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娘は楽しい文化祭2日目を過ごしたい

……………………


 ──娘は楽しい文化祭2日目を過ごしたい



 2日目になると新聞部がレビューを発表し始める。


 それぞれのクラスや部活の出し物を5人の記者がレビューするというものだ。


「5点、5点、5点、5点、5点。大人から子供まで楽しめるとても素敵な出し物です。個性的な店員さんの演技を楽しみながらノンアルコールカクテルを片手にゲームに興じてはいかがでしょうか?」


「いくら払った?」


「なんのことやら」


 クラリッサは今年も新聞部を買収してよいしょ記事を書かせているぞ。


「昨日行った激辛カレー店もレビュー高いよ。当たりだったね」


「うん。あそこのカレーは中辛だと本当に美味かったからな」


「激辛も美味しかったよ?」


「お前の味覚はちょっとおかしい」


 激辛カレーには注意とレビューにも書いてある。


「さて、今日はレビューが高かったものを見て来ようと思う。パパたちはどうする?」


「高等部の文化祭が楽しめるのも今年までだろう? 友達と楽しんできたらどうだ。こっちはこっちで遊ばせてもらう」


「了解。またうちのクラスに遊びに来てもいいからね」


 クラリッサとリーチオたちは分かれると、クラリッサはクラスに戻る。


「ウィレミナ、サンドラ。そろそろ交代?」


「おう。この暗黒を見つめし魔眼がそろそろ交代の時間だと告げている……」


「ノリノリだな、ウィレミナ」


 ウィレミナはノリノリであった。


「サンドラは?」


「そろそろ交代ー。ちょっと待っててー」


 サンドラはディーラーではなく給仕を頑張っている。カフェ部分ではオムライスが人気らしく、いそいそとサンドラが運んでいる。


「よし! 一段落ついた! 交代お願いしまーす!」


「はーい!」


 そして、サンドラが交代。


「フフフ。今日のゲームはここまでのようだな。また来るがいい」


 そして、ウィレミナも交代。


「さて、着替えてきたら遊びに行くぞー」


「おー!」


 クラリッサたちは気合を入れると、更衣室に向かった。


 そして、いそいそとメイド服から制服に着替えると、遊びモードに!


「さてさて、どこから遊びに行く?」


「私、使い魔レースみたいなあ」


 ウィレミナがワクワクしながら尋ね、サンドラがそう告げた。


「使い魔レース。アルフィが勝ったよ」


「……クラリッサちゃん。営業妨害はやめよ?」


「営業妨害とかしてないし」


 アルフィを出場させた時点で立派な営業妨害だぞ。


「じゃあ、使い魔レースを見て、他には?」


「新聞部のおすすめは?」


「ダントツでうちのクラス」


「……いくら使ったの、クラリッサちゃん」


「なんのことやら」


 友人からも不正を疑われるクラリッサであった。実際のところ不正をしているので、指摘は間違ってはいないのである。


「なら、2番のおすすめは?」


「んー。お化け屋敷……」


 クラリッサのテンションが目に見えて下がった。


「お化け屋敷は日が沈んでから行くに限るね」


「い、いかないよ! いくとしても明るい時間帯だよ!」


 ウィレミナがノリノリで告げるのにサンドラが猛然と拒否。


「ウィレミナ、サンドラ。お化け屋敷なんて所詮は子供だましなんだよ。いや、子供すら騙せていないから、ただの陳腐な演劇なんだよ。お化け屋敷なんかで無駄に時間を潰すぐらいなもっと有意義なことに時間を使った方がいいよ」


「けど、このお化け屋敷面白そうだよ。『立ちふさがる4人の魔人を倒せ! 第一の魔人“ドラキュラ”! 弱点は日光と銀の銃弾だ! 第二の魔人“フランケンシュタイン”! 弱点は頭の横に生えているねじだ! 第三の魔人“トイレのマリーさん”! 弱点はおでこに貼られたお札だ! 第四の魔人! それは自分の目で確かめてくれ!』」


