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プロローグ


ーーある日私クローディアは自分がとある恋愛小説の中の登場人物だということに気付きました。


 目を開けて最初に目に入ってきたのは手作りのカボチャのパイ。

顔を上げると向かいの席には青い髪をした色白の男が紅茶を飲んでいた。

 細くて長い角ばった指に大きな手のひらが印象的。彫りの深い顔をしたイケメン……。


  ガシャンッ……


 私が手に持っていたティーカップが床に落ちて、割れた。

 しかし昼間なのにうす暗い屋敷の中 駆け付けて掃除をしてくれるような使用人も居らず、カップに入っていた紅茶が床の上でただ広がっていくだけ。


「ーーどうした?大丈夫か?」


  さっきまで無言で食事をしていたこの屋敷の主人であるオスワルドが私を見つめている。

  私は慌てて床に落ちたカップを拾って、とりあえず近くにあった布で床を拭った。

 頭から血の気が引いていく。


  『孤独な暗黒伯爵と闇に堕ちたガーベラ』というタイトルのティーンエイジャーの女の子たちに人気だったライトノベル恋愛小説。

  私は山川 有加という名前で、日本という国で中小企業の平凡なOLをしていた、はず。ああ、フラッシュバックのように色んな記憶が蘇ってくる。

 例の恋愛小説も書店で売られていて、なんとなく手にして読んだんだ。

  学生時代はこんな甘々なライトノベルをよく読んだっけ……って懐かしい気分で、ところが華やかな漫画の絵柄の表紙とは裏腹にメロドラマのようにドロドロで陰鬱なストーリー、ヒーローであるオスワルド伯爵は所謂ヤンデレ属性でかなり病んでる。

  鬱展開の末、ヒロインはヒーローに殺されメリーバッドエンド。

 ああ、そうだ、その本を読んだ数日後に事故に遭って死んだんだっけ……。


  つい数分前までクローディアという女性の意識だけだったのに、そこに有加という人格が降りて来たような感覚だ。


  クローディアはヒーローの前妻、本の中では名前が数回出てくる程度のモブ。

 ヒーローであるオスワルドはクローディアの前にも結婚していた相手がいた。いやその前にも恋人がいた。

  オスワルドの幼馴染で初恋の相手マーガレット、素朴で可愛らしい雰囲気の平民の子。恋仲になるが身分違いの為オスワルドの親によって引き裂かれる。なんとか親の持ち出した条件をクリアして彼女を迎えに行くが、彼女は既に他の平民男性と家庭を持ち妊娠していて幸せに暮らしていた。

  失意の中、親の決めた許嫁ロゼッタと結婚したオスワルド。

  結婚当初いい感じになり失恋の痛手も癒えていくが、妻は尻の軽い感じの令嬢で罪の意識もなく平然と他の貴族男性と二股していた。彼女は口論になり揉み合っている最中、階段から落ちて事故死。だが、彼が殺したのではないか?と一部では噂になっている。


  そして後妻が私クローディア。

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