であればこの数でも片づけるのは全く問題はないのだが…

足手纏いがいる現状では少し分が悪いか…グレンの奴、さっさと片づけて手伝いやがれ」



苦虫を噛みつぶしたような表情でブラウさんは呟く。

少し離れた場所ではグレンさんと小鬼王が激しく争っている。


小ゴブリンの数はだいぶ減ったように見えるが大勢はそんなに変わっていない。

まだ3メートル級の大きなゴブリンや、遠距離攻撃が可能なゴブリン達は相当数が残っている。

ブラウさんの強さを見て力押しで悪戯に消耗するのを避けたのか、ゴブリン達は少し距離を取って僕たちの様子を見ている。



「さて…どうするか。せめてあと一人居ればさっさと終わらせることも可能なのだが…」



「グワァオォオー!!!」

「グォォオオオオオ!!」

「ギャウォオオオ!!」


大型ゴブリンがほぼ同時に大きな叫び声を上げた


小鬼戦士(ゴブリンウォーリア)…3体か…これは少し手間取りそうだ」


3メートル級の大きさ、筋肉質な肉体のゴブリンは、ウォーリアと呼ばれ、その怪力と体躯に似合わぬ俊敏さでなかなか面倒な相手だとブラウさんは言う。



 ―ドギャ!!!バギャ!!


何かが飛んできて、視界の隅で弾けた。

そちらを見遣ると緑色の肉塊が飛び散っている


小鬼戦士が、近くにいた小さなゴブリンをこちらに向かって投げたのだ。

砲弾のようにゴブリンが飛んでくる


「チィっ!小僧!!こっちだ暴れるなよ!!」


「わ!?」


ブラウさんは僕をヒョイっと肩に担ぎ、飛んでくるゴブリンを避ける。

次々とゴブリン砲弾が降り注ぎ、地面はえぐれ、打ち付けられたゴブリン達は無惨にもバラバラに砕け散る

1体の小鬼戦士が棍棒を振り回し、叩き潰そうとするがギリギリのところで躱していく。


僕を抱えながらブラウさんは右は左へ上手く逃れていたが一瞬、血溜まりに足を取られバランスを崩した。

急接近してきた小鬼戦士がここぞとばかりに岩の塊のような棍棒をフルスイングし、強烈にヒットした。


「がっ!!!」


僕達は大きく弾き飛ばされ、まるで水切りをした石のように地面の上を飛び跳ね、大木に激突し、滑り落ちるようにその場に座り込む。

大木はその時の威力で大きく幹がえぐれてしまっていた。


担がれていた僕の視界は瞬く間に360度以上変化し、少し目が回る。


(ッツゥ…くっ…)


右足首に激痛が走る。地面を飛び跳ねた際に右の足首をひねったようで力が入らない。


―でも…あれだけのハードヒットをしたわりに体の痛みが少ない気がする…



「おい、無事か?無事なら早くどけ」



(…え!?)



