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第十八話「勇者マコト」②

「その様子だと、サキさん達は、一対一じゃなきゃマコト相手でも勝てるって言いたそうだね」


「私達姉妹三人がかりで、アレ一人と相対するってなれば、多分勝てますね。ただ、その仮定は非現実的です。なにせ、向こうにも仲間が居ますから……。マコト達と私達の総力戦ともなると、一人一人の質はともかく、人数の差と、マコトの覚醒融合分のアドバンテージを取られてる以上、勝ち目は薄い……そうなります」


 向こうは六人……確かに、二対三でも早々に勝負を投げ出したくらいなんだから、三人のユキちゃん達じゃ……キツい。


 この対勇者戦での、人数差ってのが侮れないってのはさっき痛感したし……。


「マコト達の現時点でのパーティの内訳はどうなってるのかな? 機密情報だとは思うから、話せないならコレ以上は聞かないけど」


「いえ、勇者の存在は今や、各国への抑止力も兼ねてますからね……その内訳は、私達も含めて大々的に喧伝され、公に知られているので、もはや機密情報とは言えません。大剣以外の五人としては、双剣、魔杖、小盾に弩、メイスですね……。正直、これはあまり話したくなかったのですけど……」


 ……聞き覚えのある武器の名前が出て来た。

 覚醒融合による武器の強化は、勇者マコトの仲間達にとっても周知の事実。

 

 弩とメイスとか……まどかさんとユウキくんにモロに被ってる。

 ……ああ、これじゃ、マコト一派とは一戦交える以外の道がなさそうだなぁ……。

 

「向こうの武器とこっちの武器がダブリ同士って……そうなると向こうは、こっちのを分捕る気満々なんじゃ……。言っとくけど、わたし……まどかさんやユウキくんは家族同然に思ってるからね。って言うか、こっちの武器の情報ってユキちゃん達バレてたよね? となると、やっぱ勇者マコト達もすでに知ってるってこと?」


「……お二人の武器のことは、私も水晶玉の遠隔偵察で知ってましたが。私の持つ情報を全てマコト達と共有している訳じゃないです。と言うか、私達とマコト達は同じ陣営に所属して、敵対してないだけに過ぎません……交流も無ければ、情報交換すらも行っていません。いわば、ライバル関係ってところです。である以上、ライバルを利する可能性のある情報をわざわざ流す訳じゃないですか」


 ……なるほど。

 こっちの情報はユキちゃん達でストップしてると。

 

 実際に情報を流してるかどうかは、定かじゃないけど、ユキちゃんは自分たちの立場を明かすことで、流す理由がないと、そう言ってる。

 

 そう言う事なら、ユキちゃんの言葉は信用していいと思ってよかった。

 この三人は、結束も強いし、口も硬い……となると、こちらの情報は人数くらいしか伝わってないと見ていいだろう。

 

ああ、でも……わたしもだけど、あの時、まどかさんとクマさんは大臣達に変身してるところを見られたから、最低限まどかさんの事はバレてるっぽい。


 そうなると……やっぱり、狙ってくるだろうなぁ。

 ああ、王国と敵対する理由ばかりが増えていくよ……。


 しかしまぁ、王国の抱えてる勇者ってのも、お互い思いっきり仲悪いとか……ホント、どうしょうもないんだって思う……普通、そんなんじゃ誰かが仲裁に入ったりとかしそうなもんだけど。


 それをやろうって思うような気概のあるヤツもいなければ、それが問題だって思っても居ないんだろう。


 要するに、お姉ちゃんの頃と一緒で、勇者に丸投げ、ただし余計な口出しはするし、無茶ぶりもしますと。


 ……お姉ちゃんが、滅べとか言う訳だよ……私も、潔く滅べばいいのに位は思う。


 実際問題、二正面作戦とか大規模侵攻とか受ける可能性だって高いんだから、最低限の連携くらい出来ないとどうしょうもないだろうに……。

 

 ……けど、そう言う酷い状況だってのは、ユキちゃん達も承知の上。


 それだけにユキちゃん達は、わたし達がこの状況を打破するきっかけになりうるって、思ってるんだろうなぁ……。

 

「解った……そこは信用するよ。けど、そうなるとやっぱり王国は、わたし達にとっても危険過ぎる場所と言わざるを得ないよね……」


「そ、そうだね……。同じ武器の所有者同士なら、仲良く出来るかなって思ったけど。分捕られるかもって思うと、そんな事言ってられないよ……。けど、別にその覚醒融合ってのをしなくたって、別にいいんだよね? 少なくとも私は、いくらパワーアップするとは言え、同業者を犠牲にしたいなんて思わないわ」


 いきなり、当事者になってしまったまどかさんもさすがに、落ち着かなさそうだった。

 

