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第十四話「剣鬼招来!!」③

「……こ、この子って……例のチュートリアル娘だよね? さっきまでこんなじゃなかったのに……アタシがメイスの人と戦ってる間に、一体何が起きたんだい? アタシのフルコンボが掠りもしない上に、無拍子とか言う高速移動……あれなに? って言うか、アタシ……今、軽く一回死んでなかった? ア、アタシの首……ちゃんと繋がってるよね? なんなんだ、これ……」


「ランタンの勇者は、元々戦闘力なんて皆無のはず。でも、何、今の動きっ! 私の目でも追えなかった……瞬きしてる間にサキ姉の懐にまで入られて……今の間合いとタイミング、あいつが本気だったら、ホントに首が飛ばされてたと思う。き、気をつけて……何か得体の知れない術を使ってるみたいよ。と、とにかく、ユキの血霧の陣なら少なくともステータスダウンがかかるはず……そうなれば、相手の動きも少しは鈍る! とにかく、時間を稼ぐわよっ! 今度は私が先に仕掛けるっ! サキ姉、ブルってないで構えるっ!」


 言いながら、マキさんは弓矢をつがえるんだけど、狙いが全然定まらない様子。

 

 ユウキ君が言ってた……飛び道具って、動揺したらまともに当たらなくなるから、いかなる時も平常心でいることが重要って……。

 

「……どうしたんだい? 弓の勇者さん……この期に及んで怖気づいたとか、言わないよね? そんなブルってちゃ、矢なんて当たらないよ? 弓を撃つなら、一発必中でないと……この程度の間合、縮地の使い手は、一足飛びで踏み越えてくる。要するに、外したら死ぬ……そう言う間合いさ」


 お姉ちゃんと、マキさんの間合いは軽く10mはある……でも、今しがたお姉ちゃんは、その距離を一瞬で詰めてみせた。

 弓を放って、外したら最後、一刀両断に斬り伏せる……お姉ちゃんはそう言ってる。

 

 マキさんもその言葉で、外したらどうなるかイメージさせられたらしく、もう一歩も動けなくなっているようだった。

 

 それでも懸命に落ち着こうとしてるみたいで、深呼吸を繰り返してるんだけど、むしろ過呼吸みたいに激しく肩で息をしてる……顔中に脂汗をかいて、目も泳いでて、心理的に完全に追い詰められている……。

 

「うわぁああっ! く、喰らえっ!」

 

 半ば錯乱状態で矢を引き絞ったところで、かたわらのサキさんがその手を抑える。

 

「マキ……落ち着け、そんな有様でどうする! ここはアタシが先に行く! とにかく、仕留めようと思わずに、時間を稼ぐ……今頃、ユキが陣の準備をしながら、同時にコイツの攻略法を考えてくれてるはずだ。でも、攻略の取っ掛かりを作るためにも、積極的に攻めてみよう……マキも、落ち着いて……しっかり気を持て、相手に呑まれるなっ!」


 ……サキさんの言葉に、マキさんも落ち着きを取り戻したようで、大きく深呼吸。

 うーん、サキさん……ちゃんとお姉さんしてるなぁ。

 

 そうやって、妹に声をかけることで、自分自身も落ち着きを取り戻している……自分がお姉ちゃんだからって自分に言い聞かせて奮い立たせる。


 一種の自己暗示をかけることでのセルフマインドコントロール……やるね!

 

 やっぱり、姉ってのは、そうでなくちゃいけないよね。

 

 お姉ちゃんは、仕掛ける気も無いようで、その様子を微笑ましそうに見守ってる。 

 完全に楽しんでるな……これ。


「姉さん、ありがとう……ちょっとは落ち着いた。私が魔弾で牽制するから、タイミングを合わせて、一気に詰めてやっちゃって! 相手はひとり……私達姉妹のコンビネーションが負けるはずがないわ!」


 言いながら、マキさんは黄色い宝石を矢頭に嵌めると弓を構える。

 

 なるほど、たぶんあれは魔石の一種……おそらく、攻撃魔術を封じたカプセルみたいなもんで、手榴弾みたいな使い方が出来るっぽい。

 