背中から不意に声が聞こえ、振り返ると…

ボロボロになったブラウさんが僕と大木の間に挟まっていた。

頭からは血が流れている。


「ブ、ブラウさん!!まさか僕が地面に叩きつけられないように…庇ってくれたんですか!?」



慌てて体をどけた。ブラウさんの鎧は壊れ、インナーまでもボロボロで血だらけになっていた。



「ふん。お前みたいな人間があの衝撃には耐えられんだろう。」



そう言って直剣を杖代わりにグッと立ち上がる。

何事もなかったかのように振舞ってはいるが今の一撃でかなりのダメージを負っているように見える。

その証拠に、左腕は力感なくだらっとしている。



「ギャッギャッギャッギャ」


下卑た笑顔を浮かべながら愉快そうにのっしのしと3体の小鬼戦士が歩いて向かってくる。

どう甚振ってやろうか…なんて考えているのかもしれない。


その顔をみたブラウさんは不敵に笑う。


「丁度いい位置だ。お前はそのままそこに居ろ。」



そう言われて気が付いた。

小鬼戦士に吹き飛ばされてしまったが、その時の衝撃で包囲網の一部を突き破っていた。

四方を囲まれた状態だったのだが、背後に敵が居なくなり、前だけに集中できる状態になっている。



「…魔人を舐めるなよ…」



小鬼戦士の左右に散らばっていた小ゴブリン達もわらわらと集まっている

ブラウさんは強烈な殺気を放ちながら右腕に紫色の直剣をだらりとさげ、ゆっくりと小鬼戦士に向かって歩く。

体からは紫色と緑色のオーラのようなものが陽炎のように湧き出ている



「ハァァァアアアアア!!」



ブラウさんを中心に突風が巻き起こる。紫色と緑色のオーラが風に乗り、奔流となって下から上へ、竜巻のように突き上がる。

ゴブリン達は異変を察知し攻撃を仕掛けるが突風に弾かれ、弓は叩き落され、魔法はかき消された。


竜巻のようだったオーラはブラウさんの剣に一気に収縮、吸収され、紫色と緑のオーラの軌跡を纏っている。



「ゴブリン共、死ぬ前に目に焼き付けておけ。お前たちを葬り去る力を」



左足を一歩引き、やや前屈みになり剣を構える。



魔刃嵐(ケイモーンノテロス)!!」 



―バシュン―



一筋の光が横に走り、遅れて暴風がゴブリン達を襲い風の刃が縦横無尽に切り刻む。


目の前のゴブリン達は一瞬で殲滅された。

残っているゴブリンは残り少ないが、この光景を見てゴブリン達は明らかに怯えていた。



「やれやれ。こんな小物にこれだけ付き合うことになるとは」



左腕怪我をして満足に動かせないにも関わらず…こんなに破壊力のある技を持っているなんて…

この人…本当に凄いんだ…。僕は呆気にとられていた。

僕をずっと守ってくれて、そしてダメージを最小限に抑えることまで考えてくれたブラウさんに感謝と憧れの気持ちが湧く。



(僕は…こんな風に強くなれるんだろうか…?)



ブラウさんは怯える残りのゴブリン達を一掃しようとそちらへ足を向けるが…



「ゴァオアギャァァァア!!」



叫び声と共にゴブリンの死体の中から1体の小鬼戦士が飛び出した。

片腕は落ち、顔も半分が抉れているが、どうやら他の小鬼戦士やゴブリンを盾にしたのだろう

かろうじて生きている。そして、最後の力を振り絞った一撃がブラウさん背後から襲う。


涼しい顔をしているがやはりダメージが蓄積されていたのかブラウさんの反応が一瞬遅れた



「ブラウさん!!!危ない!!」



僕がそう叫んだその時―



氷結牢(アイシクルプリズン)!!」



透き通った女性の声が響き渡り…

小鬼戦士がまるで氷山のように凍り付き、ひび割れて砕けた。



「あらあら、随分手こずったのね、ブラウ。だいぶ鈍ってるんじゃないの?」



艶やかで、人の心を蕩けさせるような声が響く。

砕けた氷の向こうには金髪でで輝く様な金色の目をした

グラマラスな体系に凛とした美しさを持った女性が立っていた。



「エリアナか…いつから居た?」


「そうね~、貴方達が殴られちゃうちょっと前くらいかしら?」



エリアナと呼ばれた女性は口元に手を当てながらフフっと笑いながら答えた。



「…ちっ。相変わらず趣味が悪いな…砦が片付いたのであれば何故すぐ合流しなかった」


「あら、こちらも小鬼術士(シャーマン)がたっくさん出てきてちょっと大変だったのよぉ。ちょっとくらいは休憩しないとねっ」


ブラウさんが苦々しい顔でエリアナさんに詰め寄るのをエリアナさんは唇に人差し指をあててブラウさんにウインクをしてごまかしていた。

とってもお茶目な感じで僕は遠目から見てただけだけど…ドキッとした。


「まぁいい。ひとまず全員合流したようだな。掃討はあいつらに任せるか…」


「まぁっ。ブラウにしては珍しい発言ね!いつも俺が片づける!なんて張り切ってるのに~。さっ、怪我見せてね」



―ズズン…ゴゥ!!―



爆音とともに地面が揺れ、森の中から強い風が噴き出る。



「どうやらあっちも終わったようだな。」


「ええ。」


ブラウさんとエリアナさんと僕は風が噴き出てくる場所をじっと見つめる。



ゴブリン達との闘いはようやく終わるようだ。



正直主人公がすごくダメ男になってきてます。この子、ちゃんと成長してくれるのかな?と不安になってきました。

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