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第十八話「勇者マコト」①

 王国側の勇者マコトとその仲間達……この調子だと、間違いなく敵として相対することになる。

 これはもう、半ば確定事項だと思う。

 

 お姉ちゃんと同じ大剣の勇者が敵になるとは……皮肉な話もあったもんだ。

 

 けど、三騎士と呼ばれる勇者の中でも、大剣は良くも悪くもバランスタイプで、槍や斧と比べて、そこまで抜きん出てる訳でもない……サキさん辺りなら、対抗もできそうな感じなんだけどなぁ。

 

「なんとなく、倒すべき敵ってもんが見えてきたね。けど……その勇者マコトってのは、そんな強いの? 大剣と槍と斧……この三クラスは、割と別格って聞いてるけど、逆を言えばサキさんあたりなら、同格なんじゃないの?」


「マコトのヤツは……別格だね。なにせ、アイツの大剣は融合覚醒を果たしてる。アタシでも一人じゃあいつに勝つのは、難しい……それが現実なんだよ」


 サキさんが苦々しそうにつぶやく。

 と言うか、また知らない単語が出て来た。

 

「融合覚醒……ってなに?」


 お姉ちゃんへ投げてみるんだけど。

 本人も、首を傾げてる……。

 

「えっと、まず同じ勇者の武器が三つあって、同クラスの勇者が自分以外二人いるって事は、理解してますよね?」


 ユキちゃんがそんな風に確認してくる。

 

 まぁ、そこら辺は、お姉ちゃんの頃には無かったんだけど、今回の勇者召喚は各武器がダブリありって感じで、各三つづつダブってる……そんな風に理解してる。


「そこら辺は、解ってるけど……。まさかと思うけど、その融合覚醒って……」


 ソシャゲーなんかで、ガチャ引いて、カードやキャラがダブると、同じのを重ねることで覚醒とか、限界突破とかして、大幅パワーアップするってのがお約束……まさか……ね?

 

「はい、お察しかも知れませんが、同じ武器同士を融合させることで、勇者の武器は格段に強化されるんですよ。これを覚醒融合と呼んでます……」


 ユキちゃんが言い難そうな感じで、説明してくれる。

 そうなると……勇者マコトは、同じ大剣の持ち主から、取り上げるなり、譲渡されるなりして、二本の大剣を手に入れたと。

 

 問題は、その手段……勇者の武器は、わたし達の命綱と言ってもいい。

 それに、勇者の武器を失った勇者は、現実世界へ強制送還される……となると、あの時勇者マコトの隣りにいたもう一人の大剣の勇者は、少なくともこの世界にはもう存在しないってことだった。

 

 それに、その仲間達も手っ取り早い自分たちの強化手段として、認識してる可能性も……。

 

 これ……かなり、マズいような気がする。

 勇者マコトは、自分の力を増すためだけに、本来仲間のはずの勇者を殺してる可能性があるって事。

 

 そこまで……するの?

 

「ねぇ、聞いていい? ……どうやって、マコトってヤツは、二本の大剣を手にすることになったの? 穏当に譲ってもらったとか……じゃないよね?」

 

 その結論に辿り着き、思わずユキちゃんをじっと見つめ返してしまう。


「……勇者マコトは、同じ大剣の勇者を自らの手で殺害してます……それも思いっきり騙し討ちで……」


 ……案の定だった。

 これは……最悪だ。

 

「そんな事が……許されたっていうの? なんてこと……」


 思わず絶句……いくらなんでもそれはやっちゃ駄目だと思う。


「そうですね……。表向きにはもう一人の大剣の勇者が魔王軍の刺客に暗殺されて、今際の際に譲ってもらったとか言ってましたけどね……。自分の盾になって、身代わりになったとか、そんな感じの美談に仕立て上げてたみたいです。けど、状況的には、誰の目にも大嘘だってのはバレバレ……私達がアレを外道と罵る理由がそれです」


 なんと言うか……目の前が真っ暗になるような思いだった。

 

 ……あの二人、傍目には親友とかそんな感じに見えた。

 それを……裏切ったって言うの?