 ユウキくんみたいに、魔力生成弾を使わずに、実体の矢に拘ってる理由が多分これなんだろう。

 火力に不安がある弓矢でも、魔石による攻撃魔法を上乗せすることで、火力を補える。 


 勇気くんの話だと、魔力生成弾ってのは、光に近い性質らしく、風や重力の影響を余り受けないとかで、命中精度が極めて高いって言ってたけど、実体弾だとこう言うメリットもあるって事か。


 しっかし、装備面では完全に向こうがイイの使ってるね……やっぱ。

 国がバックにいるだけに、装備は潤沢……自給自足の私らにとっては、羨ましい話ですこと。


「うん、今度は行けそうな感じだね! ……じゃあ、私が走り出したら、同時に撃ってくれ……タイミングを合わせれば、怯ませることくらいは出来るはず!」


「……解ったわ! 行くよっ! ライトニング・グレネード! シュートッ!」


 マキさんが矢を放つのに合わせて、サキさんは、一足飛びで間合いを詰めるべく、凄まじい速さでお姉ちゃんに迫る!


 マキさんの矢も、雷光を纏いながら、凄まじい速度で何度もカクカクと方向転換しつつ、複雑な軌道をとって、お姉ちゃんに迫る!


 ……うそっ! 誘導弾なんて……そんなの反則だよっ!

 ユウキくんだって、そんな芸当出来ないのに……!


「喰らえ! 五月雨突き! 重連っ!」


 サキさんも最後のステップを踏むと、大きく飛び上がって、猛烈な連続突きを仕掛ける!

 

 物理系戦闘職の勇者は、わたしが錬金術を使う時のように、スキル発動するだけで、身体が自動的に動いて、超絶の武技で以って、攻撃を仕掛けられるらしいんだけど、多分それっぽい。

 

 実際、一突きで十回くらい突いてるように見える……こんな猛烈な連撃とか人間業を軽く超えてる。

 まともに食らった日には、ミシンにかけられたように穴だらけにされるだろう。

 

 けれど、お姉ちゃんは軽く剣先で、サキさんの連撃をことごとく弾くと、挙げ句にその槍が伸び切った瞬間を見切って、横合いから槍を足蹴にして、軽く蹴り上げてしまった。

 

 サキさんも敵の目の前で、武器を失い手ぶらになる……なんて状態で、ポカーンとしつつ、すっ飛ばされた槍を見送っている。

 

 そして、一瞬遅れて、お姉ちゃんの眼前に迫った雷撃の矢も目の前に迫ったところで軽く手を振ると、雷撃の矢は、まっすぐにもと来た方へとすっ飛んでいく。

 

 そう、矢を放った張本人、マキさん目掛けて……。

 

「う、うそっ! なんでぇえええっ! あぎゃああああああっ!」


 避ける間もなく、その矢が直撃……弾かれたようにすっ飛んで、挙げ句に全身を雷撃にさらされて、のたうち回りながら、ビクンビクンと痙攣して……ボフンって感じの煙とともに、普段着っぽいセーラー服姿になりかわってしまう。

 

 マキさん、ワンアウト……一撃でHPを削りきったあたり、かなりの威力があったらしいけど、自爆してちゃ世話無い。

 

「ねぇ、君らさぁ……人の話聞いてた? 勇者の武器のプリセット武技なんて、基本ワンパターンなんだからさ。格上相手に迂闊に放ったら、あっさり見切られて、もれなく、こう言う残念な結果が待ってる。こんな子供だましの武技に頼らずに、真面目に修行して、自前の技を身に着ける……まずは、そこからだろう。最近の若いヤツは、何かと言うと出来合いのもので満足して、努力や創意工夫ってもんを怠りがち……まったく、これだから……。でもまぁ、何事もチャレンジだ。解ったら、武技なんか頼らずに、もう一度やってみよう!」


 言いながら、今頃になって、空から落ちてきたサキさんの槍を掴みとると、笑顔で手渡してる……。

 サキさんも、ポカーンとした顔でそれを受け取りながら、コクコクと頷いてる。

 

