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それでも彼が好きなので  作者: 三ツ巴マト
3/7

その3



翌日、ニ限目が終わった頃、廊下で王子の婚約者であるマライア様を先頭に婚約者様方計9人が私のところに来ました。


「オレノア様!お久しぶりですわね!」


「……お久しぶり、です。」


「昨日、殿下達と一緒に行ったって聞きましたけど、大丈夫でしたの?」


「……特に、何も?フローレンさん、紹介、してもらった、だけ、です。」


「あぁ、あの子。常識知らずなのよ。どうも男爵家に引き取られるまで平民として暮らしていたらしいわ。貴族の色々を知らないから、殿下達に馴れ馴れしくって。それが庇護欲をそそるみたいで……。」


最後の方は声をだすのがつまっていました。他のご令嬢もうつむいて、かなしそうです。こんな可愛いお嬢さん達を泣かせる男達は許さん!


「……噂、聞いて、いる。」


「っ、すみません、政略結婚とはわかっていても、悲しいものですのね。それで、オレノア様はジュリアーク様とはどうですの?」


「……昨日、挨拶、しました。色々、話したら、誤解、解けた、みたい。帰り、一緒、でした。」


「そうですの!やりますわね!私達、もうすでに煙たがられていて、相手にもしてくださいませんの。ですから、編入してきたオレノア様が頼みの綱ですの。どうか、よろしくお願いいたしますわ!」


そう、マライア様が私に言った時、


「おい!」


王子達がやって来ました。まずいです。この構図だと、私が攻められているように見えてしまいます。


「オリー、大丈夫か!」


「……ジューク。」


「オレノア嬢、こいつらにいじめられていただろう、まったく……。」


「殿下!誤解が!」


「お前は黙っていろ、マライア!」


ビッシャーーーーン。って効果音がするんでしょうか、少女漫画ではこんな時。


「……昨日、言った、こと。忘れた?」


できるだけ、ドスが効くように私は呟きました。

効果絶大。みんなの動きが止まりました。


「……マライア様、私、心配、してくれてた、だけ。誤解、ダメ。先走り、ダメ。言い訳、くらい、聞かなきゃ、ダメ。相手の、話、聞かない、ダメ。」


私は立ったまま呟いていった。ゲーム補正だとしても、王子のマライア様への態度はひどいと思ったのです。普段、こういう感情は表に出さない私ですが、今回はぶちまけてしまいたいです。


「オリー、その威圧オーラを引っ込めなさい。殿下どころか他のご令嬢達もやられそうになっているから。」


仕方ない、私、ジュークの頼みは聞く女。すっと体の力を抜くと、威圧感がとれたようで、王子達の表情が少し良くなりました。えっ、顔色悪くなるくらい、私が怖かったの?


「……マライア様、戻って、もらって、いいよ。」


「そう……ですの?では、お言葉に甘えて、失礼しますわ。」


マライア様達が去って行きました。これ以上ここにいてもらうと、ゴタゴタが増えそうだったので。

そんな彼女の背中を王子が睨んでいるのは気に食わないけど。


「……さっきの、注意、返事、は?」


「「はいっっ!守ります!」」


攻略対象達を再度脅しておいた。良いお返事です。蜘蛛の子を散らすように彼らも去っていき、残るは私とジュークだけ。


「オリー?やり過ぎは良くないからね?」


「……女の敵、許す、まじ。」


「相手は王族だからね?」





数日後の放課後。私達は再びサロンに集まりました。


「……フローレンさん、あれから、どう?」


「あんまり変わらないです。メモ、見てもらえますか?」


そう言ってフローレンちゃんが出してくれたメモ帳を、見せてもらいます。中には『一限目に教科書が隠された』『休み時間に殿下に近寄るなといちゃもんをつけられた。』といった内容がかかれています。


「あぁ!フローレン!お前はこんなにも辛いめにあっていたのか!」


だから、王子うるさい。でも今回は黙らせるいい道具があります。


「……殿下、コレ。マライア様の、記録メモ。借りてきた。中、見て。壊すの、許さない、から、大事に、見て。」


「えっ。」


王子にマライア様のメモ帳を押し付ける。表紙には『嫌がらせ記録ノート No.17829』と書かれています。王子は絶句したままページを捲っています。これでしばらくは静かでしょう。内容は王子の顔色がどんどん悪くなるくらいひどいものだとだけ言っておきましょう。


「……フローレンさん、正直な、感想、言って、いい?」


「あっ、どうぞ!教えて下さい!」


「……これ、大したこと、ない。」


「えっ!そうなんですか!」


「…… 確かに、嫌がらせ、良くない、こと。でも、多少は、貴族の、常識。特に、女同士、ドロドロ、多い。ひどいと、人が、死ぬ。それに、比べれば、フローレンさんの、かわいい方。」


「貴族ではそういうことが日常茶飯事なんですね。初めて知りました。私、少々訳ありで、今の男爵家に来るまでは市井にいました。なので、貴族の常識に疎いんです。すみません。今まで誰も教えてくださらなかったものですから。」


フローレンちゃん、貴方の言葉で後ろの男どもの顔が青くなっていますよ。この人達、教えてくれなかったものね。


「……女の人、表立って、争わない。いつも、クドクド、ドロドロ、嫌になる。でも、それが、今の、女性、貴族、だから、仕方ない。」


「貴族なりの苦労があるんですね。やっぱり、どこに生まれても苦労はするんですね。貴族になったからにはやらなければなりませんね。でも、私、そういうの苦手なんですよ。そういう意味では平民の時の方が良かったかも。」


「……人、それぞれ。できること、できないこと、みんな、違う。」


「そうですよね!私、まずはできることからやってみます!皆さんが受けているようなこんな嫌がらせに音をあげないで、自分で耐えて見せます!」


力強く宣言したフローレンちゃんを見て、思わずパチパチと拍手をしてしまいました。その日はそれでお開きにして帰りました。それにしても男性陣の血の気の失せた顔が面白かったです。本当に今まで知らなかったんですね。




マライア様の口調も基本固定。

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