「……ねえ、それ本当にお化け屋敷?」


「あたしに言われても」


 どう聞いてもジャンルを間違えているようにしか聞こえない。


「ふむふむ。『除霊銃で敵を倒しながら進もう。ノーダメージクリアの方には特別に景品を差し上げます』か。これは面白そうだ」


「うん。まあ、クラリッサちゃんは乗るよね」


 クラリッサは銃という単語に興味津々だ。


「では、まずは使い魔レースを見て、次はこのお化け屋敷に」


「おー!」


 というわけで、クラリッサたちは2年B組の教室へ。


「クラリッサさん」


 すると、入り口で立ちふさがるのはクリスティンだ。


「なに? 今日も遊びに来てあげたよ」


「うがーっ! 何を平然といってやがるかー! あの奇怪でグロテスクで人の正気度を削り取る使い魔のせいで大混乱だったんだぞー!」


 あの後も、アルフィの残した爪痕は残り、使い魔たちが怯えたり、暴れまわったりと大変であった。その上、お客まで逃げ出してしまうし、クリスティンのクラスは踏んだり蹴ったりの被害を受けたのであった。


「でも、アルフィは可愛かったでしょ?」


「あんな化け物が可愛いとは正気ですか? それとも脳に深刻な障害が?」


「人を異常者のように扱うのはやめてもらおう」


 クラリッサだけにアルフィは美少女として映っているかもしれない。


「なにはともあれ、今日もあの狂気の産物をお持ちなら入店はお断りしますよ」


「今日はアルフィは連れてきてないし、エントリーする気もないよ」


「それでしたらどうぞ」


 ようやくクリスティンが退いてくれた。


「さて、今日の賭けは、と」


 クラリッサはエントリー票を眺める。


「トラ猫のラリー。コーギーのマイケル。オオサンショウウオのジンダイ。アカリスのエビフライ。オオアナコンダのジェイソン」


「色物が多い……」


 オオサンショウウオとかどこから召喚したのだろうか。


「エビフライって名前、酷くない?」


「私もそう思うのですが大好きなものには大好物の名前を付ける人でして」


「そっかー」


 クリスティンの説明にウィレミナが頷く。


「っていうか、このオオアナコンダのジェイソンって……」


「おや。うちの子に賭けてくれのでしょうのでしょうかあ?」


 噂をすればやってくる。


 ヘザーである。


「ヘザーはエントリーしたの?」


「はい。うちのジェイソンはとても俊敏で獲物を逃がさないので期待してくれていいですよう。優勝した暁には首をしめさせてあげるつもりですからあ」


「……そうか」


 ヘザーは狂っていた。


「しかし、オオアナコンダのとなりがリスとは……。むごいことをする」


「食べられたりしないよね……?」


 エビフライは隣でスタンバイしているジェイソンに警戒している。


「そう言えばラリーってクリスティンの使い魔で結構素早かったよね」


「ふふん。ラリーはなんと4連勝しているのです。賭けるならおすすめですよ」


「よし。じゃあ、ラリーに賭けよう」


 クラリッサはラリーに4口──400ドゥカート賭けた。


「サンドラたちは?」


「私はジェイソンかな。ヘビって結構素早いんだよ。それからジェイソンは体長が長いし、その分アドバンテージがあると見たね」


 サンドラはジェイソンに。


「あたしはマイケルかな。犬は賢いから障害物でも乗り越えていけるよ」


 犬派のウィレミナはコーギーのマイケルに。


「それじゃあ、決まりだね。では、早速賭けてきなよ。私はもう賭けたよ」


「オーケー!」


 サンドラはジェイソンに2口、ウィレミナはマイケルに2口賭けた。


「それではいよいよレース開始です! 位置について!」


 アナウンスがそう告げるがジェイソンはエビフライの方をじっと見つめている。


「……食べられたりしないよね?」


「使い魔だから大丈夫じゃない?」


 みんなが不安に思う中、選手たちが位置についた。


「よーい、スタート!」


 号令が鳴り響き、ジェイソンたちが一斉にスタートする。


 先ほどまではエビフライを狙っていたジェイソンもゴールを目指して一目散。


 だが、肝心のエビフライは怯えていて動けないぞ。


「オオアナコンダのジェイソンがトップに躍り出ました! 後追うのは4連勝中のトラ猫のラリーとコーギーのマイケル! ジンダイは……一応果敢にゲームに挑んでいます! さあ、勝利はどの使い魔のの手に!?」


