第十九話「風雲シズル城」④
世紀末覇王ルート……それの何がいけないんだっての。
わたし達は兵器でもなければ、権力を裏付ける戦争の道具でもない。
この世界でも有数の力を持つのであれば、国家権力の上を行く存在になる……そうすれば、こう言うややこしい状況にならずに済む……お姉ちゃんがそうであったように。
まずは、迫りつつある獣王国……軍勢とかはなんぼ居ても相手にならないから、もう無視!
臣下に加わえてもらうとか、保護してもらうとか、そんなんじゃなくて、あくまで対等……もしくはこちらが優位の関係で手を組む!
お姉ちゃんの話だと、一番偉いのハッ倒せば、それで済むチョロい連中らしいから、まずは物理的交渉……だね。
そうなると、その上で王国へはこれ以上、ちょっかい出したりとかしないで、ここらに留まって、圧力をかける程度に留めてもらうように厳命する……。
多分、ここらに軍勢が留まるってだけでも王国側へのプレッシャーになるから、気軽に侵攻とか出来なくなるだろう……勇者マコトが出て来たら、こっちのもんだ。
「勢力図を塗り替える……ね。でもこの調子じゃ結局そうなるだろうね……。でもさ、どいつもこいつも勇者の力を便利使いしてやろうとか、戦略兵器みたいな扱いとか……そんなの違うでしょ。コキ使われたくなきゃ、こっちが使ってやる……そう言う心づもりでいるべき……わたし、間違ってるかな」
「解りますよ。シズルさんは、国という枠組みに収まるような方じゃなさそうですからね……。その様子だと、行動方針も決まったようですね……ひとまず、王国を遠ざけた上で、獣王国と一戦交えて力づくで従える……そんなところですかね」
「よく解るね……今の今まで迷ってたけど。資源やら色々入り用になりそうだからね……カモがネギ背負ってやって来たなら、有効活用するまでって感じ?」
「なるほど、獣王国とは、最低限イーブン、もしくはシズルさんが獣王国を従えた上で、王国との戦いを始める……そう言う構図を狙ってるんですよね……」
「ごめんね。結局、ユキちゃんたちとは敵対しそうだけど……。ユキちゃん達も色々事情や立場があるだろうからね……。と言うかさ……そこまで八方塞がりなら、いっそもう全部叩き壊すくらいの覚悟がいるんじゃないかなぁ……」
いろいろ考えたけど、全部は無理!
わたしの行く道は、あくまで王国の敵対者……独自勢力として、王国を武力で平定する。
まずは、それが第一の目標……その上で、勇者システムも分捕る。
どうせ、王様を殺しちゃったから、もうまともに使えないってのは自明の理。
もしも、まだ使えるなら、今頃、勇者の数がもっと増えてる……それがないなら、今は使えないって考えていい。
分捕ってどうするか……これ以上、余計なのが増えても困るから、いっそぶっ壊すか……ライブラさんの管轄にでもする方向性で……。
王国も、大臣や騎士団、勇者マコトをぶっ潰したら、それ以上は別に用もない……焦土化とかしたいとも思わないから、適当な人にお任せで勝手にやってくれって方針でいいや。
カーライルくんとやらが、無事生き伸びてたら、あとよろしくって感じでお任せでもいいかもしれない。
もっとも、事前に助け出すとか、そこまでは無理……それこそ、ユキちゃん達が頑張って欲しいところ。
そう言うのを手伝うくらいは、やってもいいんだけど……とりあえず、方針は決まった。
けど、ユキちゃんになんて言えばいいんだろ……。
と思ったら、わたしの言葉を受けて、ユキちゃんニコニコ笑ってるし……。
「……まったく、シズルさんは私の想像以上ですね……」
……次会う時は敵同士。
そんな別れもある……ホントは、仲良くしたかったんだけどね……。
「……ごめんね。一緒に戦って欲しいって思ってるのは、解るんだけど……。獣王国を取り込むくらいしないと、どうしょうもないんだよね……」
「いえいえ、その展開、実は我々としても悪くないんですよ。そう言う展開になると、むしろ我々北見姉妹が文字通り、王国の命運を握ることになりますからね。獣王国の勇者とシズルさん達を足せば、10人にもなりますからね。そこまで来ると、もうマコト達だけでは勝ち目が薄くなります。である以上、奴らは我々をなんとしても味方に留めておく必要があります……そうなると、むしろ人質には絶対に手が出せなくなるし、我々を冷遇することも出来なくなります」
……ユキちゃん、わたしの想像以上だった。
そこまで考えてたのか……。
「……な、なるほど。おまけに、こうやってわたしらと通じちゃってるから、まともに戦うつもりもない……。そうなると、勇者マコトが出てこざるを得なくなる……そう言うことなんだね」
「ですね。我々はすでに単独ではシズルさん達に勝てないと証明済みですからね。戦ってもいいけど、負けるだろうから、速攻で降伏するって言っとけば、噛ませに使われることもない……。むしろ、他の勇者達への牽制とかそう言う使い方をするでしょう……。結果的に、シズルさん達と勇者マコトとの戦いは避けられないでしょうけど、私達は積極的に足手まといになるとします」
お、おう……わたし達がどちらに付くかで、情勢が変わるって状況が、ユキちゃん達がどっちに付くかで変わるって状況に変化するってことか。
「なるほど、ユキちゃん達は、あくまで王国に、従ったまま、獅子身中の虫として、動くと……そう言うことか。お姉ちゃん……ひとまず、どう思う?」
もう、ほぼほぼユキちゃんのプランなんだけど……。
それでいいのか……お姉ちゃんに聞いてみよう。
こう言う時は、お姉ちゃんの判断に頼るに限る。
今ん所、反対意見も出してこないし、概ね賛成って感じだと思うけど……。
「悪くないんじゃないかな。私も別に王国や他の国家勢力と無理に仲良くとかしなかったし……ぶっちゃけ、こいつら邪魔くさいって思ってたし……。獣王国は解りやすくていいよ。ボスの獣王様を一発ブン殴って泣き入れさせれば、全部まとめて大人しくなって言う事聞いてくれるようになるから。結局、勇者の理想の立ち位置って、魔王軍だけを相手にして、人類側はモノやお金だけ出してくれれば、それで十分なのよね……。困ったら、泣きついてくれれば、悪いようには、しないんだしさ。結局、勇者を便利使いしたり、戦略兵器みたいに使うって発想が間違ってるんだっての。そう言う情勢を作っちゃった他の勇者も、いずれちょっとシメてやらないとだけどね」
奇遇にもお姉ちゃん、似たようなこと言い出した。
と言うか、お姉ちゃんも結局、そうして我が道を行ったってわけだ。
面倒になったら、全部まとめてぶん殴って解決……お姉ちゃん流の解決方法ってそんな感じ。
何のことはない、すでに前例があったってことだ。
そう……いわば、絶対なる中立勢力!
