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娘は男子を水着で魅了したい

……………………


 ──娘は男子を水着で魅了したい



 翌朝。


「ふわあ。おはよ、サンドラ」


「おはよう、クラリッサちゃん!」


 眠たげな様子のクラリッサにやけに肌の潤いがいいサンドラが応える。


「ふにゃあ。おはようございます、クラリッサさん」


「おはよ、フィオナ。それじゃあ、朝の支度を整えよっか」


 クラリッサは寝間着を脱いで、今日のために準備したアウトドア用の服に着替えると、顔を洗ったり、歯を磨いたりして朝の支度を整えた。


「おはようございます、お嬢様。今日は快晴でキャンプ日和でありますよ!」


「おはよ、シャロン。うんうん。今日は晴れてよかった」


 別荘の窓からは青空が窺える。今日は天気も良く、気温もほどほどでいいキャンプ日和だ。これならば川も穏やかであることだろう。釣り日和でもあるはずだ。


「おはよう、クラリッサ、シャロンさん。朝飯の準備ができてるから食おうぜ」


「おう、朝飯だ」


 そして、部屋から実に眠たそうな顔をしたフェリクスが出てきて告げるのに、クラリッサが頷いて返した。


「でも、どうしてそんなに眠たそうなの、フェリクス」


「姉貴のせい。姉貴がトイレだとかなんだとかでたびたび俺を起こすんだよ。10歳から別の部屋で寝てて被害を免れていたんだが、今回は同じ部屋だったからな……」


「苦労してるね」


 フェリクスが忌々し気に語るのにクラリッサは同情して見せた。


「おはよーございますう! 今日はよく晴れちゃいましたねえ。雨に打たれながら必死にテントを張るというのもなかなか興味があったのですが」


「私は全く興味ない」


 ヘザーが当たり前のようにそう告げるのに、クラリッサが静かに首を横に振った。


「クラリッサちゃん! 気合入った格好してるね!」


「ウィレミナも。それもお下がり?」


「そ。兄貴のお下がり。丈夫だからそう簡単には破れたりしないはずだよ」


 ウィレミナもアウトドアな服装をしていた。


 それぞれの服装はクラリッサ、ウィレミナ、サンドラ、フェリクスがアウトドアルック。フィオナは動きやすいが上品な服装。ヘザーはほぼ普段着。シャロンは夏用の執事服である。トゥルーデはといえば……。


「ああん! お姉ちゃんを置いていかないで、フェリちゃん! お姉ちゃんの服の感想を言ってもらおうと思ってたのに!」


 トゥルーデはフィオナと同系統だ。動きやすいが、お上品。白を基調にしており、ノースリーブの上着に、丈の短いスカート。


「姉貴は何着ても姉貴だ。変わらん」


「変わらぬ愛ってことね!」


「……はあ」


 フェリクスはもうため息しか出ないぞ。


「とにかく、朝飯だ。食ったら今日の予定確認」


「フェリちゃんが冷たい! 他の女の臭いがするわ!」


「しねーよ」


 フェリクスはただ相手にするのが面倒なだけなのだ。


 今日の朝食はトーストとベーコンエッグ、それからベイクドビーンズだ。


「今日はまず釣りと行きたいところだが、女子は女子でやりたいことがあるんだろ?」


「うん。釣りもいいけど、水着も披露したい。私の色気でいちころ?」


「冗談も休み休み言え。まあ、川遊びをするならそっちからにしよう。地図を見てきたが下流の方で、いい場所がある。そこで1時間ほど遊んだら釣りだ。あくまでメインイベントは釣りだぞ。釣らなきゃ昼飯はねーからな」