 ユウキ君は……この場にはいないけど。

 あの子、結構クールなとこあるから、気にしなさそう。

 同系の弩相手でも、淡々と戦うとかそんなだろうし……。


「そうですね。なんだかんだ言って、同じ武器を持つ勇者二人と覚醒融合した武器を持った勇者一人では、戦力的にも利用価値的にも前者の方が明らかにお得ですからね。先も言いましたが、勇者の人数ってのは、今や戦略的な価値を持つ数字ですからね。さすがに同じ王国に所属する勇者に戦いを挑んで奪い取るような真似は許されません。それはすでに勇者マコトが一度やらかしてますからね……あの一件でマコトは、相応の信頼と言うものを確実に失っています……。私達なんかもいい例ですし、その仲間達からも……です」


「つまり今は、明確に禁じられてると? 確かに……親友を騙し討して殺すとか、そりゃあんまりな話だしねぇ……信じらんないよ……」


 勇者マコト……コイツは、わたしの殺すリスト入りっと。

 

 友情とか信頼を裏切るようなヤツは、まじで死んでくれって感じだし、お姉ちゃんに手をかける可能性がある以上、そんなヤツ、変に力を付ける前に早めに摘んでおく必要がある……容赦する理由が無い。

 

 思わず、うつむき加減でどんな殺し方をするかとか、どんなセリフで葬ってやろうか……なんて考えてたら、怪訝そうな様子でユキちゃんがこっち見てるので、慌てて微笑みかける。


「だ、大丈夫ですか? すみません……色々と刺激的な話を聞かせてしまって……」


「いやいや、気にしなくていいよ……。とにかく、マコトはお姉ちゃん流に言うと、殺される覚悟のある奴って考えて良いんだよね。親友を裏切って殺すとか、自分も誰かに裏切られて殺されても文句言えないって事……うん、マコトを葬る時のセリフはもう決まり……地獄で親友ともに侘びつづけろーっ! 勇者マコトーっ! どうよ?」


 うん、これで決定!

 それを聞いたユキちゃんや他の皆は、思わずと言った感じで吹き出してる。


 元ネタは……なんか、とっても昔のゲームらしい。

 よく知らない。


「あはは……それはいいですね。まぁ、因果応報……友情を裏切るような外道には、そんな言葉がお似合いかもしれませんね」


「そうそう。友達は裏切っちゃ駄目だと思う。だから、わたしもユキちゃんを絶対に裏切らないから……ね」


「私も……です……シズルさん」


 そう言って、しなだれかかると、ぎゅっと手を握ってくるユキちゃん。

 ……おぅお、なんか今、無性にチュッとかしたくなった。


 なに、今の衝動……。


 いくらなんでも、そこまでは……そこまではぁーっ! わたし、健全な女の子だしーっ!

 ああ、なんとなく……男の人が女の人を押し倒してーって気持ちが解った。


「……あはは……ユ、ユキちゃんってスキンシップ激しいんだね……。まぁ、いいんだけどね」


 そう言うと、ユキちゃんが真っ赤になって、そそくさと離れる。

 ユキちゃん、今……どうにでもして……みたいになってたよね?


 あっぶなっ! 色んな意味で危なかったぁーっ!


「ご、ごめんなさい……えっと、えっと! とにかくですね! 勇者マコトは……そう言う人物なので、人望は全くありません。仲間と言っても、向こうの世界からの縁者とか、付き合いの良いお人好しとか、長いものには巻かれようとか、そんなのばかりですね。向こうの弩とメイスの二人は、比較的温厚な非交戦的な人物なので、シズルさん達と敵対すると決まったわけではないと思いますけど」


 ……さすが、ユキちゃんだ。

 完全に二人の世界で背景百合の花が咲いてたっぽいけど、何事もなかったように取り繕ってくれた。

 周りの皆は、呆れたような感じで見てるけど……見てるけどーっ!

 

 とにかく、マコトパーティの面々!

 そんな外道と組む時点で、パーティメンバーとかも外道揃いとか、そんな認識でいいと思う。


 各々のバックグラウンドとか、想像したり意識したら、イザって時に手が鈍るから、もう考えなくていいと思う。


 でも、まどかさんやお姉ちゃんの話を聞く限り、メイスの勇者って皆、博愛精神の塊みたいな人が選ばれるっぽいから、向こうのメイスの勇者も、まどかさんみたいな医療関係者とか、人助け大好きとかそんな感じの人なのかも。

 

 ……そう言う事なら、いくら強化できるからって、同じ勇者を始末して武器を奪おうとか、考えない……のかな?


 けど、勇者マコトが単純に自分のパーティの戦力強化を……とか考えたら?