 

 なんて奴……そこまでするのか、勇者マコトは……。

 

「……勇者の武器は三つを全て融合することで、真の力を発揮する……王族にはそんな話も伝わってたらしいの。けど、それは本来タブーとすべきこと……本当に今際の際に託されたとか、持ち主が倒れたりとか、そう言うことでならまだしも、自分の力を増やすためだけに、仲間殺しを平然と実行する……それがあの外道のやり口なのよ」


 サキさんがうんざりしたように、そんな話をしてくれる


「実際、その殺された大剣の勇者……後藤さんって言うマコトとは、高校の同級生だったんですけど、そいつの方が全然マトモだったんですよ。実力もあったし、人望だってあった。それをマコトは面白くなく思ってた……それはもう自明の理だと思います。何より、誰もその後藤さんが殺害された瞬間は見てないし、刺客だって誰も見てません。結局、刺客についても、私だっていたし、他にも索敵持ちの勇者がいたにもかかわらず、誰も見つけられずに取り逃したし、結局どこの手のものかも解らずじまい……となれば、状況的には誰がやったかなんて、明らかじゃないですか」

 

 全てに恵まれたボンボンと、その親友。

 取り巻きの一人だと思ってたその親友が異世界で、温室育ちのボンボンを押しのけて、頭角を現した……。

 

 多分、背景としてはそんな感じだったんだろうね。

 ……この時点で、殺す理由としては十分かもしれない。

  

 決めつけは良くないけど、そんな王国の中核的存在になるような勇者のところに刺客を送り込んで、人知れず逃げ延びたとか……ユキちゃんが言うように、無理がある話。

 

 第一、どこの誰が刺客なんて送るのやら……本格戦場デビューもしてないようなヒヨッコ勇者を魔王軍が暗殺とか、あり得ないでしょ……。

 

 でも、わたしは……その勇者マコトがそこで行き止まりだって事を知ってる。

 あの時、見た限り大剣は二つしか無かった……もう一つの所有者は……お姉ちゃん。

 

 もし、そのマコトが最後の大剣の所在を知り得たとすれば?

 もしくは、その情報を握ってる可能性があるのは……誰か……そこに辿り着いたら。


 ……もう、この時点で勇者マコトは、わたしの敵に回る未来しか見えない。

 

 と言うか、そんなヤツ、むしろ早めに殺さないと……。

 

「……その融合覚醒ってのは、そこまでする価値があると?」


「……格段に強くなるのは確かですね。実際、大剣の勇者と同格のはずのサキ姉さんでは、マコト相手に全く歯が立ちませんでした」


 ユキちゃんがそう言うと、サキさんが目を剥く。


「い、言い訳させてもらえば、アレはあくまで、新王の前での余興……御前試合って名目だったからね。お互い本気は出してない……とは言え、アイツ、レベルは同じくらいなのにあらゆるパラメーターがこっちよりも上だった。具体的にどれくらいかは、何とも言えないけど、ユキの支援魔法で上乗せされたくらいには強くなってたってところだね。一対一の条件でなら、マコトのやつは、掛け値無しで最強の勇者かもしれない。もっとも、上には上がいるって、つい今しがた、思い知らされたばかりだけどね……。勇者の武器に頼らないで、自らの力を鍛え抜く……その可能性を見せてもらったのは、本当にいい刺激だったよ」


 なるほど……支援魔法分ってなると、結構なアドバンテージだよね……。

 

 支援魔法は強力だけど、相手にも使い手がいると、相殺されて支援される側の地力勝負になってくる。


 となると、覚醒融合ってのは武闘派勇者から見たら、魅力的ではあるし、持たざる側が持つ側とまともに戦っても勝てない……そう認識せざるを得なくなる。

 

 もっとも、一対一でって条件提示してる事や、お姉ちゃんと言う規格外と直接戦った事で、サキさんも認識を変えてるっぽいけど。

 

 お姉ちゃんの示した勇者の武器や支援魔法にすら頼らない、限度ない強さの可能性。

 たぶん、それは勇者マコトでは、未来永劫たどり着けない境地。

 

 サキさんの戦力評価だと、お姉ちゃん……つまり、わたしは、その最強勇者をも上回っていると言いたいらしい。

 それを解った上で、ユキちゃん達はこっちに来ないかって言ってる。

 

 ……うん、多分交渉はここからが本題っぽいな。

 

 にしても、ユキちゃんって交渉も巧みだなぁ……こちらが不足してるだろう、最新情報を判断材料として、惜しみなく提供した上で、こっちに決断を投げてくれてる。

 

 この難しい判断を……せざるを得ないと言うのは、なかなかキツイ話だよ……はぁ、胃が痛くなりそう。

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