「頑張って釣ってね、フェリクス」


「まあ、俺に任せとけ」


 ここぞとばかりにどや顔を披露するフェリクスであった。


「あたしは釣り具はないから釣りはできないよ?」


「そんなこともあろうかと余計に釣り具を持ってきてある。全員分はないが使ってくれ。餌釣りもできるようにしてあるからな」


 ウィレミナが困ったように告げるのにフェリクスがそう告げた。よほど今日の釣りを楽しみにしていたようである。


「流石はフェリクス君だ! ありがたく使わせてもらうよ!」


 ウィレミナもちょっと楽しみにしていたらしい。


「ちなみに釣り針をひっかけられるサービスはおいくらで?」


「5万ドゥカート」


 ヘザーもワクワクした様子で尋ねるのにクラリッサが告げた。


「釣り針は刺さると抜けにくくなってるからやめろ。大人しく釣りの時間は釣りだ」


 フェリクスは不快そうにそう告げた。楽しい思い出をヘザーのような性癖異常者によってかき乱されたくはないらしい。もっともだ。


「その服から水着に着替えたり、水着から下着に着替えたりするのに場所がいるだろう。テントを準備するから使ってくれ。俺は水遊びは卒業したから必要ない」


「ええー。フェリクス君も一緒に遊ぼうよ」


「いいや。俺はもうそういうのは卒業した。それに──」


 フェリクスの視線がトゥルーデに向けられる。


「不純異性交遊……」


「これがいるからな……」


 トゥルーデは拗ねたような顔をしてフェリクスを睨んでいた。


「じゃあ、あたしたちは水遊びを張り切らせてもらおう。沢の水、綺麗だといいな」


「綺麗だと釣りも楽しくなるな。泳いでいる魚が見えるからな」


 ウィレミナが張り切るのに、フェリクスも楽しそうにそう告げた。


「さて、では荷物を抱えて水遊びと釣りに行くとしよう。荷物持ちは俺と使用人でやるから、お前らは着替えだけ持って行ってくれ。今晩の夕食の材料もばっちり持っていくからな。俺がいないと困ることになるぞ」


「首輪をつけておこう」


「お前は鬼か」


 クラリッサがさらりと告げるのに、フェリクスが突っ込んだ。


 さあ、いよいよアルビオン王国の自然と戯れるときがやってきた。


……………………


……………………


「水、凄い綺麗だよ!」


「本当ですわ! 素敵ですわね!」


 興奮した様子でサンドラが告げるのにフィオナが応じる。


 フェリクスが地図で選んでいた川は上流に位置し、極めて綺麗な水が流れていた。


「悪くないな」


「ばっちりだ」


 フェリクスとクラリッサがそう告げ合った。


 一通り辺りを散策したクラリッサたちはフェリクスと使用人の設営したテントに入り、水着に着替える。ここでお互いの下着や水着をチェックするのが女子の世界。ここでお洒落なものを身に着けているとステータスアップだ。


「クラリッサちゃん。水着、可愛いね」


「そう? セクシーなのを選んだつもりなだけど」


「セクシーかー」


 クラリッサの水着はツーピースのビキニで、スタイルのいいクラリッサが着ていると様になるが、セクシーというにはまだまだ体の起伏が足りない。


「それにしてもだよ」


 クラリッサがジト目でサンドラを見る。


「サンドラ、着やせするタイプだったんだね。そんなに立派なものをお持ちとは思わなかったよ。裏切られた気分だ」


「そ、そんなつもりはないよ?」


 この中で一番胸があるのはサンドラだった。次点がフィオナである。3位辺りにクラリッサがラインクイン。4位にヘザー。ウィレミナはまだまだぺったんこだ。


 トゥルーデはまだ来てないので分からない。


「お待たせ!」


 全員が着替え終わったころにトゥルーデが飛び込んできた。


「トゥルーデ。急いで着替えないと」


「そんなこともあろうかとトゥルーデは最初から水着を下に着ているんです!」


 そう告げてトゥルーデは衣服を脱ぐと、これまた大胆なビキニ姿に。


「これでフェリちゃんの心を鷲掴みよ!」


「おー」


 トゥルーデはクラリッサの次くらいには胸があった。ヘザー5位に転落。


「けど、サンドラちゃん。それはいただけないわ。フェリちゃんを誘惑するつもりね? フェリちゃんに色目を使うのはトゥルーデが許しませんよ」


「使いませんよ……」


 全方位攻撃姿勢のトゥルーデある。


「お嬢様方、準備はできたでありますか?」


 そう告げてテントの入り口を開いたのはシャロンだった。


 彼女は既に水着姿だった。飾り気のないスポーティなワンピース型の水着の上にラッシュガードを羽織っている。


 そして、胸が大きい。流石は大人の女性。いつもの執事服ではごまかされていたが、水着姿になるとはっきりとその胸のふくらみが分かる。クラリッサたちが逆立ちしても敵う相手ではないので、クラリッサは考えないことにした。時にはあきらめも肝心だ。