 まどかさんやユウキくんは絶対に狙われる。


 自分が狙われるのは、まだいい……けど、家族同然になってしまった二人が狙われるとか絶対に許容できない。

 

 せめて、何らかの形での安心材料が欲しいなぁ……。

 今の所、希望的観測って部分が大きすぎる……ホント、勇者マコト……やってくれたよ。

 こいつのせいで勇者同士が相争う……そんな可能性が出て来ちゃったんだから。


「なかなかに、ややこしいんだねぇ……。確かに、勇者の質よりも数が対外的なカードになるなら、結果的に共食いみたいになる覚醒融合は禁じ手となる……そこは安心材料ではあるのかな。何より、わたしはユキちゃん達を返り討ちにするような大戦力。いくらクソ大臣やマコト陣営でも、正面から喧嘩売ってくるような真似はしないってことかな?」


「そう言うことです。どうでしょう、シズルさんほどの力があるなら、内部から一度力技で王国をまともにした上で、他の国々をまとめあげるとかだって、不可能じゃないと思うんですけど……。少なくとも私達姉妹は、シズルさんを敵に回すなんて、もう絶対ごめんです……マキ姉さんもシズルさん達ともう一度戦えとか言われたら、どうです?」


 ……ユキちゃんの言葉は、まさにこれが本音なんだろう。

 わたしと敵対したくないから、色々考えた上で、敵対しないで済ませる為の最善のプランを提案してくれてる。


 でもさぁ、それって限りなく、わたしが王国を牛耳る影の魔王として、君臨するとかそんなんじゃないの?


「剣鬼さん……怖い。助けて……私、悪くないですから……」


 マキさんに至っては、さっきの恐怖の魔王状態のわたしを思い出したらしく、ガクガクと震えながら、目が焦点合ってない感じになる。

 

 これは……アレだ。

 目のハイライト消失って感じ?

 

 姉よ……これが恐怖を存分に刻むということなのか?

 

 少なくとも、マキさんもユキちゃんもこの調子だと、わたし達に敵対するくらいなら、全力で逃げるか、スパッと降伏するとか、そんな調子だろうし、サキさんも似たようなもんだろう。

 

「……パンツ、まだ乾いてないし、ソレ汚したら、替えは出さないからね……マキさん」


 冷たく言い放ったら、マキさんも正気に返ったらしく、必死な感じで、股間をぎゅーっと抑えてる。

 どうやら、危なかったらしい……女子的にお股がゆるいのはどうかと思うし、絵面的にそのポーズはとっても卑猥。

 

 これは見なかったことにして差し上げたいと思う……。

 

 ちなみに、今のわたし達はすっかり日もくれたので、焚き火囲んでキャンプファイヤー状態。

 ……焚き火の傍らに、濡れたパンツが二枚干してあるけど、女子しか居ないから、誰も気にしてない。

 

 マキさんもユキちゃんもスカートまでびちゃびちゃだったから、清浄化かけて、一応軽く水洗いして、干しとこうってことで、同じく焚き火の横で、二人のセーラー服も乾燥中。


 なんで、学校でもないのに制服なのって聞いたら……この姉妹、向こうにいた頃から、制服が普段着だったらしい……。


 理由は、服買うお金が無かったから……何かもう、どう言っていいか、解んないよ……。

 

 とは言え、裸で放置ってのもあんまりだったから、とりあえずワンピースみたいなのを錬成して、着てもらってる。

 めっちゃ適当なデザインなんで、奴隷の服……みたいな感じだけど、問題なさそうだった。

 

 今錬成できる布って、素材がその辺の葉っぱやら、木の皮やら何やら……なんていい加減な代物のせいか、素材的に問題あってとっても破れやすい。

 服に出来るほどの強度を確保すると厚みが必要となるから、必然的に通気性とか皆無……。

 

 なので、ここら辺の猛暑環境には、あまり向いてない……。

 そんな訳で、シャツなんかも問題ない範囲で穴だらけ、隙間だらけってデザインにすることで、対応してる。

 

 敢えて丈も短くしてるから、おへそとかお腹は丸出しだし、袖なしノースリーブだから、思いっきり脇の下とか見えてる……。


 布面積はぶっちゃけかなり少ない……動きやすさを考慮して、腰布にもスリット入れてるから、その気になれば大きく足を広げたりも出来るけど、それやっちゃうと色々フルオープンになるので、やっちゃダメ。

 

 ついでに、前かがみになると胸元から色々ガッツリ見えるらしい……この前、それでユウキくんに怒られた。


 自慢じゃないけど、ユウキくんには見られてないところはあんまりない。

 もう、お嫁に行けないとか嘆くところかも知れないけど……ユウキくんだから許す。

 

 なお、この場の女子率は100%なんで、諸々の布面積が少ないだの、お互い色々見えそうなカッコとかでも、別に気にしてない感じ。


 サキさんなんかも、一人だけセーラー服は気がひけるからって、ユキちゃん達と同じカッコをしてたりもする。


 でも、それであぐらは駄目だと思うな……本人、スパッツだから気にしないとか言ってるけど、わたしは、パンツじゃなくても恥ずかしいと思う。


 ちなみに、案の定、この世界……婦女子用パンティとかそんなもんはないとのこと。

 

 平民は基本ノーパン。

 かぼちゃパンツみたいなズロースっぽいのが貴族とかの婦女子の間では、普及してるらしいけど、暑苦しい上に履き心地はすこぶる良くない……と言うのが、三人の談。


 なので、転移した時に履いてた下着と、それを大金出して再現してもらった特注品を愛用してるらしい。

 

 気持ちは、解るなぁ……大事なことですから。

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