中立ってのは、全てを敵に回すと同義なのだけど。
逆を言えば、周り全てを敵として、全て蹴散らせるだけの武力と覚悟さえあれば、絶対なる中立勢力というものだって成り立つのだ。
誰にも与さず、誰にだって与す可能性のある最強の武装勢力。
こんなグダグダな世界にこそ、そう言う絶対なる調停者的なものが必要なんじゃないかな。
と言うか、調停者ライブラの密命も実際に受けてるんだから、お名前拝借して、ライブラ軍とか名乗ってもいいかも。
ちなみに、ライブラさんはユキちゃん達との戦いを見届けると、どっか行っちゃった。
お姉ちゃんの強さを見たことで、何か思う所があったのかもしれない……今度は何しでかすやら。
とにかく、お姉ちゃんの力を借りれば、この土地ならわたしは、無敵無敗。
それくらいには、お姉ちゃんはチートだ。
この森の奥地は、戦略的には何の価値もない僻地だけど、それがいい。
勇者達が集う勇者軍団の本拠地とすれば……この土地の戦略的価値はもはや、この世界の人類の最強最後の砦としてすら機能するかも知れないっ!
まぁ、大げさなんだけど……。
勇者一人一人が戦略兵器のように扱われてるなら、それを一箇所にかき集める事により、平和維持軍みたいなことだって出来るし、誰からも都合よく利用されなくなる……少なくとも人類世界に争いのネタはなくなる。
そんな訳で、最初のミッションは獣王とやらをブン殴って泣かす。
挑戦状でも送れば、自分から来てくれたりしないかな? むしろ、かかって来ないかなー。
そして、次は王国の平定。
続いて、各地の勇者狩り……これは、何も勇者達に直接、喧嘩売るまでもない。
各国へ戦って勝てたら、移籍してやるって言えばいい……どこも欲の皮が突っ張ってるから、挑戦者を送り込んでくるだろう。
……ホーム戦なら、人数互角とかでも負けはないだろうからね。
勇者達には、恭順か強制送還の二択ってやればいい……恭順して仲間になってくれたら、楽なんだけど、そこはあんま期待しない。
後は、勇者軍団を使って、各地の魔族を駆逐していく。
魔王システムは止めたって話だから、向こうだって有限になってる。
転移門や流星を使えば、距離の問題だってクリアできる。
もちろん、こっちも色々物を買ったり、売ったりしたいし、錬成術で作れない物資だっていくらでもあるだろうから、他国と縁を切るまではいかない……。
助力を請われれば助太刀するし、なんなら、援助金とかだってふんだくったって良い。
その代わりに、国内のモンスター退治とか武力が入り用なら傘下の勇者を派遣する……なんせ、わたしは外に出たら、弱体化するから、なるべくここから離れたくない。
転移門を使って、交易の拠点とかにしたり、希望者をドンドン受け入れて、本格的な国を作るのも悪くない。
国の経営とかよく知らないけど、知ってる人を引っ張ってくればいいし、勇者の中にも社長さんとか居たくらいなんだから、そう言うのに詳しい人だっていそう。
そうなると、色んな所と交流ができて、色んな人が潤うと思う。
無茶苦茶なプランなんだけど、もうこんなグダグダ、ガタガタいい加減やってらんない!
こうなったら、お姉ちゃんを見習って、邪魔なものもウザいのも、なんもかんも全部蹴散らして、わが道を行くのですよ。
秩序もルールも平和もない世界なら……自分で作る!
まさに、世紀末覇王……わたし、始まったよ!
なんだ、簡単なことだったんだねー。
どうも、わたし……この世界の秩序ってのが、気に食わなかったんだよね……。
力あるこそ正義……なら、お姉ちゃんと言う最終兵器を手にしてるわたし達が、最強として君臨して何が悪いの?
ああ、もう……なんかわたしも色々振り切れたよ?




