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それでも彼が好きなので  作者: 三ツ巴マト
1/7

その1

嘘でしょ。乙女ゲーム転生とか、ネット小説じゃない。しかもメインの王子の取り巻きの婚約者とか、サブの悪役令嬢じゃない。




説明しよう。大体私の状況は把握していただいただろうが、私、オレノア=デジールは前世の乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。悪役令嬢と言っても、メインではございません。メイン攻略者となられる王子の従者になる私の婚約者様と逆ハーレムのルートのエンドにならないと、私は断罪されない。はっきり言えばサブどころかモブです。


でもヒロインが逆ハーレムルートを選ばないとは限らないし、そうでなかったとしても何らかの影響があるでしょう。


……よし、深く考えるのはやめましょう。とりあえず大人しく生きていくことにします。そうすれば彼らにも関わらずに済むでしょう。










何を間違えたのか。多分大人しく勉強していたからでしょう。そのお陰で人並みよりも勉強が出来る子になっていたからでしょう。


私はゲームどおり、宰相様の家の嫡男と婚約しました。ジュリアーク様です。彼もこのまま行けば王子殿下とともに成長してエリートコースを進むのでしょう。頭が切れると評判の私を家に引き込むことで彼のサポートをさせるのが宰相様の狙いかと。政略結婚ですね。王子殿下はすでに婚約者様がいらっしゃるから、自分の家に入れるのですね。わかりました。


先に家同士で書類のやり取りが行われました。格上の家との縁結びとあって、我が家は大騒ぎでございました。そうしてそのあとに婚約者達の初顔合わせです。本当に今まであったことはございませんでした。なのに、


「ふん、どうせお前も僕の家と顔に惹かれて来たんだろう?」


いきなりこの態度。少々イラッときますが、まだまだ子供です、寛大な心で許しましょう。私はニコッと笑って、


「初めまして、オレノアと申します。一つ訂正させて下さい、確かに貴方の家は素晴らしいとは思いますが、私は今まで貴方にお会いしたこともなければ姿絵も見たことがありません。」


「え。本当?僕は君の姿絵を見たのに?」


「本当です。私の姿絵はおそらく私の父の判断で送られたのかと。それにこの婚姻はジュリアーク様の家の方から打診されました。私、これでも頭が切れる方ですので、そのためかと。」


「そっか、じゃあ勘違いだったのか。ごめん。」


「はい、後、お言葉使いが乱れておいでです。そのせいでそこの執事さんがオロオロしていらっしゃいます。」


さっきから気になっていたのです。執事さんはジュリアーク様の態度のせいで私が不機嫌になるのを恐れているのでしょう。私に言い当てられた執事さんの冷や汗が見えます。正直、ジュリアーク様の態度より彼の方が気になります。


「ん、ダメかな?」


「初対面ですからね。」


「でも、婚約者でしょ?死ぬまで一緒じゃないか。いまさらかしこまっても意味がない。それならさっさと砕けた間柄になった方が気楽だろ。」


「なるほど、一理あるかと。」


「それに僕と君は同い年だから、年齢を気にする必要もない。さらに、君は実力を買われてうちに来るんだろ?世の中には妻は夫に従順であるべきとか言うおっさんもいるけれど、君が来るのはそういう古い考えを捨てさせるためでもあるんだから、僕と君は対等であるべきだ。」


「ごもっともです。」


「うん、だから堅苦しくしなくていいよ。敬語も無理して使わなくていいし、僕のことも愛称のジュークでいいし。」


「わかった、ジューク。私はオリーでいいよ。」


「オリー、結構順応早くない?」


そんなこんなで私達はそれなりに仲良くなれました。お互い砕けてきたので、執事さんも安心した様子。悪役令嬢回避のためにも距離を取りたかったけど、婚約してしまったからには仲良くなりたいと思いました。それに、ジュークがかわいい!仲良くしなきゃ損になります。







それからしばらく経って、ゲームの始まる頃になりました。生憎、私は勉学のために隣国に留学している関係でスタートよりも半年ほど遅れてゲームの舞台の学園に行きます。すでにゲームの知識は曖昧なので、細かいイベントとかは考えないことにしました。


あれからジュークとの関係は良好で、背中を預けられるくらいの関係にはなれたと思います。留学先でも手紙のやり取りを続けておりました。ゲームのヒロインが入学する頃がすぎてすぐに、彼女とおぼしき人が彼の手紙に書かれていました。内容は面白い子に出会ったぐらいのことでしたが、なんだか寂しく感じました。無性にジュークに会いたくなりました。彼の顔が見たくなりました。ヒロインと彼が並んでいるところを想像すると、胸がキューっとなりました。




あぁ、私、ジュークが好きなんだ。




そう思いました。こうなったら断罪回避とか言っている場合ではありません。悪役令嬢の気持ちがわかる気がします。そのうち、他の友人からの手紙にも、王子とその取り巻きに怪しい女の陰アリという旨が書かれるようになりました。彼らの婚約者達も苦労しているよう。じっとしていられません。祖国に戻ったら行動を起こそうと思います。



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