 ジェイソンがぬるぬると凄い勢いでコースを進むのにクリスティンのラリーとコーギーのマイケルが猛追する。オオサンショウウオのジンダイはマイペースにゴールを目指している。のっそりのっしりしている様は可愛いのだが、何分鈍い。


「ここで障害物だー! ハードルが出現しました! さあ、使い魔たちはこれをどう乗り越えていくのだろうか!?」


 いよいよ障害物コースである。


 下を潜るには狭いハードルが現れるのにジェイソンはぬらりぬらりと障害物を乗り越えていく。不整地踏破能力が高いのもヘビの特徴だ。


 一方のラリーはぴょんぴょんと華麗にハードルを飛び越えていく。コーギーも一瞬ためらったものの、短い脚で精いっぱい跳ねて超えていく。


 ここでラリーがジェイソンに近づき始めた。


「続いての障害物! トンネルだ! さあ、使い魔たちはどう応戦するのか!上を通過するにはとげとげを避けていかないといけないぞ!」


 トンネルは前回上をするすると移動する使い魔がいたと聞いていたので、紙で作ったとげとげが置かれている。だが、紙ごときでは……。


 ジェイソンはトンネルの中に入ってするすると進み、ラリーはトンネルの上に飛び乗って障害物のとげとげを蹴散らしながら、トンネルの上を爆走する。


「続いて階段だ! 上手く飛び越えることができるだろうか!」


 ジェイソンはするすると階段を滑るように移動し、ラリーがぴょんぴょんと上手に階段を飛び越えて、通過する。ラリーは着実にジェイソンに迫っている。


「最後の障害物! 坂道ジャンプだ! これを乗り越えればいよいよゴールイン!」


 最後の障害物は坂道を駆けのぼり、そこからジャンプして対岸に飛び移るというものだった。ジェイソンとラリーはフル加速で坂を駆け上る!


 そして、ジャンプ!


 見事な猫ジャンプを決めたラリーに対して、ジェイソンは体を伸ばして向こうの台に移ろうとしていた。これが致命的な差となった。


「1位はトラ猫のラリー! 1位はラリーです!」


 おおーと歓声が上がる。


「よくやりました、ラリー。後でおやつをあげますね」


「なーご」


 クリスティンがゴールしたラリーを抱きかかえるのにラリーは一鳴きした。


「おお。流石はクリスティンの使い魔。やってくれるね」


「そうでしょう。ラリーは賢いのです」


 ラリーに賭けていたクラリッサが喜びの声をかける。


「撫でていい?」


「優しく撫でてくださいね。乱暴にすると引っかきますからね」


 クリスティンはそう告げてラリーの頭をクラリッサに向けた。


「よしよし。稼がせてくれたね。よくやってくれた」


「なーご」


 ラリーはそれほどでもないという具合に鳴いている。


「ああん。残念でしたねえ、ジェイソン。後でおやつにネズミを上げますから、私の首に巻き付いているといいですよう……ふへっ」


 結局、ジェイソンを首に巻くヘザーだった。


「ジェイソン、惜しかったのになあ」


「マイケルはハードルで詰まっちゃったのがいけなかったね」


 外れ組のサンドラとウィレミナがぼやく。


「残念だったね。まあ、昼食は私がここで勝ったお金で奢るから」


「やりー!」


 賭けで得たお金は盛大に使うクラリッサだ。


「じゃあ、次は──」


「お化け屋敷だ」


……………………

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そして、書籍化決定です!詳細はあらすじをご覧ください!

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[一言] 学園祭のお金の使い方としては、間違っていない気がします。 第二の惨劇は、回避されました。
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