 ……もうその目には、明らかに尊敬の念が籠もっていて、もはや戦意も何もって感じ……なんとも、素直な人みたいだった。

 

「そっちの、マキって子も、サキと連携しようとしたところまでは良かったけどね。この手の誘導型の飛び道具ってヤツは、ケチらず、複数まとめて放って、フェイクを交えたり、軌道パターンを工夫しないと、まず当たらない。あんな回りくどい軌道で幻惑しようとしたつもりなんだろうけど、結局最終的には、自分に向かって飛んでくるって解ってるんだから、こんな風にカウンター仕掛けられて、自爆するのが関の山……。そもそも、飛び道具系の武技を敵の真正面で、それもこんな半端な距離で撃つなんて、自殺行為だ。長生きしたければ、もう少し創意工夫を重ねるべきだね」


 ……いやはや、ここまでとは思わなかった。

 

 お姉ちゃん、強すぎ。

 

 生身、勇者の武器なしってことは、勇者システムとか関係なしの完全に自前スキルだけで、ここまでやってるって事。

 

 と言うか……多分、お姉ちゃんが勇者システムの想定外まで強くなったのって、勇者システムの限界を超えて、自分自身の能力を際限なく上げていったから……なんだと思う。

 

 これがお姉ちゃんの言うところのリミットブレイク級。

 勇者を超えた超級勇者……勇者システムの力を借りずに、魔王すらも屠るもはや、別格の存在……。

 

 思わず、背筋がゾクゾクっとする。

 

「……ちくしょーっ! バ、バカにしやがって! サキ姉……何やってんだよ! あっさり、心折られてんじゃないよっ! 私らの帰りを待ってる奴がいるんだからさっ! 相手が強くて、為す術無く負けましたなんて、私達には許されないっ! こうなったらもう、死ぬ気で挑むよ! 相打ち上等……生身の相手だからって、手加減してりゃイイ気になりやがって! お望み通り、ぶっ殺してやるよ!」


 勇者モードに再変身するなり、口汚く罵りだしたマキさん。

 見た目の割になんかガチャガチャしてるって思ったら、やっぱり本来はこんなんだったんだ。


 案外、元ヤンとかそんななのかも……?


「……そ、そうだね。シズルさん……為になる忠告、ありがとう。でも、マキの言う通り、アタシらにも退くに退けない理由がある! この戦い、悪いけどアタシらも負けられないんだ! いいよ……勇者の武技が通じないってのは、よく解った! ここからはアタシの身につけた槍技一本で行く! もちろん、君から見たら未熟な児戯に等しいかも知れないけど、命を賭ける覚悟を乗せた一撃なら……届くかも知れないっ! アタシの本気……受けてもらうよ!」


 ……だから、それってさ。

 クライマックスとかで勇者とかがボスキャラ相手に、言いそうな台詞だよね?

 

 なんか、ホント悪役になったみたいで、辛い……。

 同時に、勇者なんかを迎え撃つ魔王の気持ちも何となく解った。


 相手の正しさや正義を認めながらも、だからと言って倒される訳にはいかないしーって、そんな感じ?

 自分が生き残る為ならば、相手の正義とか、止むに止まれぬ事情とか、そんなもん、どうでもいいのですよ。

 

 これが、勝たないと、無垢の民が万単位で死ぬーとか言われたら、ちょっとは考えは……やっぱしないな。

 

「……サキ姉、私も付き合う……今度は、上手く立ち回って、死角からありったけの全火力をブチ込む! その鼻っ柱へし折ってやろうじゃん! 私も本気出す! やられっぱなしで終わってたまるか! こうなったら……目にもの見せてやる!」


 なんか、二人してすごいヤル気になってる。

 

 お姉ちゃんは、やたら嬉しそうにニヤニヤしてるし。


 こう言うの……大好きなんだよね……。

 努力、友情、勝利だっけ? お姉ちゃんの本棚は、少女漫画とかよりもむしろ、少年漫画でいっぱいだったっけ。

 

 どうやら、第二ラウンドが始まりそうだった。

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