エピローグ
翌日、教室に入ってきた先生の顔を見るなり、ロビンは、昨日のお礼を言う為に声をかけた。
「先生......昨日は、わざわざ城まで来ていただいて、有難うございました」
先生は、つかつかとロビンの元へ歩み寄り「あの絵は、気にいってもらえたかしら?」と言って微笑んだ。
「はい先生。母もとても喜んでいました」
「まぁ、良かったわ。先生が持ってるよりあの城に飾っていた方がいいと思ったからなのよ。喜んでもらえて、先生も嬉しいわロビン」
「はい先生......ぼくも嬉しいです」
ロビンは顔を赤くそめた。
女の子たちの嫉妬に満ちた視線が、先生に向けられたその時、教室に入ってきたジュリーは「あはようロビン。帰りに、あんたの城へ寄っていってもいい?」とロビンに声をかけた。
「うん。いいけど......」
ロビンは恥ずかしそうに、先生から目をそらした。先生は、にこやかな顔をジュリーに向けていった。
「おはようジュリー。あなたは、あの城によく出かけるのね」
女の子たちのひとりが、すかさず口を挟んできた。
「先生知らなかったんですか?ジュリーはあの城に、出入り自由なんですよ」
先生は一瞬、驚いた顔をした。
「あらっ、それって素敵ね。先生にも、出入り自由のパスポートがほしいわ」
先生の言葉に、むっとしたジュリーは「あたしにパスポートなんて必要ないの!あたしはあの城の庭師になる女の子なんだから!あたしはロビンにも、ロビンの母さんにも気にいられてるから、出入り自由なの。あたしはね、特別なのよ。解ってもらえたかしら」
と力強い声でいった。
先生は目を丸くして、ジュリーの言うことを聞いていた。それから、くすくす笑いに変わり「ジュリーって......はっきりしてるのね。あなたはとても可愛いわ。ロビンもきっとそう思ってるはずよ」と言って、もう一度笑い声をたてた。
ジュリーは恥ずかしそうに目を伏せると、ロビンの顔色を窺った。ロビンはいつの間にか女の子たちに囲まれて、困った顔をしていた。
「ジュリー......助けてよ」
ジュリーは「知らない!」と言って顔をそむけた。先生の一言で、女の子たちはロビンから離れて椅子に腰かけた。
その日の昼休み、教室の窓から流れていく雲が見えた。ロビンは、流れていく雲の中にニケの姿を見つけた。
「あっ......」ロビンはいった。
あの雲は......ニケにそっくりだ......。
雲はどんどん、ロビンの前から遠ざかっていった。授業が始まる前になっても、ロビンは窓から離れなかった。
先生がそっと近寄ってきた。
「先生......」
「何を見ていたのロビン?」と先生が訊いてきた。
「あの......雲を......見ていました」ロビンはいった。
先生はロビンに、席につくようにと言って微笑んだ。
「先生ぼく......この窓を開けて、なんだか叫びたい気分なんです」
「ロビン」と先生はいった。
「それで、あなたはなんて叫びたいの?」
ロビンは目の前の窓を開け放つと「先生ぼくは、こう叫びたいんだ」と言って、言葉を放った。
ニケーーーーーーーーーーッ。ぼくは君が大好きだよ。
ニケーーーーーーーーッーーーーッ。
ニケーーーーーー。
ロビンの声をきっかけに、他の生徒たちも窓にやってきた。生徒たちは、次々に椅子から立ち上がった。
そして、ジュリーが叫んだ。
ニケーーーーッ
サファイアーーーーッ
イライザーーーーッ
あたしはみんな大好きだよーーーー
ぼくは......
君が大好きだよニケ
大好きだよニケーーーー
ロビン......お前はばかな子だな。
ロビン......猫は泣かないとでも思っていたのか。
ロビン......
空に浮かぶニケの姿をした雲は、ロビンとジュリーの声と共に流れていった。