「日焼け止め塗ったら出来上がり」


「そうでありますか。お手伝いできることがあったらお手伝いするであります」


 そう告げてシャロンが頷く。


「シャロンは大丈夫なの? 義手の防水とか」


「ええ。ばっちりであります。これは多少水が入ったぐらいじゃ、壊れない代物でありますよ。心配しないでほしいであります」


 シャロンの義手は革と金属でできているようだが、それも防水加工らしい。


「なら、日焼け止めを塗ってもらおうかな。シャロン、背中にお願い」


「了解であります」


 クラリッサが日焼け止めを手渡すのに、シャロンがそれをクラリッサの背中に広げて、塗り込んでいく。ぬりぬりぬりぬり。


「天使の君。君は塗らなくて大丈夫?」


「背中は大丈夫ですわ。シャロンさんと同じようにラッシュガードを纏いますので」


 フィオナもラッシュガード装備だ。


「ウィレミナは?」


「私は日焼け気にしない。それよりサンドラに塗ってあげなよ」


 ウィレミナはそう告げてサンドラを指さす。


「サンドラ。塗ったげようか?」


「うん。お願い、クラリッサちゃん」


 クラリッサが尋ねるのに、サンドラがそう告げて返した。


「サンドラの肌は白いからね。涼しくても夏の日差しを迂闊に浴び続けると肌が焼けて痛くなっちゃう。しっかり塗っておこう」


 クラリッサはそう告げてぬりぬりぬりぬりと日焼け止めを塗っていく。


「はい、出来上がり。これで全員準備完了?」


「準備完了ー!」


 トゥルーデとヘザーは互いに日焼け止めを塗り合っており、準備は万端だ。


「では、いざ出陣」


 クラリッサは先頭を切って、テントから飛び出した。


「えらく遅かったな」


 テントの外の川辺ではフェリクスが退屈そうにしていた。


「どうだい、フェリクス。私たちの水着もいいものだろう?」


「んなことかよ。全然どうでもいい。お子様の水着はお子様でしかない」


「同い年じゃん」


「だから、俺は年上が──」


 クラリッサの言葉にフェリクスが首を振ろうとしたときだ。


「今日は本当にいい天気でありますね」


 シャロンが登場。


 先ほど述べたが、シャロンの胸のサイズは特盛級である。とても大きい。


 そんなシャロンの胸にフェリクスの視線が釘付けになった。


「フェリクスのスケベ」


「い、いや、そういうつもりで見ていたわけじゃなくてだな……」


「じゃあ、どういうつもりでシャロンの胸をガン見していたの?」


「……このことは内密に頼めるか」


「君の誠意しだいだね」


 クラリッサに問い詰められるのに、フェリクスは白旗を上げた。


「金か?」


「いやいや。ビジネスパートナーから強請ったりしないよ。ただ私の水着をちゃんと見て、ちゃんと評価してほしいだけ。どう? よく見たらちゃんと色気があるでしょ?」


「そんなことを言われても……」


 クラリッサが告げるのにフェリクスがクラリッサの水着をよく眺める。


 クラリッサの肉体は引き締まっており無駄がない。かすかだが胸のふくらみもあり、それが女性らしさを物語っていた。まあ、色気とは程遠いが、男に見えるわけでもなく、クラリッサはちゃんと女の子の体をしていた。


 それに合わせた朱色の水着はなかなか似合っている。クラリッサの銀髪と合わさると効果は抜群で、そこはかとなくそっちの方は色気を出していた。


 そして、今のクラリッサはいつもとは違うポニーテイルだ。うなじが見えている。それもまた少しばかり色気を出しているような気がした。


「う、うん。そうだな。似合っているぞ」


「私の色気でいちころ?」


「ま、まあ、そうだな。色気があるな」


 微妙に棒読みにそう告げるフェリクスであった。


「よし。じゃあ、トゥルーデにも他のみんなにも、フェリクスがシャロンの胸をガン見していたことは黙っておいてあげよう。いい友人を持ったと思うといいよ」


「脅迫してくるのは悪い友人だ」


 クラリッサがそう告げるのに、フェリクスはため息をついた。


 頑張れ、クラリッサ。本当に自分の色気で男子を落とせるようになるんだ。


……………………

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